20世紀写真史 (ちくま学芸文庫 イ 2-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480080233

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  • 写真というメディアに魅せられた筆者が、報道や芸術を中心に写真史を論じている。哲学的な格調高い文章で、やや取っつきにくい。なんとなく感覚で物を読み進めれば、その芸術性や問題提起をなんとなく理解できる。

    今も昔も自己を表現できる新しいメディアが出現すると、人は物議を醸す新たな表現をしたがるもののようだ。かつてアメリカの雑誌で表紙に、死刑囚の電気椅子でのその瞬間を掲載したというのはなかなか衝撃的だった。

    本書が書かれたのは1988年。当時と違って今はケータイで誰もが写真(動画も)気軽に撮って世界中に発信できる。それでもフィルムで焼き付ける写真には、ネット上にはない魅力が残っていると思う。

  • 18/05/04、神保町・長島書店で購入(古本)。

  • 1980年代までの写真の歴史、表現の歴史がまとめられている。
    入口に丁度良かった。

  • 十九世紀中葉に生まれた写真は、今生誕百五十年くらいというところか。その百五十年間の歴史が本著でつづられているが、いかんせん、つかみづらいというのはある。というのも、本著では軸のようなものが据えられていないからである。絵画ほどに、写真は、「流派」のような分類はしにくい。だが、客観と主観、どちらに軸を据えるかというのはあるようだ。それこそ、機械的に観察する場合と、自らの感情を写真に反映させる場合とがある。更には、写真自体は客観的に撮るのだが、そこに自らの身体性を潜ませる、という折衷型もある。更には、写真を絵画的に(=イメージ的に、イマージュとして)撮るものもあれば、ひたすら写実的に(オブジェとして)とらえる、といった撮り方もある。写真と一口に言っても幅が広い。

    個人的に気に入った写真の一覧を。
    アルフレッドス=ティーグリッツ「イクィヴァレント」1926
    マン=レイ「ヌード」1929
    ラズロ=モホリ=ナギ「世界の構造」1927
    ベレニス=アボット「変わりゆくニューヨーク」1939
    アンドレアス=ファイニンガー「ニューヨーク、42丁目通り」1947
    ベレニス=アボット「デイリーニュース・ビル」1938
    アンドレ=ケルテス「メランコリー・チューリップ」1939
    ロバート=フランク「ニューメキシコ」1956
    マイナー=ホワイト「白昼夢」1958
    ジュリー=N=ユールスマン「浮かぶ木」1969
    ジョージ=A=タイス「ガソリンスタンドと給水塔、チェリーヒル、ニュージャージー」1974
    リー=フリードランダー「ホテルの部屋」1962
    リンダ=コナー1976
    アンドレ=ケルプケ「セックス・シアター」1978
    ロバート=カミング「椅子」1978
    ジョン=ファール「ユタ」1977
    ジョイス=バロニオ「四十二丁目スタジオ」1979
    ロバート=メイルソープ「リサ」1981



    写真の可能性はさらに拡大していく。それは、メディアの媒体として。広告やファッショナブル、スタイリッシュ、ポップなある種のアーティスティックな写真(ウォーホルを初めとして)、逆には報道写真のようなものまで写真の幅は拡大していく。そこから、また、主観的な事象をとらえる方向へと回帰していくものもあれば、写真とは実は物語の挿絵のようなものだとして写真をテキストのように扱う者も現れる。

    お気に入りの写真をいくつかあげたが、スティーグリッツのイクィヴァレントはどことなく象徴主義あたりの風景画を思わせる。やはり、全体的に自分は風景画をほうふつとさせる写真が好きなようである。写真としての写実性としかし象徴性をどことなく備えているようなものに惹かれるようだ。半面で、ジョイス=バロニオやロバート=メイルソープがとるようなある種の過激な性的女性像にも自分は関心があるらしく、その一葉一葉に惹かれる。ジョイスが撮る、女性の裸体には、性産業の陽の部分がはっきりと刻印されている。それは、淫靡的過激的な美であり、メイルソープの撮る写真、特に彼がよく被写体として選んだ筋肉質の女性、リサ・ライオンの四肢は筋肉の流動が美に溢れ、とりわけ、浮き上がる彼女の尖った乳首が生々しく迫りくる力を持っている。風景画と女性の淫靡的過激的美、肉体美、にどうしても自分は惹かれるという法則性が実感できたことは一つの収穫か?

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著者プロフィール

伊藤俊治(いとう・としはる):1953年生まれ。東京大学文学部美術史学科卒業、同大学院人文科学研究科修士課程修了(西洋美術史専攻)。東京藝術大学教授を経て、現在、同大学名誉教授。『ジオラマ論』でサントリー学芸賞受賞。その活躍の場は写真論に限らず、ひろく20世紀のテクノロジー論や肉体論にまで及び、『写真都市』『トランス・シティファイル』『生体廃虚論』『電子美術論』『バリ芸術をつくった男』など時代の感受性を反映する著作を多数発表しつづけている。

「2022年 『増補 20世紀写真史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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