明治史講義【グローバル研究篇】 (ちくま新書 1657)

著者 :
制作 : 瀧井 一博 
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 70
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480074560

作品紹介・あらすじ

日本の近代化はいかに成し遂げられ、それは世界史にどう位置づけられているのか。国際的研究成果を結集し、日本人が知らない明治維新のインパクトを多面的に描く

感想・レビュー・書評

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  •  本書は、2018年12月に国際日本文化研究センターの主催した「世界史のなかの明治/世界史にとっての明治」と題した国際シンポジウムにおいて議論されたペーパーを中心として編まれたものとのこと。
     日露戦争の勝利が西洋列強に圧迫されていた非西洋諸国に希望を与え、日本の近代化=明治維新に関心が持たれたということは有名な話だが、明治維新から150年経った現在の時点において、海外の研究者から、これほど様々な研究が行われていることに圧倒される思い。

     本書には16の研究論考が収録されているが、特に比較の見地から書かれている論考については、もう少し詳しく具体的な対比の様相が知りたかった(紙幅の関係でどうしてもエッセンスになってしまうのだろうが。)。

    特に関心を持ったものとしては、
    ・第4講「明治日本と世界経済との関連」
      ~19世紀後半の国際情報革命としての郵便事業に関し、日本における郵便事業が国際的に見てどのような位置にあったかについての論考
    ・第9講「近代エジプトにおける明治維新」
    ・第11講「中国近代化のモデルとしての明治維新像」
      ~日本と関わりの深い孫文と蒋介石それぞれの明治維新像を整理しているのだが、蒋介石が明治維新が成功した理由の一つとして陽明学の存在を挙げているということが興味深かった(たまたま『近代日本の陽明学』という本を最近読んで、後期水戸学と陽明学の結合が明治維新の思想的原動力になったという論を知ったので)。
    ・第12講「トルコから見た明治維新」

  • 明治史、特に明治維新について、日本以外の研究者によって語られる。ほとんどが知らない人ばかりで、多くの外国の研究者が明治維新について研究しているのだなあと思う。と同時に、自分も含めて日本の明治維新研究は非常にドメスティックなのだなあと感じる。ただそれは、日本の側が「閉じている」と思うか、海外の研究が「日本の研究とはさしあたって無関係に進んでいる」という両面があるような気もする。

    とすると、この本のように、今後は双方の交流が研究進展の鍵になるのだろう。ただしそこには当然言語の壁があって、これを乗り越えていける若い研究者の要請が日本でも求められる、ということになるのだろう。現状、明治史や明治維新を研究している中堅・ベテランの大半は英語ができないので、ここは無責任だが若い人に頑張ってもらうしかない・・・のかもしれない。

  •  明治日本と世界史に関する国際シンポジウムの小論文集。バラバラのテーマの中からつまみ食い。
     中台関連の論考いくつか。明治日本での産・官・学の協力体制は、ある程度児玉後藤時代の台湾で再現・奏功。中国での明治研究は、改革・開放以降更に21世紀に入り、通俗的読み物も含め多角的に。近代化要因の一つに天皇の存在を見た孫文と、陽明学を見た蒋介石の違い。
     ほか、国民革命(ただし他国の民族自決は否定)という19世紀のグローバルな革命史の中で明治維新を捉える視点や、現在にも続く皇位継承儀礼は明治に政治性、公共性や国民性を付与され作られたものという指摘が興味深かった。
     ただ、韓国の筆者がいなかったのは残念だった。韓国で明治維新がどう捉えられているかにも関心があった。

  • 明治維新150年記念の国際シンポジウムをベースとして、20ページ程度の小論が16本掲載。内容的にはマニアックなものや、大所高所から論じたものや、外国人研究者による自国の研究史を紹介しただけのものや、明治維新とは殆ど関係のないものまで様々。
    興味深いのは以下の3つ
    3講の明治維新を日本独特の歴史過程ではなく、グローバルヒストリーの中に位置付けて、19世紀のナショナリズムと革命という視点で論じたもの
    11講の孫文と蒋介石の明治維新への認識の違いで、天皇と科学的精神を重視する孫文と陽明学を重視する蒋介石の違いを論じたもの
    15講の幕末時のイギリスの対日政策で、一般的に言われる薩長と英、幕府と仏といった単純な図式ではなかったことを論じたもの

  • 210.6||Ta

  • 東2法経図・6F開架:B1/7/1657/K

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著者プロフィール

瀧井 一博(たきい・かずひろ):1967年生まれ。京都大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(法学)。専門は法制史(国制史、比較法史)。国際日本文化研究センター教授。著書『伊藤博文』(中公新書)、『明治国家をつくった人びと』(講談社現代新書)、『「明治」という遺産』(ミネルヴァ書房)、『大久保利通』(新潮選書)、『明治史講義【グローバル研究篇】』(編著、ちくま新書)など。

「2023年 『増補 文明史のなかの明治憲法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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