批評の教室 ――チョウのように読み、ハチのように書く (ちくま新書)
- 筑摩書房 (2021年9月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480074256
感想・レビュー・書評
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ちゃんとした本の読み方を学びたく読んだ。分かりやすく、これならできるかもと思わせてくれる。最後に挙げられてる例は少し鼻に付くというか、目線落としてくれても良かったかと。
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作品(文学、演劇、映画、など)の批評の仕方を、初心者向けに解説している本。著者の専門は演劇のフェミニスト批評とのことだが、汎用性の高い内容でとても学びがある。自分が、読書によって感情を確かめたり自分の中で反芻したり抽象的なエッセンスを抽出したりすることが好きなこともあり、読書術という観点で参考になった。批評は、読書術とは異なり、自分なりのオリジナリティを見つける作業でもあるということに気づいた。
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自分が想像していた内容と違った。日本では批判的に読むことを教わらないのでその辺りを知りたかった。あとは、映画や物語のネタバレが結構あるので注意が必要。
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各章冒頭の挿絵や小見出しがどのように回収されるのかが気になってフィクション(とりわけミステリー)を読んでいるときのように、どんどん先が読みたくなるし、本文で紹介したポイントを本文で実際に使ってみせながら次のポイントを紹介していくという、非常にテクニカルかつ教育的な文章構成。巧いなぁと何度も思わせられる本でした。
読んでよかった。どのページも線引きだらけになるほど学ぶことが多かった。しかしそれ以上にあと1週間早く読んでいれば…という後悔が強い。
チューターをしている高校の現代文の先生が、『批評の教室』に乗った授業をしていて芥川『羅生門』の批評という課題が出ていた。
先生のすすめに応じて月曜日、1年生の男の子が相談に来てくれた。彼は
A. 下人が抱いてる恐怖心
B. 下人と老婆の年齢差
に注目して批評を書こうとしていた。話を聴きながら年齢差よりもむしろ恐怖心の方により注目しているように感じたのでそちらに時間を割いて相談した。
恐怖心と年齢差についてはある程度文章になっていたのだが、その下にゴーリキー『どん底』の中心人物ペーペルと下人の比較を試みたメモがあった。相談に来てくれた生徒はロシアで14年間過ごしていたので、おそらく自分の経験を活かした着眼点だったはず。
批評について何もわかっていなかった私は
a. 恐怖心、年齢差、ゴーリキー『どん底』との比較の3つ全てをA4で2枚の批評に盛り込むのは難しい
b. 3つのうち、恐怖心に最も注目している
ということを話しながら恐怖心に焦点を当てる方向に話を誘導指定ました。でも実際には『羅生門』の批評なのに『どん底』という別作品を持ち出してしまったら『羅生門』:『どん底』=1:1の文学/作品比較になってしまうのではないかと思ってしまったのが一番の理由でした。
切り口を1つに絞るという点ではまるっきり誤りではなかったかもしれないけど、セッションの前に私が『批評の教室』を読んで臨んでいれば、ゴーリキーの『どん底』と比較するというアイディアも肯定的に受け止めながら、ニュートラルなチュートリアルができたのではないかとすごく反省しました。
次回以降は同じ課題について相談してくる生徒に対して同じ過ちを犯すまいと、急いで『批評の教室』を一読したのですが、課題締切までにその機会はありませんでした。悔しいし申し訳ない。 -
21/11/13読了
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非常にこなれた文学批評の入門書。
とても読みやすくて、びっくりした。
ついでに言うと、私は本書で分析例として挙げられている映画やポップソングをほとんど知らないが、それでも内容はわかりやすい。
手順は3ステップ。
精読→分析→文章化。
それぞれのステップでの注意点が開陳される。
精読はこんな感じ。
作品内の事実を認定し、しかし語り手を含めた人物を100パーセント信用しないこと。
作者には死んでもらうが、歴史的背景は殺さないこと。
その上での分析。
具体的な方法論を示し、実際に分析例もつけられているので、とても分かりやすい。
自分の観点を持つために、「巨人の肩の上に立つ」=批評理論の助けを借りる。
タイムライン、人物相関図に書き起こす。
物語を要素に分解する(構造分析)。
「仲間」の作品を見つけ、ネットワーキングする(インターテクスト化)。
このあたりの作業、楽しそうでわくわくする。
そう思わせるように書いているところがすごい。
書く作業は、少し抽象度が上がる。
分析の切り口を決め、読者対象を想定する。
書く時には、内容が正確に伝わるように。
ここら辺、いわゆる文章読本にも重なる内容。
ただ、「誰からも好かれようと思うな」という注意を与えるあたりは、この本ならではか?
個別の文学批評理論は本書で扱われない。
もちろん、本書のあちこちに、批評理論を前提とした部分がある。
もしかしたら、批評理論を全く知らない読者には、やや受け入れにくいところがあるかもしれない。
実は批評理論の解説書かと思って読み始めたので、最初少し肩透かしを食らった感があった。
が、読み終わってみると、別建てで正解と思える。
まずはここから。
ここに書かれていることがしっかりできていれば、それなりの批評になると思われる。
では、この文章は批評か?
いいや、とんでもない。
単なる感想であることを急いで書き添えておく。 -
網羅的でも、体系的でも無いかもしれないが、その分気付きを生む。
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さえぼう先生の読者をかなり意識した話しかけるような文体が、読み進める上で軽快なリズムをもたらしていると思いました。
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批評の書き方について大学の授業を受けているような本。
勉強になった。大学生にはいい本だと思う。ブログなどでも応用できると思うがもっと気楽に書きたい気もする。 -
全然読む気はなくって、多分図書館で予約する時に間違った。
それでも何かのご縁と思ったんだが、予想外に面白く。
批評というものへの初心者向けの心得、技法の本。軽いけど。
ただざっと読むには必要ないが、きちんと精読して、解釈して、批判することの、多分「面白さ」を教えてくれる。プロでもあるまいしいつでもこの読み方をする必要はなく、特に小説なんかは、自分の感性で出来栄えを噛み締めるだけで十分だと思うのだが、そこを突っ込む事もまた面白い。
分析する事で、自分の「感想」の理由わかるだろうし、例え面白いと思わなくても、その理由を分析する面白さもまた、ある。
そうだよね。
また結構大事だと思ったのは、自由な感想とか、いろんなセオリーをぶっ壊すこと。
きちんと身についたものがあって、必要があって壊すとかならいいが、何の訓練も受けていない、おそらく経験も未熟な自由は、ただの偏見の檻の中で暴れてるだけなので要注意。
最近のSNSなんかで、色々荒れるにもこの辺がありそう。
また、本当に才能のある人間は、そんなセオリーや枠を当てはめられても、毀損することはないので心配はないともいう。この本は、「初心者」向けだときっちり明言しておられた。
巨人の肩には乗るべきなのだ。
先人の功績を踏まえた上でその先に進める。
意外に示唆深い本だった。
最終章の、具体的な批評例と、感想戦が面白くなかっただけ。
共有するものがなかったからだろうね。