新作文宣言 (ちくま学芸文庫 ウ 6-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480082503

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  • インターネットが一般化する前の本だが、ネット上でだれもが自分の文章を不特定多数み抜けて公開できるようになった現在を予見させるような幕切れだ。

    【引用】
    ・文章に絶対的な規範などありはしない。

    ・よく文章教室で「先生」に添削してもらうのだが、調子はなめらかになっても自分の文章の持ち味は死んでしまう

    ・著述は<作者>の名前を必要とする。さらに<作者>は少数でなければ意味をなさない。なぜならそれは無名者から選ばれた名誉の象徴であるからだ。(p257)

    ・ちっぽけな名誉欲や虚栄心よりもはるかに根源的に、書くこと(ことばを考えること)は人の深い欲望なのだ。(p258)

    ・文章に関して、低いレベルからイッパン人には手の届かない雲の上のレベルまで、才能と習練によって階梯を昇っていく、という考え方よりも、あらゆる人が自由に<作文>して<純粋文章>を愉しめばいいと考えたほうが、ずっと楽だし、本当のレベルはそのほうがうんと高いのではないだろうか。(p262)

  • 性能の良い複写機
    子は親の鏡といわれる。こどもを見れば親がわかるということだが、こどもは親のしぐさ、ものいいを実によくみている。三つにもなれば生意気な反論などをするものだが、「そんな言い方をするもんじゃない」
    と言ったら負けだ。「あら、あなたの言い方とそっくりよ」と横からチクリと揶揄されるのがオチだから。
    まったく子供はものまねの名人なのである。
    アイドル歌手からクマのプーさんのしゃべり方まで、みさかいもなく貪欲にコピーしてしまう。コピーすることによって子供達は全てを獲得していく。こどもたちは個性的であろあなど少しも考えない。みんなとおなじことができることが嬉しくてたまらないのだ。
    (中略)
    だが、こどもの再現のありさまを少し注意深く観察していると、この性能の良い複写機の本当の性能の良さが見えてくる。こどもたちは身体的能力、言語能力が未熟なのでオリジナルなものの完璧なコピーができない。したがってこどもはオリジナルなものを自由に改変する。
    切り捨て、誇張する。
    それはオリジナルなものからの絶妙な逸脱なのである。

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