〈帝国〉とその彼方: アントニオ・ネグリ講演集上 (ちくま学芸文庫 ネ 2-1)
- 筑摩書房 (2007年8月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480090942
作品紹介・あらすじ
拘束が解かれた2003年から2004年にかけてアントニオ・ネグリが精力的に世界の各地で行った講演が一冊に。グローバリゼーションが進む現代のさまざまな「運動」を横断し、それらの「運動」が呈している分節化の状況とそこから生み出されるオルターナティヴについて語る一方、『"帝国"』についての諸相を辿りなおし、ポスト社会主義の政策を展望する。"帝国"の時代における国家、社会、経済、そして人間のゆくえは!『マルチチュード』以降の道標として、政治哲学者にして革命運動家でもあるネグリの思想の最も熱い部分を明快かつ簡潔に。本邦初訳。
感想・レビュー・書評
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以前の読書感想文でも紹介したアントニオ・ネグリ氏とマイケル・ハート氏の共著である『マルチチュード』を読んでからというものの、ネグリ氏の言行には関心をもっています。その流れもあって、本屋に並んでいた本書を買うに至ったのです。
2003年に政治犯としての政府監視下の生活から解放された同士が、パスポートを手に入れて、世界各地をとびまわりながら現実社会の変化を感じ取ったうえで、自身が書きあらわしてきた著作のコンテンツとの隣接点を探ろうとする試みも含まれた講演録と言えます。
政府と多国籍企業の連合体である<帝国>の出現と、IT化のすすんだ労働環境に対する考察をふかめていくと私たち労働者のおかれている立場や能力を発揮する方法に自由が働かなくなっているため、その状況をうちやぶっていくためには「革命」しか残されていないとの主張も垣間みられます。
著者が実現すべきと考えている資本主義から脱却し、「絶対的民主主義」をなしとげた社会とは何なのか? マルチチュードからどのようなものに育ったものなのか? こうした疑問への解答は、まだ見えてこない部分が多くあるように思います。政治経済が社会活動をドライブさせるシステムであることは否定できないはずなのでは、著者の言動から政治と経済の密接もしくは融合ととらえて非難していることに違和感をいだくこともあります。
しかし、収録されている講演をおこなってから4年以上も経過し、その間に環境問題や石油や水をはじめとした資源獲得競争の激化、食料をめぐる投機マネーの集中が引き起こている混乱をもふまえると、かなり難問とおもわれる社会構造や生活習慣の変革にネグリ氏なりの答えがいつ出てくるかを気にせずにはいられません。詳細をみるコメント0件をすべて表示