- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480804617
作品紹介・あらすじ
元職場の女子会で恵那は恋人に娘ができたことを知る。世間の“正しさ”の前でもがく人々を描いた、第31回太宰治賞受賞作。
感想・レビュー・書評
-
表題と『お気に召すまま』の二編からなる中編小説集。ほかの読書家さん同様、表題作は何だか読み辛く、物語に入り込むことができなかった。ただ、終わりの方で"どんでん返し(?)"的な場面があり、そこが一番印象に残った。それに比べれば、二編目の作品はずいぶん読みやすかった。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
予想外のトリック的なところもあり、オ!!っと思わせられる部分もありました。
全滝的に重くて、暗い気持ちになりながら読んでいました。正直読んでいて愉快な本でもないし、カタルシスも何も無いのです。どんより系と勝手に名付けたくなるような小説でした。 -
太宰治賞の表題作も書き下ろしの併録作も非常に上手い。むしろ上手すぎるほど、描写にも構成にも隙がない。それだけにしんどい。こんなものばかり読んでいたら女性として生きることがとてつもない苦行に思えてきそうで困惑する。
-
第31回太宰治賞受賞作。
表題作は、所謂、不倫小説なのだが、読み進めていくうちに最初に戻って読み返したくなる著者のトリックにまんまと引っかかった。
読み返してみると、著者は何も「嘘」をついていないことがわかり、ズブズブと物語にのめりこんでいってしまう。
書き下ろしの2作目も、著者特有の女性主人公があまり明るくない過去の体験をベースに、「いま」を見つめていくお話なのだが、どこか品があって、どこか救いがあるところがいいな、とおもった。
たまたまかもしれないが、『名前も呼べない』『お気に召すまま』両作品とも、どこか欠落した部分を抱え、「わたしなんて…」思考の強い主人公なのだ。わたしはこういう受け身の人間があまり好きではない。だが、その主人公に喝を入れる脇役がちゃんといるので、作品としてのモヤモヤ、苛立のようなものが、ちゃんと回収される。
『名前も呼べない』ではメリッサという親友が本当に素敵なキャラクターだった。主人公と仲良くなるエピソードは、メリッサが「それ」とわかっていても惚れてしまう。
『お気に召すまま』では、主人公自らが怒りを表現するシーンがよかった。
それも、女子高生の文乃が居たからこそ。
お風呂やベットがすこしの光をくれる。
これらのアイテムを使って、行動にうつしていく主人公の気持ちがなんとなく嬉しいというか、踏ん切りがつく。
どこかで経験のある感情たちなのだとおもう。
この小説は、映画のようにあまり予告編を吟味しないで、物語に飛び込んで味わってもらいたい。
それにしても、『こちらあみ子(今村夏子)』、『君は永遠にそいつらより若い(津村記久子)』といい、太宰治賞は骨のある女流作家を輩出するなあ。 -
不倫していた主人公の本妻に対する迷惑電話(?)にびっくりした。
-
伊藤朱里さんは「クライマックスの会話シーン」がいい。この作品もそうだった。
表題作のほかに「お気に召すまま」という書き下ろしが収録されている。こちらの作品の方が好きだった。ベッドの下に隠れるエピソードが印象的で、最後の会話シーンは力強かった。