友だちは永遠じゃない: 社会学でつながりを考える (ちくまプリマー新書 222)
- 筑摩書房 (2014年11月5日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (167ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480689245
感想・レビュー・書評
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まず友達の本じゃない!
著者の過去の作品をまとめて読んできたが、森氏の持論は、社会の変化と共に社会集団が解体されて、孤立していく現代人は、自己に深く関与するしかなく、人格を最も価値のあるものとし「自己崇拝」へと向かうというものだった。「聖なる自己」を傷つけられたことへの怒りを正義と感じハラスメントの告発、数々のクレーム、他者の「聖なる自己」を傷つけまいと過剰に人の顔色をうかがうキズキズした社会というものだった。
ここへきて森氏は、社会とはそもそも不完全でゆるいものであり、一時的な相互行為で成立しているものなのだから、肩の力を抜いてゆるく一時的な関係を積み重ねていこうと言っているようだ。ベースとなっているのはアクター・ネットワーク理論だそうだ。しかしこのANTはそれほど盛り上がってはない。結局は一人ひとりがどのような社会的行為を行っているのかをみるということなのだから、そこはエスメソドロジーでやっているということなのだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一時協力理論。恒久的な絆より、この一時的なつながりのほうが、これからの時代、楽な気がする。
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タイトルから思っていた内容とはちがっていたけど、すごくよかった。
「社会はひとびとの一時的協力でできている」ということを示してもらっただけでも、なるほどと思わされた。たしかに、無縁社会っていうけど、そのときいわれている無縁っていうことばの中身を自分自身考えてこなかったし、そもそも「一定期間維持されるつながり」が自分のなかで当たり前になってた。これはたぶん、多くのひとがそう考えていると思うのだけど。
そもそも一時的協力で社会は成り立っていて、それをどうにかこうにか維持してる、そしてときにそれは失敗して社会はまわってるねんなぁと思うと、気持ちが楽になった。 -
「一時的協力理論」による人間関係や社会の見直し論。
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マスコミが流行らせた「無縁社会」説をうたがい縁のあり方の多様化を解説している部分も、さまざまな集団としての活動は不安定な「一時的協力」をいかに持続可能なものにするかであり、これからの多縁社会にあってはかつての囲い込む一方のやり方を見直す必要があろうという話もなるほどと共感することができた。
ただ、「一時的協力理論」を展開していく部分については、構成や言葉選びなどにもう一工夫がないと、若い読者には読みづらい気がする。
悩める中高生が思わず手に取りたくなるような、せっかくのキャッチーなタイトルなのに、あまりそこの部分の話が深まっていない印象もあり、はじめの問題提起でとりあげて最後に回帰するような工夫もほしかった。