雇用の常識 決着版: 本当に見えるウソ (ちくま文庫 え 16-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480429773

作品紹介・あらすじ

「日本型雇用の崩壊」とは何なのか?終身雇用は本当に崩壊したのか。悲惨な派遣社員は「急に」増えたのか。様々なデータを参照し、そうではないことを証明して話題となった本の待望の文庫化。著者は、人事・雇用のエキスパートとして作られた常識、錯覚を起こすメカニズムを解明し、「本当に必要な策」を提言する。データを更新し、最近の流れや問題点も入れて、大幅加筆した決着版。

感想・レビュー・書評

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  • (2012/9/8読了)若者は20年前も3年で3割が離職していた、とか、転職は相変わらず一般的でない、とか、実は大卒の新卒採用数は増えている(それ以上に大学生の数が増えたから氷河期になっているだけ)とか、色々とデータに基づいて説得力のある内容が語られている。

    一点だけ異議があるのは、P252「中小は待遇が悪い、というのは誤解だ」という点。ええそりゃあ、勢いのある業種の新興ベンチャーなんかは規模は中小でも「二割以上の企業は大企業の平均給与を超えてもいる」でしょう。でも残りの8割は、「大企業より二割~四割給料が安い」んですよ。製造業の下請けはマジ大企業の60%ですよ。勤続年数が短いから安く見えるだけ、と取り繕ったところで、同じ年齢で比べたら60%なのが現実。そして中小には定期昇給のない(勤続年数が増えても昇給しない)会社もたくさんありまする。
    給料は安いけど、「それでもなお」、大企業にはない自由があるのが中小の良さであります。だから私も、大手で内定が取れなかったという学生には中小企業への就職を強くお勧めはするけれど、「待遇も悪くないんだよ~」と言うのは詭弁だべ?待遇はたいてい、悪いです(笑)

  • 雇用の常識と言われる問題に、データを持って切り込んでいく書。世の中の都合の良い議論に惑わされていないか、この本を読んで確認することが必要と思う。雇用に関して、何かものを言う前にこの本を紐解き、問題ないか確認したいと思った。

  • 疑問点
    ・長期勤続の推移をなぜ平均勤続年数で測る。団塊の影響あるだろう。
    ・企業の配当について。単なる経済の成熟化では。また人件費の方が配当に対してア・プリオリに決まる。
    ・一般職女性と派遣と同じような待遇か?
    ・定年延長の若年者への影響。ダイレクトでないのは分かるが、数字の見方ヘンじゃないか。
    ・誤植気になる
    ・ワープアの数字が主婦・学生込みで過大なのが一人歩きしていると。でも、だからOKって訳でも。。。

    ほほうの点
    ・農業、自営業、建設業が減っていてホワイトカラーに流れ込み。企業も吸収しきれないし、ミスマッチの原因にも。昔のホワイトカラーはエリートだったんだな。
     90年→09年
     製造・機械運転・建設 425万人減、農林作業 201万人減
     管理的・専門的/技術的・事務 345万人増、販売・サービス198万人増
     以前はヒト相手の仕事をしなくて済んでいた人も対人業務に引っ張り出される。
    ・大卒はすごく増えている。
    ・転職するほど生涯年収が減る傾向。リストラをカウントしてしまっている?
    ・中小企業には大卒の人材需要。10年以上かけてミスマッチ解消していく。
    ・就職に関する言説は超大手の状況に偏りすぎ。
    ・80年代くらいまで年金未加入者(or国民年金のみ)が多かった。自営、中小、サラリーマンの妻。モデル金額もらっている人少ない。昔のホワイトカラーはエリートだったんだな。
    ・欧米の二極化したエリートとそれ以外を混同した言説が多い。
    ・提案の派遣業者による新卒マッチングは具体的で面白い。
    ・自営が減ったので引きこもり増の仮説も面白い。

    データを使っているのが売りみたいだが、全般的にデータを使った部分が少しあやしくて、人材業界の体験に根ざす部分が面白い。

  • リクルート出身の人が書いていたこと、新卒採用について調べていたことから手に取った。


    「まとめ」
    ・世間で言われている俗説について、イメージで語らず根拠を示して現実を炙り出している。トピックは人事という大枠の中で多岐にわたるが、2点特に気になった点を整理する。
    ①新卒採用への批判への再批判
    日本は学歴社会で多様性に乏しく、アメリカはダイバーシティに溢れイノベーションが起きやすい。。というイメージで景気が停滞している中、新卒一括採用は批判の的にされがちである。しかし実際に両国の採用システムを冷静に比較すると日本はむしろ学部卒でも広く門戸が開かれ、学歴差別も薄く(筆者曰く、アメリカで学歴差別が議論にならないのは当たり前のものとしてそれを社会が受け入れているから)むしろアメリカの方がダイバーシティには欠ける組織なのではないか。事実、アメリカの大企業で創業者から経営者が変わった企業の中に、今もイノベーティブだと言われる企業は多くない。


