情報生産者になってみた ――上野千鶴子に極意を学ぶ (ちくま新書)
- 筑摩書房 (2021年12月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480074416
作品紹介・あらすじ
かつて志望者ゼロだったこともある”最恐のゼミ”で、卒業生たちは何を学び、どう活かしてきたのか。上野千鶴子『情報生産者になる』の必携副読本。
一九九三年から二〇一一年にかけて開かれていた、東大文学部「上野ゼミ」。あまりの厳しさゆえに一時は志望者がゼロだったこともあるが、多くの同ゼミ出身者が、今や研究者やジャーナリスト、あるいは社会起業家として、たくましく情報生産者の道を歩んでいる。上野ゼミで、彼らは何を学び、どう応用したのか。どこに行ってもアウトプットができる力は、どのように育まれたのか。かつての教え子たちによる、『情報生産者になる』の必携副読本。
感想・レビュー・書評
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日々の仕事にうんざり、の人も、読めば元気がでるかも。
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『情報生産者になる』で記述されていた上野ゼミの顕在的及び潜在的カリキュラムがどのように学生に受け止められたかを知ることができる。大滝さんの文章からは顕在的カリキュラムの個別項目について、具体的躓きとその乗り越え方が説明がされており、理解に役立つ(特に問いの焦点化・マッピングと理論的枠組み設定)。学術の言語・文法の比喩で、ゼミのあり方も上野ゼミが唯一の正しい正解ではないということも腑に落ちる。坂爪さんの文章からは、去年1年間学部ゼミを受けていたのでは、と思えるほどゼミを受けた学部生の心境が生き生きと伝わる。研究者や記者として活躍しているゼミ生の文章は、「情報生産者」になりたい人にとって励みになるだろうし、うえの式質的分析法の分析結果のまとめ方、「上野ゼミを社会学する」の章を読むと参考になるだろう。元ゼミ生と上野先生との対談がとても印象的だった。特に「教育者」としての上野千鶴子と「運動家」としての上野千鶴子の線引き、ゼミを統制しないことで創出される自由闊達な言論空間、「ライバルを育てる」意識、2000年代以降マーケットが変わり「東大生に対する評価が下がった」ために生まれて普遍的メソッドや運動としてのフェミニズムの連帯と比較したときの現代のSNSでのフェミニズムのあり方の違いは対談を読むだけで学ぶべきことが多い。研究としての女性学と運動としてのフェミニズムの狭間で、上野先生自身、「エリートの再生産」になっていないかという苦悩があることが分かる。「運動と研究は車の両輪」と言う思いで、人生をかけて一つの問いを立てる(更にプロであるためには立て続ける)ことへの矜恃こそが、運動家フェミニストのアイコンとしての上野千鶴子と研究者・教育者の上野千鶴子の接点なのだろう。
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上野ゼミの雰囲気やゼミの卒業生の活躍がわかる本。
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英語英文学科 北村文先生 推薦!
どのように問いを立てるか、そしてそれにどう答えるか、という研究の基礎を理解できます。著者が指導してきた学生・院生の興味深い実例が豊富です。 -
あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。
2019年、東京大学の入学式祝辞でこう述べたのが、上野千鶴子さんであった。本書の冒頭で紹介されている。この言葉に、上野さんらしさが凝縮している。そして、その実践の場が上野ゼミだった。
とてもハードそうだけれども、それを上回る実り多き学びの場だ。そして上野さん自身が、実によく気づき、支え、教えてきた。真の教育者の姿がここにある。登場する教え子たちも実にユニーク。よくこの厳しい上野ゼミの門を叩き、巣立っていったものだ。これはかなわないな、と実感した。 -
開沼さんの「明確化・俯瞰・構造化」というキーワードが、本書全体を分かりやすく理解するための観点となる。この部分だけを読んでも一級品。
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上野先生との対談が良かった。
複雑なものを複雑なまま理解する。上野先生にとって生徒に対する戦略が温かい。ドアを開けていてくれる。でもやっぱり関係をしっかり繋いでいることが大事。
アカデミアのフェミニズムと、運動の社会学、運動とアカデミアを両輪でやってくことに意味があるんだと思った。
中野さんの、総合職女性に対するアプローチ、ここから始まったんだな、と。高学歴女性の課題も解いていく必要性。 -
「情報生産者になる」が思いの外良かったので、続けてこの本も読む。
坂爪さんの研究には流石に引くが、この本を完成させてくれたことには感謝。
最後の座談会がすごくいい。
正直な物言いに、驚いた。
「女性学ってやっぱり運動だったのよ。」
アカデミズムの場で、「運動」を行うことを意識的にやっていたのだなと、その姿勢に感動。アカデミズムが後進を育てることができなかったこと、一人も上野ゼミに希望者がいなかった年がショックだったこと、そこから指導法を変えたこと。お茶の水の原ひろ子先生を尊敬していること。立命館で原さんがやったことを自分もやろうと思い実践したこと。自分の一生を賭けて一作書く人たちをサポートしたこと。
改めて上野千鶴子のすごさを痛感。
なんだか私もやる気出たな。 -
東京大学の上野千鶴子さんのゼミに在先した卒業生が、ゼミで何を学び社会にどんな貢献をしてきたか(していくのか)をのびのびと語った一冊。情報の消費者ではなく、生産者になりなさいとの指導を受けてきた6名のゼミでの経験談やアカデミックな学び、気づきなど知ることができる。
『情報生産者になる』という書籍を上野千鶴子さんが出版しており、その姉妹本という位置付け。これを読んだだけでは情報生産者になれるわけではない。本書で語られる体験に近いものを、自ら経験することが近道なのだろう。問いを立て、その問いへの仮説を構築し、検証していくようなのだが、上野千鶴子さんのように厳しく論理の展開を推し進めてくれるような仕組みはなかなか見つけられない。独学では限界がありそうだが、それに近づくことはできるかもしれないと思わせてくれたかな?
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https://www.webchikuma.jp/articles/-/2648
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https://www.vogue.co.jp/change/article/discussing-education-for-the-future-1