- Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480428790
作品紹介・あらすじ
百人一首といえば正月かるたの定番だが、その成立の経緯や歌の選択基準・解釈については、藤原定家がかかわったという事実以外は多くが謎に包まれている。本書は、研究者の立場から「百人一首」にまつわるさまざまな関心事項を一般読者向けにやさしく、しかし正確に記した入門書。成立から千年を経て今なお人気の高い歌集の秘密に迫る。著者所蔵の稀少な史料を巻頭カラー口絵で紹介。
感想・レビュー・書評
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後半の競技かるた云々のtころは面白くない。前半の島津さんの説を引用してくれたのがよい。百人一首は百人一首の論理により和歌を解釈し選んでいる、元の歌集に戻っての解釈ではなく、百人一首内での読みが必要である、と。
定家についてまとめているところも役に立った。
出だしが、百人一首の成立事情について書いてあるのだが、いきなり先制ぱんちというところ。いきなり難しい。が、その後は読みやすいため、出だしだけしんどかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
百人一首関連本を数多く出している吉海さんによる珠玉の1冊。「『百人一首』とは何か」、「百人一首のひろがり」、「現代に生きる百人一首」の三部構成。最新の研究をわかりやすく紹介。ちょっとしたブームになっている現代における百人一首まで網羅。学者さんの誠意が感じられる。時雨殿はリニューアルしましたね。しかしなんでこんなキャッチーなタイトルをつけたんだろう。もったいないくらいの好著。
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誰をかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに
藤原興風
広く知られているようで、その実、「だれも知らなかった『百人一首』」。同志社女子大学教授・吉海直人氏による、刺激的な著書のタイトルである。
まず、最先端の研究から、「藤原定家による撰【せん】」という通説への疑問が示されている。百人一首は、成立以降170年以上も文献に登場せず、決定的な資料が足りないのだそうだ。定家撰者説は、室町期、二条流歌道において定家の神格化が高まり、その過程で権威付けのために流された言説とも考えられるという。
1951年に、百人一首の草稿本とされる「百人秀歌」が発見されて以来、研究の加速度も増しているようだ。「源氏物語」との影響関係の指摘や、作者の中に親子が18組もいて、祖父母と孫も9組もいるというデータも興味深い。
意外な発見では、「小倉あん」や「竜田揚げ」などの語が百人一首由来のものであること。かるた取りよりも身近な話題だ。
さて、吉海氏が最も注目するのは、「百人一首内本歌取り」である。百人一首に、「本歌」と「本歌取りの歌」の両方が存在するという説であり、たとえば、掲出歌の本歌取りと見られるのが次の歌。
もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし
大僧正行尊
言葉上は「知る人」だけの一致だが、発想の類似、そしてしみじみとした趣きに共通点が見出せる。この二首をそのように解釈した撰者の意図、それを探るのが研究の醍醐味なのだろう。
(2012年1月8日掲載)
※昨年掲載のものとセットでアップします。