- Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480432346
感想・レビュー・書評
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文学
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途轍もない人たちだ。そんな人たちが28人も本書には掲載されている。
作家。作曲家、彫刻家、舞踏家、漫画家、映画評論家、哲学者、文人。
各人がその分野を極めた人たちだし、老境に入っても個性を発揮して
いる人たちばかりなのだ。
だから、読み終わるとお腹いっぱいになる。だって、『家畜人ヤプー』の
作者・沼正三の子供の頃からの変態話だけでも、きっと本が1冊書け
ちゃうレベルなんだ。
女学生が踏んづけた小石を拾って来て、額に乗せるってなんなの~。
わざと頭がおかしなふりをして相手に乱暴させるって…。世に変態は
多いだろうけど、沼氏みたいな変態は筋金入りか?
舞踏家・大野一雄のアルヘンチーナ(スペインの舞踏家)への無限と
も言える愛情だとか、文人・細川護貞(元首相・細川護熙の父上)が
語る漢字の本来の意味だとか、「へぇ」と思ったり「なるほど」と感心
したり。
本書はインタビュー集なのだが、私が読みたかったのは漫画家・水木
しげると、アート・ディレクター亀倉雄策。ほとんどこのふたりだけの為
に購入したと言っていい。
水木氏が言う「時間金持ち」っていいなぁ。現金はないけれど、その分、
時間を自由に使えるのって憧れだ。水木氏も「時間金持ち」になりた
かったらしいけど、晩年までずっとお仕事していたものね。
水木プロダクションには「面談30分以内」との張り紙がしてあったようだが、
それを破るのは他でもない水木氏だったとか。
そして、亀倉氏である。1964年の東京オリンピックの時のアート・ディレク
ターであり、企業のロゴなど多くのデザインを手掛けた人。
「名取さんの方針っていうのは、とにかく他人の真似をするなってこと。
どんなに上手くても真似はダメだ、真似は一切採用しない。どうしても
自分の考え方を出さないとダメですから、非常に勉強になりましたね。」
えっと…ここだけでも読んだ方がよかったんじゃないかな、2020年の
東京オリンピックのエンブレムをデザインした人は。「トレースだった」
というのも真似だよね…ブツブツ。
他にも埴谷雄高、淀川長治、中村真一郎、吉本隆明などへのインタビュー
を収録。最後の鶴見俊輔だけが対談形式なのだが、話し手であるはずの
鶴見俊輔の方が聞き手になっていることが多くて面白い。
2001年に単行本で発行された作品の文庫版なので、もうみんな亡くなって
いるんだよね。でも、こうやってインタビュー集として、読めるんだから本って
やっぱりいいわ。
28人、みんな独特。否、独特というより怪人であり、快人かな。それでも、
私は大いなる不満がある。なんで28人、全員男性なのだろう。そして、
どんな思いがあってこの人たちを選んだのだろう。著者の思い入れを
少々書いて欲しかったな。
そして、こういう企画であるのなら、ひとりぐらいは女性を入れて欲しかった。 -
亀有のへんてこ医師より紹介されて読む。
いやあ、まだまだ自分は日和見主義だってことがよく分かった。もっともっと突っ張って生きてる老人がこんなにいる。その中には社会的に受け入れられて学問の世界で尊敬される人もいるし、真反対の人もいる。でもベクトルがたまたま違うだけで、当人たちはまっしぐらに生きてるだけなのだ。僕ももっとツッパって生きなきゃ。と思う。年をとるのが楽しみになってきた。