ひとの居場所をつくる (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 221
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480436634

作品紹介・あらすじ

これからの日本でどう生きる? 人と自然と社会の関係をつくるランドスケープ・デザインの仕事から、人の居場所について考える。解説 寺尾沙穂

感想・レビュー・書評

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  • 誰かの居場所を作りたい、と漠然と思っていたときにこの本を見つけて手に取ってみた。これまで辛かったことどうしようもないことを乗り越えられたのは、何かしらの「居場所」があったからだと思っていて、自分もそういう環境を作りたいと思ったの

    この本は、ランドスケープデザイナーの田瀬理夫さんのお話がベースにあるから、当初私が考えていたことと方向性は違ったけど、それでも沁みる文章がたくさんだった
    手間をかけて育てたい、と思うものに、いつか携わっていられるといいな
    それは小さくても私が"文化"を生み出したって言える気がする

    =====
    - 私たちが毎日くり返している、ごく他愛のないことの積み重ねが文化であり、景観をも形づくる
    - 誰かに言われるままに働いたり生きていたり、自分で考えることの出来ない精神状態には陥らずに、心と頭と身体をちゃんと動かしながら、日々の暮らしや仕事を少しでも良くしようとしてゆくことが”文化的”な営みだと思っている
    - 手間はかかればかかるほどいい。
    - ないものはつくる。

  • 2023.12
    ランドスケープデザイナー、田瀬さんの思想がよくわかる。

    ・他愛のないことの積み重ねが価値を持ってゆく。東京であれ、田舎であれ、自然・文化・歴史を併せ持った営みを生業にできるような世の中になってゆかないと面白くないでしょう。それには自分達で基準を持たないと。例えばお金でも、画面を見ながらデイトレードで稼いだそれと、田んぼや畑で実らせたもので稼いだそれでは違うのだから。そういう闘い方もあると思います。自分の価値観に素直に生きてゆくという。

  • 西村さんのnote 『ひとの居場所をつくる』… いつか誰かが言わないと
    を読んでこの本を購入した。

    多摩美の環境デザイン学科の卒展を見て、ランドスケープや建築の領域にとても興味が湧いているタイミングで
    この本に出会えてよかったと思う。

    自然豊かな景観ががソーラーパネルの設置のために破壊される、田畑が物流拠点に置き換わる
    そんなものを目にすると苦しいなと感じていた。

    この本を読んで
    ・農業の在り方が景観を形作る
    →生命維持に必要不可欠なインフラが大事なのに蔑ろにされてしまう状況はやはり危機感がある。
    少しでも自家菜園とか自給自足的な営みを増やした方がいいのだろうなと感じた。

    ・働きかけることのできる環境がどんどん失われて、心も身体も萎えてしまっている
    →社会がアンコントローラブルであることが強く感じられると打ちのめされる気がする。
    自分の働きかけられるものを少しでも増やすことが必要で、そのために学び続けたいと思った。

  • 知らなかった日本の歴史や、実態が知れて良かった。

    思わず考え込んでしまったのは、あとがきに書かれていた「未来の世代の為に行ったことが、必ずしも為になるとは限らない」ということ。

    また理想はそれぞれに異なるし、アスファルトで埋め尽くされた東京を美しいと思う人だっているのだと思う。

    漠然と、ただ消費する人になるのではなくて何かを生み出せる人になりたいと思った。

  • ランドスケープデザイナーの田瀬さんの活動や考えていることを通じて、自分の中でこれからの生き方や人間性、地域性、社会性との関わりをどうしていきたいのか考えるきっかけになった一冊。複雑に入り組んだこの世の中。もう少しシンプルにナチュラルになりたいなと感じつつ、漠然とした未来よりも今と少し先の未来に残していく伝えていける活動を作っていきたいなと思いました。

  • 環境に良いまちづくりは、ただそこに木が生えていればいいわけではない。緑地管理の仕事を機械的にやるのではなく、職人技で管理する。そういったふうに人々の仕事を作ることで、人が入ってきて環境も良くなるし人の生きがいや専門性が生まれる。

