- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480804754
感想・レビュー・書評
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石田千さんの小説は初読み。予想以上によかった!甘さも苦さもしょっぱさも丁度いい加減で、一つ一つのエピソードにゆるっと共感できる。なんてことのない日々のなんてことない場面でも、その人の積み重ねてきた時間がよくわかるような描写。色んな喜怒哀楽が押しつけがましくない感じでいい具合にちりばめられていて、読みながら顔がほころんだりしんみりしたり、驚いたりホッとしたり。何とも心地よい時間でした。登場人物が、皆愛おしいのだ。
随分前にエッセイを数冊読んで以来の石田千作品。エッセイの世界観も好きだけど、小説も素敵ですね。風景の描写やフード描写もよくて、石田さんの感性が好きだなぁと改めて思った。 -
大志も野心も無い<乙女達の祈り>には
当然世界を動かす力も無く、
その思いは残念ながら
ほぼほぼ聞き流されてしまう事が多い。
でもあえて、
彼女らの心中を短編集にしてくれた千さん。
小さくも儚い、まるで野の花の様な物語達。
春になれば咲くだけで、他に何も変えない、変わらない温かさが心に沁みた。 -
石田千のぎゅっと固くなった余韻の多い日本語が好きだ。精米を経て白く透き通った米粒のような。その言い回しは大概他愛もない日々の出来事を少しだけ時代遅れとも思えるテンポでなぞるだけのことなのに、手ぶれのないくっきりとした輪郭の白黒写真のように対象物を立ち上げ、写っていない映像の向こう側を想像させる。そして少し寂しげ。
その寂しさを醸し出す原因の全てが文体の問題に帰結することはないとは思うけれど、かぎ括弧で括られることのない会話文はすっかり地に溶け込んでしまっていて、この科白は本当に声に出して伝えられたのだろうかと考えさせられてしまう。そう考え始めてしまうと、全てはたった一人の頭の中にだけ存在する世界のようにも見え始め、温度のない切り絵の人々が並べられた様を想像してもしまうのだ。そんなふうに過る影を抱えながら読む静謐な石田千が好きなのである。
それは随筆であろうと小説であろうと変わらない印象であって、この短篇集もまたそのような印象で始まる。ああ、乙女の祈りとはそういうことなのかと確かめながら読み進める。そこに創作落語の台本のような「ヲトメノイノリ」が登場して異彩を放つ。
表題作である「ヲトメノイノリ」のことについてこれ以上語るべきではないようにも思うけれど、予測していた石田千の趣向とは大きく異なるその語り口は、やはり確かに石田千のそれ。酔って饒舌になったような作家の語る人情噺は、東京の東の端の下町の様々な価値観の交錯する雰囲気を仄かに漂わせ、可笑しさと哀しみの綯い交ぜがある。
どうしてこの作品を書くことになったのか、と素朴な疑問も湧くけれど、石田千の世界が総天然色で描かれるのも悪くはない。そんなふうに思いながら短篇集の最後の一片に取りかかる。去年今年、こぞことし、と口先で繰り返し呟きながら。過ぎては帰らざる日々の事を思いながら。 -
最後の「去年今年」、どうしても畠山さんが見つけられない。
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角田光代の対談集で知り、初めて読んだ作家。
不思議な感覚。 -
初めての作家さん。ブクログのレビューを見て、読んでみたくなって図書館で予約。だけど、平仮名多いし、文体も私は馴染めなかった。そして、途中挫折。
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好きな短編もあればイマイチな短編もあった。表題作「ヲトメノイノリ」が良かった。76歳の佃煮屋のおばあちゃんが、ピアノを習い始める。乙女の祈り、ただ一曲を弾くために。乙女の祈りの小節は煩悩の数と同じ108個。1日1小節ずつ、108日レッスンに通い、ついに最後の小節にたどり着く。
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2018 7/24
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優しい小説。この人にしか書けないような作品ばかりだね。