打倒!センター試験の現代文 (ちくまプリマー新書 217)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480689191

感想・レビュー・書評

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  •  センター試験の現代文の試験が、いかに「くだらない」か、あるべき国語教育から離れて、単なる「情報処理能力」、「翻訳能力」、小説問題なら加えて「小市民的感情力」と「物語パターン化能力」、評論問題なら「二項対立参照能力」を使うだけの試験になっているのか、実際に過去問を使って「正解」を導き出す方法を解説したもの。試験問題だけでなく、人物評価の重視、道徳の教科化、なども同じ思想によっており、全ては「打倒」すべきもの、とされている。
     もはやセンター試験ではなくなっているし、今ではどれくらいこの本の内容が通用するのか全く分からないけど、あんまり変わっている姿は想像できない。「受験者数を考えれば、それもマークシートで解答できるような作問にならざるを得ない。僕はやっぱり『くだらない』という感想を持つと思う」(p.188)と著者も言っているし。
     いくつか著者の本を読んで、毎回痛快というか、明晰な解説が読んでいて気持ちいいけれど、評論問題の部分はつまんないなあと思った。そしたら「正直に告白すると、僕は評論問題の解説をしていて、うんざりした。徒労感のようなものしか残らなかった。これで運命が決まるとしたら、受験生があまりに不幸だ。」(pp.187-8)と書いてあって、やっぱりこんなの嬉々として解くものでもないのかなあと思う。おれは英語の教員だけど、英語の共通テストも読んでいて面白くないし、TOEICも面白いと思えないし、勉強が嫌いじゃなくて教員になっているおれでも面白くないと思うんだから、ふつうの生徒が読んだらもっと苦痛なんじゃないかと思う。国語でもおんなじ感じなのかなあと思った。でも少なくとも多くの英語の試験は単なる情報処理能力の試験になっていて、一定時間内に与えられた情報をもとに素早く検索したり照合したりすることが「英語」というもの、という一つの側面になっている。だから国語も、こういう著者の考える「くだらない」力を鍛えるのが学校の「国語」というものの一部、ということかもしれない。
     おれは高校生の時、センターの評論は良かったけど小説で苦労した覚えがあるから、この本に出会って勉強してたらどうなったかなあと思う。(24/02/24)

  • 子供が興味を持たないかと、自分が借りた本のなかにそっと混ぜて置いておいたら、何これ、と手に取り読んでました。やった!

    ーすべての受験生におくる、石原流・読解テクニックの集大成。小説では「良い子」に。評論では「進歩的知識人」に。

    このスタンス、おもしろいな、と。

  • センター試験現代文の過去問3年分を取り上げ、大学受験現代文の「思想」を批判的に捉え返しながら、解法のテクニックを解説している本です。

    小説問題に関して、「書かれていない「心情」を多くの人がそう思うだろうように想像すること」を「小市民的感情力」と呼び、「市民道徳を身につけた、いかにも善良な小物」という人物を大学受験国語は求めていると著者は主張しています。著者はこうした、大学受験国語の「思想」を外から批判するまなざしのもとで、小市民的な観点を自覚的に採用するという、やや「ひねくれた」立場へと受験生を連れ出そうとしています。「僕たちはまず自覚的に小市民になってみなければならない。あるいは、自分の中の小市民的な感性をはっきり自覚しなければならない。これが、センター試験の現代文に飼い慣らされてホントの小市民になってしまわないための方法だ」という文章に、著者のスタンスが明瞭に示されています。

    その意味で本書は、センター現代文の問題の解き方を解説しつつ、大学入学後に文学や思想を研究する上で求められるスタンスをも示していると言うことができます。ただ、純粋に受験現代文の参考書としては、こうした二重の観点から解説を読み解く必要があるということも含めて、受験生にとってはちょっと重荷になるのではないかという気がします。

  • センター現代文を短時間で解く方法。現代文に時間を割くことができない理系の学生などにはいいかも

  • 2014/11/29図書館から借りてきた。
    2014/12/13返却。

  • タイトルに惹かれて購入。
    著者の説明は説得力あるなぁ(o^^o)

  • 石原 千秋 (著)
    すべての受験生におくる石原流・読解テクニックの集大成。小説では「良い子」に、評論では「進歩的知識人」に。3年分の過去問演習で対策は万全。根本となる価値観をおさえ、まぎらわしい選択肢を見極める力がつく。

  • 石原先生は入試国語に関する著作を数多く手がけている。
    その主張は一貫している。今回はセンター試験をとりあげた。センターの現代文は「国語」ではない。さらに国語教育に思想を持ち込もうとしているのがセンター試験の現代文だという。
    先生の解説はその通りなのだが、そこまでの分析力はボクには無いんだな。

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著者プロフィール

1955年生。早稲田大学教授。著書に『漱石入門』(河出文庫)、『『こころ』で読みなおす漱石文学』(朝日文庫)、『夏目漱石『こころ』をどう読むか』(責任編集、河出書房新社)など。

「2016年 『漱石における〈文学の力〉とは』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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