    ランドスケープデザイナーは、人と人、人と自然、人と社会の関係をつくってゆく仕事。

    とても勉強になった。自分の将来への希望がグッと膨らんだ。

  • 「これからの日本でどう生きていこうか?」

    読みどころがめちゃくちゃたくさんある本です。

    ランドスケープデザイナー田瀬理夫さんの遠野での馬との農耕生活を軸にした取り組み、田瀬さんが生まれ育った東京を通じて見つめる日本の都市の課題、そしてその生き方と働き方。

    SNSで目にする「日本オワコン説」。言ってることはわかるけど、納得したくなくて苦しい〜…という日々の思いに一つの答えが示された気がします。決して押し付けるではなく、光が灯るように。

    「人の関わりを無くさない、減らさない」考え方には勇気づけられる。
    やっぱりどんな企業でも効率は求められていて、それは常に人員削減と表裏一体だ。
    自分の会社でも、無駄な手数を減らして誰でも同じ作業時間同じ水準でできるようにと、仕事はシンプルになるよう改善を求められる。
    手数が減ると必要な人員が減り、結果その仕事に関わる人が減る。そして結局シンプルを目指した仕事が属人化して、1人2人がいなくなるだけで組織が立ちいかなくなる。属人化で疲弊して、また辞める人が出て組織がガタガタになる謎の悪循環。
    みんなで積み上げてきた仕事が台無しにならないようにする、田瀬さんの俯瞰的な働き方はもっと波及して欲しいなぁ…。

    「政治や経済だけが人間の環境じゃない」
    刺さった〜…。

    第一部ほのぼの、第二部から全く違う顔を見せる本です。注釈と付記、あとがきにも、本編に劣らず響くフレーズがたくさん!

    藤原正彦先生が「国家の品格」で「たかが経済!」と仰ってましたが、それをずば抜けた俯瞰力とバランス感覚を以って実践しているのが田瀬さんなんじゃないかと思いました。

  • 「自分の仕事をつくる」の西村氏の著書。

    今回はランドスケープデザイナーの田瀬さんという方にフォーカスを当てたロングストーリー。

    しがないサラリーマンの小生にとっては「ランドスケープデザイナー」という職業があること自体びっくりなのだが、人のあり方を都市デザインに落とし込んでいくその仕事はめちゃくちゃカッコいいし、尊い。

    現在の短期目線の商業的な都市政策ではなく、昔からの積み上げと何世代も後のことを考えた街づくりのあり方はなんだかハッとさせられる思いがした。

    純粋に田舎暮らしに憧れているので、遠野の情景を思いながら心地よく読めたが「週末移住なんてあり得ない!その土地に住んで同化しなきゃ意味がないでしょ」というがんこ親父(失礼)の一喝を受けたような気がして、クリエイターやライターならまだしも、しがないリーマンに言われても響かないよ、、と思ってしまった。

  • p256 「どこまでが自分なのか?」という問いを立ててみると〜凧を揚げている時、自分は上空に送り出したタコ糸の先まで感覚を拡張している。〜私たちの感覚はかなり自在に延び縮みするし、開閉の度合いも調整できる。「自分」の意識も、それに伴って自由に拡張されるし小さくもなる。

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著者プロフィール

1964年、東京生まれ。武蔵野美術大学卒。建築設計の分野を経て、つくること・書くこと・教えることなど、大きく3種類の仕事に携わる。デザインオフィス、リビングワールド代表。多摩美術大学、京都工芸繊維大学非常勤講師。働き方研究家としての著書に『自分の仕事をつくる』(晶文社/ちくま文庫)、『自分をいかして生きる』(ちくま文庫)、『自分の仕事を考える3日間 Ⅰ』『みんな、どんなふうに働いて生きてゆくの?』(以上、弘文堂)、『かか
わり方のまなび方』(筑摩書房)など。

「2011年 『いま、地方で生きるということ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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