科学哲学への招待 (ちくま学芸文庫 ノ 5-2)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480095756

感想・レビュー・書評

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  • 【星:4.5】
    「科学」とは何か、哲学と何が違うのか、そんな疑問を抱いていたところで見つけた。そしてこの私の疑問に十分答えてくれた1冊であった。

    科学史・科学哲学・科学社会学と3部構成で、お堅い内容ではあるものの、非常に丁寧な説明で分かりやすく書いてくれている。
    正直分からない部分もあるが、文章・説明が丁寧なためか、それがストレスにならない。

    読んでよかったと思わせてくれる本であった。

  • ギリシア的コスモロジー(アリストテレス的自然観)
    =天動説

    アリストテレスの運動(実体も量も質も)
    可能態dynamisから現実態エネルゲイア

    2000年信じられてきたアリストテレス的自然観が「科学革命」によって崩れる
    =「十二世紀ルネサンス」
    アラビア科学をヨーロッパ世界にもたらした
    ・アラビア数字
    ・位取り法
    ・60進法
    ・アラビア語の定冠詞al(代数学、アルゴリズム、アルカリなど)
    ・実証主義と実験精神(錬金術からくる)

    コペルニクス「コスモロジーの転換」
    ニュートン「天と地の統一」
    ケプラー

    ガリレオ「自然の数学化」
    質的自然観から量的自然観へ

    ギリシア科学 演繹法の論証科学
    アラビア科学 帰納法の実験科学
    →近代科学「仮説演繹法」

    普遍的命題⇔個別的命題

    発見法abduction
    プラグマティズム創始者パース

    現代ではセレンディピティ

    ラプラスのデーモン=古典物理学的世界像の崩壊危機

    分析命題⇔総合命題

    『沈黙の春』地球環境問題の原点

    Trans Science

    価値中立神話
    科学技術は諸刃の剣

    フクシマによる専門家の信頼の危機

    R信頼性
    I世代間倫理
    S社会的説明責任
    K知識の製造物責任

  • 無茶苦茶おもしろい。高校生から10代のうちに読んでおくべき本。
    哲学→科学の歴史から、科学哲学と科学者、社会との関わりまで、時代を追いながら論者と理論の変遷がわかる。
    純粋に真理に至る道を探る素朴な科学像は今はもうないと思った。

  •  タイトルどおり、と言いたいのだが、科学哲学に相当する部分は後半第2部のみである。前半第1部は科学史、特に自然哲学から(バターフィールドの意味の)科学革命、科学の制度化に至るまで科学といわれるものが扱ってきた題材の変遷について扱われており、章としては長めの補章は、東日本大震災と関連する事故を軸に、第2部の内容を焼き直した繰り返しとなっている。
     星は4つと多めにつけているが、実際のところ手放しに感銘を受けた箇所は少なく、疑問や思慮の浅さが気になり、刺激となって視野を広げる意欲が沸き立ったための評価である。若いころ読んだ著作に比べてかなり劣ると感じたが、著者は年齢なりに成熟し、哲学的思考に向かっているのではないかとも思えた。
     言語哲学、分析哲学っていうのは手法が稚拙で、機械的な推論という感触があって好みではないのだが、得られる結論が科学の枠組みを超えていくところに驚いている。本当のところ、科学哲学は、哲学を称する限り、「より善く」を常に目指す指向として哲学することを続けるよすがとしなければならない。だが、公僕である著者は、現実的にも掘り下げが甘く、民主的活動に働きかけるでもなく、さりとて実効的になれば官僚制度に成り下がってしまうような社会制度、法制度論の様相へ移ろっていってしまうのは残念でならない。
     本書を読んで、私自身、科学や認識論をとおし知識をより善く磨いていくためにはどうしていけばいいか、さらに深く考え直す必要があることに気付いた。
    (またそのうち書き直すことにする)

  • 科学哲学に興味を持ったので買ってみた。元々大学の教材として書かれただけあって分かりやすい。科学哲学が科学史や論理学、そして社会と密接に関連することに気付かされた。閉鎖的なシステムの中で行われてきた科学研究のあり方が時代の流れと共に変わり、社会から説明責任や倫理的責任を問われるようになってきたという指摘は興味深い。

  •  科学とは何か。その問いに答えるため、科学史、科学哲学、科学社会学の三つの観点から論じた本。理路整然とした文章で、取り扱っている内容も質、量ともにバランスが良く頭に入れやすい。

     印象に残ったことは、古代理論が長い間支配していたのは、理論が日常の知覚的経験と合致していたから、また、理論の中核的な規則が、当時の信仰的背景と親和性を持っており、そのため、革新的な考えは発案者すら葛藤を生じさせるものであったからである。
    このことは、科学の発展を考える上で重要な事例である。なぜなら、科学とは仮説であることを如実に表している事実だからである。

     仮説ではあるが、悲しいことではない。科学とはそういうもので、それゆえに発展を遂げているからである。

  • とてもおもしろい。何よりも既出事項を何度も反復して振り返ってくださるので、折返し内容理解を深め、事実確認しながら読み進めていくことができる。正直、どのように自分が、科学に取り組んでいくかその立ち位置を確認するにはもっと学ばなくては、と思うものの、大きなヒントを与えてくれることは間違いない。
    近年における科学研究のあり方についてなども言及している最後の方は評価も別れるのかもしれないが、個人的には誠実な著者の学問に対する態度が表れているように思え、、非常に勉強になった。

  • 読了日 2020/07/19

    Kindleにて、音声読み上げで読了。
    哲学と科学の歴史的背景をたどる一冊。

  • 天動説が間違っていて、地動説があっているという考えは、まだ学校で教えられているのかもしれないが、どちらがあっているか?という考えそのものが、社会のパースペクティブによって経験科学である自然科学が成立していくという、学問の歴史性を示している。
    また、地動説が正しいとしたとしても、それはより、「何が中心か」、何が慣性系かを考える我々の習慣が強くなっていることを物語っており、マイケルソン・モーリーの実験の執念への奇妙さを生んだ。そもそも、この世界に慣性系を物語るような現象は観測されたことがあるのだろうか?観測されたこともない現象に基づき物理法則の仮説が生まれること自体、錬金術の補完的要素が科学に残されているのだろうと思う。

  • 科学とは何か?を広く紹介した本。科学技術という言葉があるが、本来科学は裕福な趣味のようにやるもので、奴隷のやるような労働の技術は別ものだった。それらがいかに結びついていくかのあたりが面白かった。

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著者プロフィール

東北大学名誉教授,総長特命教授

「2016年 『現代哲学キーワード』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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