    ②若者の離職率が上がっているという俗説批判
    読み終わったあと考えると、そもそもなぜこのような議論が展開されているのかまるでわからなくなるほど若者の離職率はここ30年変化”していない”。ゆとり世代の若者が定職にもつけずニートが増えているというような社会的イメージを植え付けようとする流れがあるのだろうか。。むしろ転職サイトの充実や、流動性の高いIT、サービス業界の発達により転職への社会的ハードルは下がっているにも関わらず、それでも上がらないことは今の若者が”我慢強い”ことすら表しているのではないのか。

    「感想」
    ・本著に出てくるようなマクロなグラフを読み解く時に、一つの切り口とメディアでの報道の仕方だけを見て、それが真実だと判断する危うさについて改めて理解した。
    他の世代と比較してみること、時間軸を入れる時に世の中の経済状況も踏まえてみること、資料は最初から最後まで目を通した上で議論をすることなど、今回の議題以外を見る時にも活用できる視点が数多くあったと感じた。

    ・大企業の新卒採用という点から見た時、日本とアメリカで大差がなさそうなことは理解できたが、では、なぜアメリカの方が世界に影響を与えるほどのベンチャー起業家が現れるのか。それはそもそもそういったマインドを持った教育がされているのか、ベンチャーを支える環境が揃っているのか。。結局アメリカの大企業は数多く生まれるベンチャーを買収することで成長している事実を踏まえた時、そこまで言及して考える必要はあるのではないかと考えた。

    「学び」
    ・情報を見極める力の必要性。もう一度この本を読んだとき、何箇所かは自分で批判できるようにならないといけない(実際にはできなくてもいいが、批判の判断になる資料を追加で調べられる観点は持ちたい。)特にめんどくさがらず、元の情報をきちんと見ることはすぐにできるものだと感じた。(直近では大統領選の元のデータを見て、日本語訳との違いを楽しんでいた)

  • 151108
    若者の非正規雇用は増加していないし(8割が主婦と学生と高齢者)し、正社員の減少も生産年齢人口自体が減った影響が大きい。また、失業率は小泉改革前からずっと上昇していた。
    ただ、「雇用のミスマッチ」という課題はある。第二新卒だったりで中小企業に入るのではなく、その期間を短くしていく必要がある。

  • 内容が正しい。世の中、沈設ばかりでやんなるよね。

  • データを参照して問題点を把握し、その原因を分析、推定すること。
    その当たり前のことがされていない、空気に流された議論がいかに多いことか。
    そんな議論を一蹴するのが本書。
    痛快である。

  • この人の本は大かた読み終わったかな。これで。
    ネタはかぶることが多いけれど、内容の整理になって逆に良かったかも。
    この人のおかげでニュースや新聞・ネットの内容について数字をうのみにしない習慣ができました。感謝。

    アベノミクスで女性管理職を増やすとか3年間抱っこし放題って政策がどれだけ実現性が低いのか・・この本が語ってくれてます。
    課長になるのに平均何年かかるのかってのと女性の勤続年数を考えると3割に持っていくのは相当大変だし、現実結婚・妊娠退職がどれだけ多くって、それにどう対応するかのほうが大事でしょ・・って言ってくれてます。
    高齢者の年金も満額もらえてる人なんてほんとにわずか。公務員の人とかになるってのもニュースじゃおしえてくれないもんなあ・・

    大卒みな総合職ってのはやっぱり現実的じゃないよね。二段階滑り台、途中で一般職に変更ってのは勤続年女性にとっては数を延ばす方法かもなあ。看護師なんかは専門職だけど一般職的扱いっていうか、経験による給料加算もそんなにないから平均高めのお給料変化なしって印象なんだよね。まあ、だからすぐ辞めちゃうし、すぐ就職できちゃう。資格を取るといいとみんなが手に職持とうとするけど、その辺の現実はみてくれてるんだろうか・・




    フィリピンの女性管理職の多さにびっくり。フィリピン男働かないって本当だったんだあ・・・

  • グッド
    Raw dataに当たる重要性を再認識。

    ま、世の中印象論で語る輩が何と多いことか。
    某欧米礼賛の某科学者とか。

  • 批判と反論、統計、改善案

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著者プロフィール

雇用ジャーナリスト、経済産業研究所コア研究員、人材・経営誌『HRmics』編集長、ニッチモ代表取締役、リクルートキャリア社フェロー(特別研究員)。
1964年、東京生まれ、大手メーカーを経て、リクルート人材センター(リクルートエージェント→リクルートキャリアに社名変更)入社。新規事業の企画・推進、人事制度設計などに携わる。その後、リクルートワークス研究所にて「Works」編集長に。2008年、人事コンサルティング会社「ニッチモ」を立ち上げる。『エンゼルバンク─ドラゴン桜外伝』(「モーニング」連載)の主人公、海老沢康生のモデル。
主な著書に、『「AIで仕事がなくなる」論のウソ』(イースト・プレス)、『雇用の常識「本当に見えるウソ」』(ちくま文庫)、『面接の10分前、1日前、1週間前にやるべきこと』(小学館文庫)、『仕事をしたつもり』(星海社新書)、『女子のキャリア』(ちくまプリマー新書)、『無理・無意味から職場を救うマネジメントの基礎理論』『経済ってこうなってるんだ教室』(ともにプレジデント社)など。

「2018年 『名著17冊の著者との往復書簡で読み解く 人事の成り立ち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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