生ける屍 (ちくま文庫 て 13-1)

  • 筑摩書房
3.31
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (379ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480430373

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  • 医薬品会社の研究員で
    実験薬理学者のデビッド・フォックス32歳は、
    旧イギリス植民地であるカリブ海の「サウスウォード諸島国」へ。
    ホッグ島の研究所所長ドライザーが、
    学習能力増進剤と噂される物質の、
    ネズミを使った薬効の検証を行う人材を求めているというのだった。
    「サウスウォード諸島国」は
    トロッター一族が支配権を握る独裁国家で、
    島民は近代文明を受け入れつつ、昔ながらの呪術を信仰していた。
    デビッドは首相の命令で、投獄された政治犯を被験者として
    新薬の効果を試す実験を行わされたが……。

    タイトル「生ける屍(walking dead)」は、
    島に生息する植物の猛毒を食らわされた者が、
    束の間「生きながら死んでいる」状態に陥った様を表現すると共に、
    優秀な仕事人だが、
    人間としての奥行きや深みに欠けると評される主人公の
    自虐的な自己像の比喩。
    そんな彼が、
    生きながら死んでいるに等しい囚われの状況から脱出するため、
    イチかバチかの大勝負に出る。

    その、ドタバタに突入してからラストまで一気に読ませるところが凄い。
    伏線も回収されるし、
    読者としてはカタルシスも得られて、素晴らしく面白いのだが、
    面白くなるまでの前段階が長い(笑)!
    とはいえ、頭がよくて仕事はバリバリ出来るが、
    どこか四角四面で柔軟性に欠け、
    退屈な男呼ばわりされていたデビッドが、
    死線を越えて一皮剥けた姿に拍手を送りたくなった。
    いや、本人は無我夢中で、ほとんど頭の中が真っ白
    みたいな状況が続くため、
    却って淡々と事に当たっているようにしか見えないところが、
    ちょっと笑えるのだけど。

    原著は1977年の作品だが、古さは感じなかった。
    仮に舞台を現代に置き換えても、
    通信機器を取り上げられて外部との連絡が出来なくなれば
    同じことだと思ったからだし、
    政治や人権の問題は、
    あらゆる地域で解決済ではない現在進行形の話だから――
    でもある。

  • いまひとつのれなかった。政治やアクションものに関心があれば楽しめたのかなとも思う。旧宗主国の読者はこういうのにわくわくするんだろうか。

    フォックスみたいな人がこの状況に陥ったら、まあそうなりますよね、という展開で、魔術がらみのあれこれなんかも、ああそうなの…というか。語られない先の奥行きを感じ取ることができなかった。

  • ???気づいたら終わってた

  • ビブリア古書堂の事件手帖で希少本として登場し、魅かれるものがあったので復刻版を読んでみました。島や人々の独特な雰囲気は好きなのですが、面白いかと問われると少々困ってしまいます。

  • 嫌いじゃないのよねえ。作品に流れる静かな不気味さとか人物達のテンションとかも丁度いい。でも話の内容が頭に入ってこないのよねえ。気が付くと話が進んでいて、( ゚д゚)ハッ!いつの間にか置いてきぼりにされてる!という状態に。10ページに1か所程の割合でお気に入りの表現が出てくるし、その表現は作者がうまいのか訳者のセンスなのか、よくわからない作品だ。しかし、作者のテンションの低さが際立っていると思う。無理矢理ドラマチックにしろとは言わんが。地味な作品なんだが話題作と言うねー。何だか調子の出ない読書だったな。

  • ミステリ

  • 2015/10/22購入

  • (欲しい!/文庫)

  • 最初はあまり面白さを感じなかったけど人体実験をさせられる辺りから少しずつ面白くなりました。
    最初は魔術がどうのとあってもピンとこなかったのですが分かってくると世界に入り込めました。
    主人公が見事に当事者のくせに傍観者であるようでタイトルそのものでした。退屈な男が住む文明社会から隔離されて土着の信仰が生きる世界に行き、また本来の世界に戻されるまでを書いてありますが最後二章で感情を持つ『人』になる様子が読んでいて鮮やかでハッとしました。

  • 「ビブリア古書堂の事件手帖」第1巻登場作

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著者プロフィール

Peter Dickinson

「2006年 『封印の島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ピーター・ディキンスンの作品

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