歴史学のトリセツ ――歴史の見方が変わるとき (ちくまプリマー新書 410)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480684363

作品紹介・あらすじ

歴史って面白い? つまらないならその理由を探るべく、歴史学の流れを振り返ろう。事実、記憶、視野の大小など、その変化を知れば、歴史の考え方が変わるはず。

感想・レビュー・書評

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  • 歴史の教科書がなぜ面白くないのかという問いから始まり、ここ1世紀半余りの歴史学の歴史について語っていく本。
    この本を読んでみると、確かに私は歴史は好きだが歴史の授業にはあまり魅力を感じていなかったなと気がついた。
    正直学校での歴史は最後まで暗記科目としか認識していなかった。
    とはいえ、近年はその潮流にも変化が見られつつあるらしく、将来の歴史学に期待したいと思える1冊だった。
    プリマー新書ということもあって、比較的読みやすい文章なので歴史学に興味がある中高生にも十分おすすめできる本。

  •  「歴史総合」が始まるからか、歴史とは何か、歴史を学ぶとはどういうことかに関する本が目につく。
     本書もそのような一冊であるが、“プリマー新書“ということで、高校生を相手にするようななやさしい語り口。
    ページ数もさほど多くなく、とても読み易いが、その内容は濃い。

     ランケ流の近代歴史学=科学としての歴史学に対し、アナール学派、労働史学、世界システム論などの潮流が登場し、さらに言語論的転回とポスト・コロニアリズムの衝撃を経て、冷戦終結やグローバル化を背景として20/21世紀転換期には、記憶研究、グローバル・ヒストリー、パブリック・ヒストリーなど実践指向の強い新たな動きが出てきている。こうした大きな変化について、分かりやすく、骨太に解き明かしてくれる。

     
     それをまとめると、次のようなものになる。
     実証主義、公文書至上主義、資料批判、これらの背景あるいは結果としての記憶の排除、ナショナル・ヒストリー、欠如モデル(知識を欠如した非専門家に向けて、専門家が知識を与えるものとして捉えるモデル)の3点セットを中核とするランケ学派。
     これに対して、冷戦の終結によって解凍された記憶のあいだの対立や矛盾を解き明かそうとする記憶研究。排外主義に陥りがちなナショナリズムに連なるナショナル・ヒストリーを超克することを目指すグローバル・ヒストリー。そして欠如モデルを批判し、歴史学をコミュニカティヴな実践として捉え直すパブリック・ヒストリー。

     言語論的転回のところなど、多少の予備知識がないと、歴史学に対する衝撃や、反対に多くの歴史学者に無視されたのかが分かりづらい箇所もあるが、歴史「学」に興味を持つ者にとっては、入門書としてとても面白い。

  • 「歴史学の歴史」についての、ごくごく簡単な概説。本文168ページという読了コストの低さに鑑みれば内容は十分なはず、ただ大満足!とはいかないのが歯がゆいところ。

    ランケに始まる実証主義歴史学から、アナール学派などの社会史、言語論的転回、20世紀末以降の実践重視の試みまでが大急ぎで解説される。紙幅が限られる中、歴史学における実証主義の特徴として「記憶の排除」、ナショナル・ヒストリー、欠如モデルの3点を挙げ、これらを乗り越えようとする試みとして以後の歴史学を描く。全体としてのまとまりもあり、読み物として非常によく出来ていると思う。

    しかし、中学・高校生を読者層として想定しているからか、まだ発展途上の同時代的な潮流(グローバル・ヒストリーなど)に割くページ数が多い。そのためか最後の方はやや失速気味。個人的にはマルクス主義・進歩史観の興亡などを期待していたためそこは残念。

    現代の歴史学の試みについては、試みとしては面白そうではあるが、現代美術のような「何でもあり」化が進んでいるようにも感じられた。社会学や民俗学にも同様の問題意識はあるらしく、ポストモダン世界での人文科学は「歴史の終わり」を迎えつつあるのかもしれない、などと思った。

  • 相変わらず明解な見取図を示してくれる小田中節が炸裂。歴史学は実証主義、公文書市場主義、資料批判の三本柱によって成り立つ「ランケ学派」がその中心にあったが、それは「歴史ってつまんない」と裏表だった。しかし今日の歴史学においては、記憶研究、グローバル・ヒストリー、パブリック・ヒストリーといった「歴史って面白い」って思ってもらえる方法論が台頭してきているという。しかしやっぱり、依然として「ランケ学派」は強い。
    この「ランケ学派」にパラダイム・シフトが起こるのかどうかが、歴史学の変化のひとつの鍵になる、といった論じ方をしている。
    僕は古い人間なので「ランケ学派」を捨て去る気にはまだなっていないのだが・・・本当にパラダイム・シフトはいつか来るのだろうか。それは僕が生きているうちに、なのだろうか・・・?

  • 歴史がつまらないといわれるのはなぜか。歴史学が科学として成立し、ひとつの学問領域として制度化された19世紀から21世紀初頭に至るまでの歴史学の歴史を概観。現在の歴史学のありようと特徴を明らかにする。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40288826

  • 【請求記号:201 オ】

  • 「公共政策応用演習(国際政治史)」
    小林正英先生 参考図書
    電子ブック(LibrariE)
    https://web.d-library.jp/shobi_u/g0102/libcontentsinfo/?cid=JD202209006782
    ※ログインの利用者IDは学籍番号、教職員はFから始まる8桁の番号です。
    PWはメディアセンターからのメールをご覧ください。

  • 歴史学が科学として認識される過程を詳細に記述した内容だが、知らない事項が満載で圧倒された.振り返ってみると、単純に事実を記憶してそれが歴史の勉強だと思っていたのは間違えないが、この本で展開される理論構築の過程は非常に新鮮だった.

  • 「歴史がつまらないという人は残念ながら多い。その理由を探るべく、歴史学の流れを振り返ろう。事実、記憶、視野の大小など、その考え方は変化している。これを知れば、歴史が面白くなるに違いない!」

    目次
    はじめに―歴史って、面白いですか?
    第1章 高等学校教科書を読んでみる
    第2章 「歴史を学ぶ」とはどういうことか
    第3章 歴史のかたちはひとつだけじゃない
    第4章 歴史の危機とその可能性
    第5章 世界がかわれば歴史もかわる
    おわりに―歴史学の二一世紀へ

    著者等紹介
    小田中直樹[オダナカナオキ]
    1963年生まれ。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科単位取得退学、博士(経済学、東京大学)。東京大学社会科学研究所助手などを経て、東北大学大学院経済学研究科教授。専門はフランス社会経済史、歴史関連諸科学

  • 中高生でも少し背伸びをすれば読み通せる(さすがプリマー新書)なのだが、中高の先生がむしろ読むべき本かも、ということで読んでみました。
    高校「歴史総合」では歴史の見方を学ぶという意味合いが以前のカリキュラムより強いため、知っておかねばならないことが書かれているという意味で必携の書です。

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著者プロフィール

1963年生まれ。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科単位取得退学、博士(経済学、東京大学)。東京大学社会科学研究所助手などを経て、現在、東北大学大学院経済学研究科教授。専門はフランス社会経済史、歴史関連諸科学。著書に『フランス7つの謎』(文春新書)、『フランス現代史』(岩波新書)『歴史学ってなんだ?』(PHP新書) 『歴史学のアポリア――ヨーロッパ近代社会史再読』(山川出版社)などがある。

「2022年 『歴史学のトリセツ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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