かたり: 物語の文法 (ちくま学芸文庫 サ 24-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480091338

感想・レビュー・書評

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  • 一文が長過ぎて、途中で彷徨いながら読了。
    内容は面白かった!

    最近、「語りとは何か?」という問題を見かけて、どう答えればいいのか悩んでる所で、たまたま立ち寄った蔦屋書店に燦然と輝くこの本が!
    出会いと思って、読むことにした。

    まず〈はなす〉と〈かたる〉は、どう違うのか。
    初っ端から面白い問いである。

    「この二つの言語行為をくらべた場合、〈はなし〉のほうが、より素朴、直接的であり、それに対して〈かたり〉のほうは、より(二重化的)統合、反省、屈折の度合いが高く、また日常生活の行為の場面からの隔絶、遮断の度合いが高い」

    「はなしのすじ」とは言うが「かたりのすじ」とは言わない、つまり起承転結を欠いた〈かたり〉は通常考えられないことを意味する、と分かりやすく述べている。

    また、〈はなし〉は現実的な事実、聞き手に緊張を与えるものであるのに対し、〈かたり〉の地平はやや曖昧で、緊張緩和の作用をもたらす。

    一方、〈かたる〉と〈うたう〉については、どちらも、自身ではない何か別次元(それが霊的なものでも、時間的なものでも)のものが憑依するといった性質を共通に持つとする。
    その意味で、〈うたう〉の方が神ー人の関係がより垂直的であると述べる。

    こうした、別次元の時間や空間を、現在に表出させることを、古典の助動詞「き」「けり」の使用と絡めていて、これも面白い。

    そうした〈かたり〉の位相を考えた時に、微分方程式やクライン流変換群の数学や、ピアジェが指摘する物理学における時間の操作的可逆性にも繋がってくることを示す。

    個人的には〈かたり〉の持つ詩性、暗喩と換喩の話が書かれている所から、先日読んだ『騎士団長殺し』の二重メタファーを思い出した。
    まぁ、、、結び付くのか結び付かないのか、結論があるわけではない。
    心の内にある名付けられた何かが、現在に形を取り、それがまた自分自身に戻って作用してくるといった部分と、〈かたり〉の姿が朧げながら重なってくるように感じたのだった。

  •        -2009.02.24

    「歴史学は客観主義、実証主義の過度の呪縍から逃れ、小説の手法を用いながら、具体的な効果を現す」べしとした折口信夫の論を承け、虚構-実録の双方根底に<かたり>という共通の基盤を見出した著者が、和洋垣根のない柔軟な発想で<かたり>の位相や地平を論じる。

  • 図書館有

  • はなしーかたりーうた
    ふるまいーふりーまい
    という系列をたどって、行為とその主体の二重化的超出ないし二重化的統合の度合が高まり、またその構造が顕在化するにつれて、「ひとは、いわば日常目前の生活空間の時空への拘束からはなれて、そうした目前の利害・効用に直結するいわば水平の時間・空間から、記憶や想像力や歴史の垂直の時間・空間の奥行のうちへと参入する。この垂直の時間・空間の次元は、その究極において、真に非日常的な<ミュートス>神話の空間、記憶を絶した<インメモリアル>な時間にふれる」というようにいい、さらに、そうした世界が「プルーストやジョイスの記憶や想像力の<かたり>の世界であり、あるいは、ベルクソンの持続と純粋追憶の世界である」といいそえておいた

  • かたりとはなしの違いとか基本的なことは理解できたけどヤーコブソンの話が出てきた辺りでもうよくわからなくなった。

  • 2009年4月1日購入

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