価値があるとはどのようなことか (ちくま学芸文庫)

  • 筑摩書房
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480511140

作品紹介・あらすじ

価値の普遍性はわれわれの偏好といかに調和されるか――。愛着・価値・尊重をめぐってなされる入念な考察。現代屈指の法哲学者による比類ない講義。

感想・レビュー・書評

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  • 価値は普遍的であるということを論証する本。とはいっても、ここでいう普遍的の意味は限定的だけど。
    価値はそのもの自体の唯一性にあるのではなく、自分との関係性(愛着)の中に育つものだとか、「生には、その生を送る人にとって無条件な本来的価値がない」、価値の実現可能性を保つことも価値の実現=自分の生の充実に資するのだから価値あるものを尊重しなくてはならないというのは納得できる話だった。価値は説明されれば理解可能なものであるという意味で普遍的という前提もなるほどと思う。
    ただ一章の最後では国家が伝統を守り維持することには限度があって、倫理的価値を犠牲にして民族主義や宗教等に則ることは実際ないようなことを言っているけど、現代においてさえアフガニスタンのタリバン政権の誕生やロシアのウクライナ侵略などがあってそういった楽観論もかなり怪しくなってきていると思う。というか、そうした事実に対して「不安を和らげる」必要もない気がする。
    全体的に難しいから議論を十分に追えている自信がないんだけど、生そのものに価値があるわけではないという根拠に植物状態の人間やこの先悪いことしか起こらない人生を持ち出しているのに、人々はそれ自体で価値があり尊重されるべき存在である、という話の時にはそういった事例は例外として扱うのが成立するのは何でなのかが分からなかった。
    でも人々を尊重するべきであるということを理論として説明してあるのはとても面白かった。倫理法則として理解していても、いままでそういう根拠が自分の中で説明できるものとして見いだせていなかったのでなんだか安心する。

  • 生きている意味は?とはよく聞かれる問答です。その多くは生の価値について論じているのですが、では、価値とは何か?非常に難しい問題であると言えます。ラズ氏は法倫理学者ですが、この本を通じて「価値の普遍性」というテーマについて論証します。論証は様々なあり得る反論を並べていき、それに対して反論可能なものと、エクスキューズをつけなくてはいけないものを順に論じていき、「価値の普遍性」の射程を絞り込んでいく、という内容です。価値が普遍的であるということを受け入れるならば、各人が何に価値を感じるかに多様性があることは、どのように説明されるのでしょうか?
    これという結論の得られない問題で、歯切れが悪いと思う人もいるかもしれませんし、難解と思うかもしれません(実際難解なのですべて理解できていませんが)。ですが、そのような議論を経ることで、自分自身の考え方が少し変化する、そんな風に感じられるかもしれません。


    わたし自身も、本書とは論理が違うかもしれませんが「生きることそのものに価値などない」という意見です。これは一見否定的ですが、価値などないならば、むしろ何にでもなれる、どのように自分を価値づけるも自由、という概念に至る可能性を秘めていると思うからです。
    トランス女性に対する謂われない非難がありますが、もしあなたが生きる価値を見失ったとしたら、この本を一周してみてもいいかもしれません。

  • 第1章 愛着と唯一性
    純粋性の消滅―意味の崩壊か、解放か?
    飼い馴らすこと―欲望か、共通の過去か
    公への脇道
    愛着とアイデンティティ
    集団のアイデンティティ
    不安をやわらげるイスラエルの実例

    第2章 普遍性と差異
    テーゼ
    価値はどのような場合に普遍的なのか?
    倒置の論証

    第3章 生きていることの価値
    問題設定
    永続する生の個人的価値
    生を延ばすことの個人的価値
    生き続ける欲求の意義
    死への恐れとそこからの眺め

    第4章 人々を尊重する
    カント的由来
    それ自体目的であることについて
    価値づける人々
    尊重する理由の導入
    なぜ尊重するか?
    人びとを尊重する

  • 2022I031 110/R
    配架場所:C3

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著者プロフィール

ジョゼフ・ラズ(Joseph Raz):1939-2022年。ヘブライ大学法学修士、オックスフォード大学博士。オックスフォード大学法哲学教授、コロンビア大学ロー・スクール教授などを歴任。邦訳書に『自由と権利』『権利としての法』(ともに、勁草書房)、『法体系の概念[第2版]』(慶應義塾大学出版会)など。

「2022年 『価値があるとはどのようなことか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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