- Amazon.co.jp ・本 (550ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480084873
感想・レビュー・書評
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著者があげている日本文学の主な特徴で、印象的だったものは、3つある。
1つは、体系だった思想を持たず、部分から入る。
2つめは、新を取り入れる場合、旧を新に変えるのではなく、新をアレンジして旧に加える。
3つめは、求心的で、都会で起きたことを都会にいる作者が書いて、その読者も都会で享受する。
ああ、やはり日本人は昔から、理屈ではなく、周りの雰囲気や空気で行動するのだと思った。
さらに、私が全体を見通すのが苦手なのも、都会と田舎なら都会に惹かれるのも、日本文学・読者の何よりの証拠なのかもしれないと感じた。
本書は歴史の教科書のように、丁寧にその時代の状況を述べ、その時に表された文学作品、宗教的哲学的著作等を、読み解いていく。
一番面白かったのは、平安時代と鎌倉時代。
古今集や紀貫之に対して、「自然など愛していない」と言っているのには、驚いた。
私も平安時代の人たちのように、季節に敏感になろうとしていたが、それでどれだけ自然を見ていたのか考えさせられた。
整然とした体系に組立られた「十住心論」を表した空海の真言宗より、妥協的・総合的だった天台宗の方がより発展したというのが、とても日本らしいと思った。
世の中を批判した漢詩が載っているとして「本朝文粋」が紹介されている。
当時の世の中は藤原氏が実権を握り、面白くない人には相当不愉快な日々だったろうが、和歌などでそれが歌われることはなかった。
批判などは主流の和歌ではなく、漢文のマイナーな場でしか発表できなかったようだ。
唐の逃避文学の陶淵明の流れに近いらしい。
大好きな平家物語は、平安末期の貴族知識人にとってありふれた価値感の寄せ集めでできていながらも、時代を反映するとともに、時代を超えたと書かれてあったのは、嬉しかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
文学研究者がえがく文学史でなく、より広い視野から文学
にあらわれた思想的展開をえがく.(2010:清水正之先生推薦) -
10.06.12購入
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日本の土着思想は、現世での恋愛が中心で、政治哲学や彼岸(来世やあの世)についてはあまり関心がない。大陸から仏教や儒教を輸入しても土着思想に変容させてしまったほど根強いものである。
上巻は万葉集から元禄まで。仏教や儒教の思想は難しく理解できなかったが、文学史を通じて日本史を捉えなおすことができた。
序章である、「日本文学の特徴について」の部分だけでも読む価値があると思う。 -
難しそうだと思い読み始めたのだが、案外読みやすく、そしておもしろい。歴史的な背景や人物、主要な作品に関する基礎知識はやや必要だと思うが、それとても高校で学んだ程度、「そんなのあったな〜」「そんな人いたな〜」、つまりは聞いたことがあるくらいのレベルで十分ついていけると思う。
さすがは20世紀を代表する知の巨人で、扱う内容が高度で複雑でも、なぜかすんなりと読めてしまうから不思議だ。きっとその理由は主題の明快さにある。「日本固有の土着世界観」という観点が最後までぶれない。この明確な主題に導かれて、読者は安心して知恵の大海に漂うことができる。
分厚いし、一見難しい文字ばかり並んでいるけど、敬遠せずにチャレンジしてよかったと思った。 -
文庫ですが分厚い。手首の力つきそうです。こんな分厚くて、しかも2冊組なのに「序」説って、何事…。
上巻は古事記・万葉集の頃から江戸時代まで。「下」がまるっと近現代なのかな。下巻はまだ読んでいません。
平安以降の和歌についての、自然や心情への描写が様式美化しているという評価(そんな言い方ではなかったけど)は、私の場合はそこまで高尚な視点ではなかったのですが、私も「内輪向けのことば遊び」だと思う部分があったので、すごくしっくりきました。 -
2009/
2009/
あの人に会いたい8月15日の回に出ていました。 -
これで「序説」というから恐れ入る。上巻は元禄文化まで。神話、民話、貴族、仏教、武士など。