幻の女 ――ミステリ短篇傑作選 (ちくま文庫)

著者 :
制作 : 日下 三蔵 
  • 筑摩書房
3.12
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本棚登録 : 128
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480437150

作品紹介・あらすじ

近年はなかなか読むことが出来なかった“幻”のミステリ作品群が編者の詳細な解説とともに甦る。夜の街の片隅で起こる世にも奇妙な出来事たち。

感想・レビュー・書評

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  • ユーレイやら商売女やらが、さわがしい短篇集。冷ややかで湿っぽさのある話ばかり。横丁で強いお酒を飲んでいるような感覚、嫌いじゃない。クセになりそうな。主に1960年代かなぁ。朝鮮戦争後の日本の風俗が垣間見える。文体がテンポよくて、落語調の話もあった。

  • 闇と熱の渦巻く戦後東京の雰囲気が“臭う”。汚くて暴力的で猥褻だし毒にも薬にもならなそうなエロ描写とかが出てくるけど、筋立てがしっかりしているので、読み終わって本を閉じた時に良いものを読んだなという満足感が広がる。風俗街に生きる主人公の一人称で彼らの感情や感覚に描写が割かれているのでホラ話にも妙なリアリティがある。生活臭ってやつ。

    (どうでもいいけど懲役太郎さんで脳内再生した)

    “五七年一月にはハヤカワ・ポケット・ミステリ(通称ポケミス)からJ・B・オサリヴァンの長編ミステリ『憑かれた死』を刊行。何者かに射殺された男の幽霊が探偵役となって自分を殺した犯人を探す、という風変わりな作品だが、この設定は田中小実昌自身のミステリにも、かなりの影響を与えているように思う。”
    と解説にあるように、幽霊の出てくる話が多い。なのでミステリというよりほぼ怪談だと思って読んでた。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/771204

  • 田中小実昌の短編ミステリー集です。こんな小説も書いていたのか、という率直な感想。ミステリーとはいっても、奇妙な味+風俗小説、といった趣の作品集である。

  • 異色ミステリ短編集。といっても広い意味でのミステリであって、型にはまったものではない印象です。軽妙な語り口でユーモラス、そしてほんの少し不気味な作品もあります。
    ホラー好きとしては「えーおかえりはどちら」「先払いのユーレイ」「悪夢がおわった」「氷の時計」などがお気に入りです。俗っぽい軽さと明るいエロティックさでさくさく読めると思いきや、逆にどうしようもなく気味の悪いところに置き去りにされてしまった感が残りました。
    「タイムマシンの罰」も絶妙作品。まさか「タイムマシン」にそういう解釈があったとは。気づかなければそれまでだけれど。気づいてしまえばこれまた、なんとも恐ろしい物語です。

  • ミステリかと思いきやゾクっとするオチのホラー、ホラーかと思いきやまさかのミステリーと、先が読めない奇妙な物語が集められた短編集。
    しかし、自分が産まれる前に書かれた小説は、なんだか違う世界の話のようだ。

  • 作家は翻訳から文筆生活に入ったこと、
    新発見だった。ユーレイ、殺人、昭和初期
    作品は分かりやすかったり、分からなかったり、
    いろいろ。

  • 幻の女が話題になっていたので読んだ。
    あまり乗り切れなかった。
    幻の女まで読んだ、
    妄想や盲言がつらつらと目の上を滑るようだった

  • 田中小実昌のミステリ短編集というか怪異譚集。
    幽霊が出てくる話が多いがまったく怖くない。怖くはないが尻の座りが良くない。居心地の悪い作品集とでもいうべきだろうか。奇妙な味わいの作品。
    収録作の中では、せまい飲み屋のトイレに入った男が消える「えーおかえりはどちら」、やたらおばけにもてる男の「動機は不明」、身体の一部のみの幽霊があらわれる「部分品のユーレイ」が面白い。
    田中小実昌ってこんな話も書いてたんだなぁ。

  • ジャケ買いした。面白かった。
    60〜70年代のアングラ感がクセになる。
    中でも、

    たたけよさらば
    えーおかえりはどちら
    犯人はいつも被害者だ
    洋パン・ハニーの最期
    海は眠らない

    が良かった。

    時代の風俗を積極的に反映させた獅子文六作品と同じく、時代考証に使えそうなくらい地名や物の書き込みが細かかったのが印象的。

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著者プロフィール

田中小実昌(たなか・こみまさ):1925年~2000年。小説家、翻訳家。戦後、復員後、東京大学中退。テキヤ、バーテンダーなど様々な職業を経て、小説家、翻訳家となって活躍。無類の映画好き、酒場好きとしても知られる。

「2023年 『ひるは映画館、よるは酒』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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