女帝の古代王権史 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480073815

作品紹介・あらすじ

古代天皇継承は男系にも女系にも偏らない双系的なものだった。卑弥呼、推古、持統らに焦点を当て古代王権史を一望。男系万世一系という天皇像を書き換える。

感想・レビュー・書評

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  • h10-図書館2021-5-28 期限6/11  読了6/8 返却6/8

  • 『日本古代女帝論』をダイジェストにして、時代の変遷を重視して再編成したような書籍である。「王権史」という題名に合わせてのものであろう。
    ただ、議論の重点は皇位継承に置かれており、「王権」そのものに関する叙述を期待すべきではない。
    ジェンダー論の視点から先行研究の問題点を暴くといった手法を垣間見ることができ、刺激に満ちている。

  • 古代の女帝における皇位継承の背景を再検討し、後世とは異なる男女双系の継承原理を明らかにする内容。天皇権力の確立過程における女帝の重要性、直系継承への悪戦苦闘と父系社会への転換過程の詳細が非常に興味深い。

  • 古代女性史から解き明かす皇位継承のジェンダーバイアス:女帝「中継ぎ説」を問い直す | nippon.com(2022.05.26)
    https://www.nippon.com/ja/in-depth/d00808/

    古代、女帝は例外ではなく普遍だった|ちくま新書|義江 明子|webちくま(2021年3月9日)
    https://www.webchikuma.jp/articles/-/2314

    筑摩書房 女帝の古代王権史 / 義江 明子 著
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480073815/

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    ↓吉川弘文館PR誌「本郷」2023.3(No.164)の『百話百言』で義江明子が"神功皇后はんの昔から・・・"と題して一文を寄せている。
    それで思い出したのが『三韓征伐』、、、そして此の言葉が今でも使われているコトに驚く(教科書はどうなってるかな?)。。。

    【刀剣ワールド】神功皇后 戦国武将を支えた女剣士
    https://www.touken-world.jp/tips/17312/

  • これまで日本の古代史について無学だったせいか、本書で別の視点が提供されるのにはとても興奮させられた。単にイメージとしてぼんやりと天皇や古代について理解はしていたつもりだったけども、それについて明確に考え直す知識と理解を提供してくれたように思える。

  • 「性差の日本史」で参考文献に上がっていたので読みました。なるほど、元々家の概念に男女の区別が無く、一族で有能な人がトップに立つというやり方で有れば、女帝がこの時期に集中するのも納得ですし、中継ぎだったら推古帝が死ぬまで35年もやるわけないじゃんと前から思ってた疑問も解消しました。男系になっていったのは当時の国際的スタンダードに合わせたからというのも納得性が高いです。にしても古代史は、ここ30年ほどで色々な分野で常識が変化しているなぁと改めて感じます。

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1381056

  • ページターナーではぜんぜんなかった。研究書だから仕方ないけど。
    古代の日本は男系ではなく双系社会だったのだそうだ。なので女帝も普通にいた。7世紀に推古、皇極、斉明、持統、8世紀に元明、元正、孝謙、称徳。名前ではぜんぜんわからないから、推古・持統以外にこんなに女帝がいたとは知らなかった。最初は群臣が天皇を選ぶ形だったから、男女を問わず実績を伴う熟年が選ばれていたのが、持統あたりから、男性は年少でも即位してそれを熟年の女帝が支えるようになったらしい。(熟年というのが、古代に60代や70代まで生きていたというのが驚き。)
    男系になってきたのは中国の制度にだんだん影響されたからのようだ。(男系男子継承が法制化されたのはなんと明治。伝統というには新しすぎる。)皇太子ももともと日本では男女問わないが、中国では皇太子にたいして皇太女という言葉が必要だったとのこと。群臣が選ぶのでなく、血統重視にもだんだんなってきた。
    「…だろう」「…と推定しておきたい」「…と考えたい」のような表現が出てくるが、古代史の研究はかなり想像が入るのではなかろうか。研究者はその想像が楽しいのかも。一人一人の人格や性格までも資料から読み取ろうとするのだろう。私など歴史上の人物は、人間としてではなく知識として頭に入っているだけだったことに気付いた。聖徳太子にしても、結婚してたのかとか考えもしなかった。

  • 推古から称徳までに頻繁に見られた女性の王位は、倭国の慣習でもあり、中継ぎ的な即位を意味しないという指摘は、各女帝の在位期間の長さを鑑みてももっとも。群臣が王を推戴するかたちも、卑弥呼の頃からの伝統を垣間見る気がする。潮目が変わるのは、白村江で唐に大敗し、倭国から律令国家「日本」へと変容するあたりで、(皇帝は男子という不文律のある)中国化に伴い、天皇と皇統のスタイルもそこに収斂していったのだろう。女帝の時代の終焉には、藤原氏の存在も見落とせない要素だが、主題からやや外れる事もあり、本書では末尾で触れられるに留まる。

  • <目次>
    序章   古代双系社会の中で女帝を考える
    第1部  選ばれる王たち
     第1章  卑弥呼から倭五王へ
     第2章  世襲王権の成立
    第2部  王権の自律化を目指して
     第3章  推古~王族長老女性の即位
     第4章  皇極=斉明~「皇祖」観の形成
     第5章  持統~律令国家の君主へ
    第3部  父系社会への傾斜
     第6章  元明・元正~天皇と太上天皇の”共治”
     第7章  孝謙=称徳~古代最後の女帝
    終章   国母と摂関の時代へ向けて

    <内容>
    古代の女性天皇に関する歴史書。歴史学会では、「女性天皇」はありなのだと思うが、この本は意外と現在の政治的要素を排除して、淡々と記する。「父系」の伝統は明治以降なのは、学界では自明の事実で、それを「伝統」と呼ぶのはおかしい。「伝統」と呼ぶなら、この古代の「双系」(or「女系」)の方が伝統であり、中国の諸制度をまねながら、「父系」だけは取り上げなかったところが「伝統」なのだろう。

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著者プロフィール

帝京大学名誉教授

「2021年 『女帝の古代王権史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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