おまじない (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
3.38
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本棚登録 : 1967
レビュー : 208
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804778

作品紹介・あらすじ

「人はいなくなっても、言葉は残る。
誰かの言葉に縛られる絶望は、誰かの言葉に守られている希望に替えていけばいい。
本書の物語は、そう力強く告げている。」
――文月悠光(詩人)

「「燃やす」を読んで、自分の中にいた小さい頃の自分を思い出して泣きました。」 (読者)
「誰にも知られない苦しみによりそってくれる、おまもりみたいな本」 (読者)

大人になって、大丈夫なふりをしていても、
ちゃんと人生のページをめくったら、傷ついてきたことはたくさんある――。
それでも、誰かの何気ないひとことで、世界は救われる。
悩んだり傷ついたり、生きづらさを抱えながらも生きていく
すべての人の背中をそっと押す「魔法のひとこと」を描いたキラメキの8編。

「あなたを救ってくれる言葉が、この世界にありますように」――西加奈子

感想・レビュー・書評

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  • 何気ない言葉で、心のつかえがとれていくそんな短編が8篇収録された本。西加奈子さんの作品は、読みたいと思いつつ、なかなか手が出なかったのですが、短めな短編集ということもあり、読んでみました。

    生きにくさや、不安を感じる中、出会った人や昔から知っていた人からもらった一言で、楽になっていく。自分の本当の気持ちとは、違った行動をしているのではないか、周りが自分をどう思っているのか、様々な気持ちが描かれるが、一度は感じるのではないかと思う。

    それぞれ思うところにある話だが、特に「孫係」が好きな話だ。おじいちゃんが1ヶ月一緒に住むことになり、窮屈さを感じている孫娘。日ごろの思いも相まって、ため息の出る生活。そんな気持ちのひとりごとをおじいちゃんに聞かれてたら、実は。。。という話。おじいちゃんの語る人の生き方やそれによって楽になってくる孫娘がよい。そんなことがないと思う人もいると思うが、自分は、そんな風に感じることもあるので、身に染みる感じだった。

    「あねご」や「ドブロニク」のいつの間にか、こう生きているけどという感じもわかる。どちらもその生き方にちょっと疲れた感じの時に出会う人がよい。いい人とかではなく、シンプルに自分の気持ちで生きていて、そこから自然と出る言葉で、ホッとさせられる感じで、変にいい人感だったり、説教感だったりないところがよい。
    全体的に影響与える人たちが、影響を与えようではなく、自分の気持ちにシンプルに向きあっているだけで、それを見て何を思うかという感じであり、その点が良かった。

    また「マタニティー」では、自分の気持ちを検索ワードにして、検索したらというところが、ドキッとさせられた。知恵袋の回答やコメントなど、正論で断罪してくるものをみて、悩みこむのだが、実際にそうなるだろうなというのと、主人公のように感じたりしても、または全くそういったことに縁がなくても、潰してくるコメントを吐きだすだろうと思ってしまった。
    そして、それもまた自分を守るための術ではないかと思わせてくれるのが、この本であると思う。

    全て女性が主人公の話であるが、社会を生きていく上で、少なからず感じることが題材なので、考えさせてくれることが多かった。西加奈子さんの他の本も読んでみたいと思う。

  • 秀逸な短編集。圧倒的な母性でもって、全力で肯定してくれる。
    昔文庫の帯に又吉が「安心しろ、僕達には西加奈子がいる」って(正確にはおぼえてないけど、そんなような感じだった)書いていたのを思い出した。
    西さんの書く女性は、強いよね。

    燃やす、いちご、孫係、あねご、オーロラ、ドブロブニク、マタニティ、ドラゴン・スープレックスの8篇。

    いちご、孫、ドラゴンがお気に入り。

  • 何気無い一言を言われただけで、世界がひっくり返るほど救われることがある。
    他の人には全く効かない、自分だけの魔法の言葉だ。
    気持ちが不安定で落ち着かない時、自分を卑下してつい気持ちと裏腹なことをしてしまっても、自分を認めてくれる言葉を貰うと涙が出るほど嬉しくなる。
    「あなたは悪くないんです」
    「あなたがいてくれて本当に楽しい」

    短編の主人公達と一緒に、読んでいる私も優しい魔法の言葉に何度も救われた。
    「おまじないなんやから。自分が幸せになる解釈をしたらええのや」
    西さんの関西弁は私にいつも元気をくれる。
    そしていつも思うけれど、西さんの描く独特の色彩の絵も本当に素敵だ。

  • 西さんの作品は読んだことはなかったけど、西さん本人のことはテレビでよく拝見していた。美人でおもしろくて、何よりすごくいい人感が強かった。「圧倒的光」ってイメージがついてた。
    私はそういう「いい人」を見ると自分の汚ならしさと比較して落ち込むところがあるので、西さんのことはなんとなくずっと苦手だった。この人を見ると自分が惨めに思えるな、と感じていた。作品を読んだこともないのに勝手に「めちゃくちゃ爽やかな小説ばっかり書いてんだろうな」と決めつけ、勝手に距離を取っていた。
    クラスの陰キャが陽キャを見て「自分とは違う世界の住人ですわ、人生楽しそう~」と鼻で笑ってるクソだせぇ姿を想像してほしい。その陰キャが私で、陽キャが西さんだ。
    でも私はなんだかんだと西さんのことが気になっていた。いつも明るくて楽しそうで美しくて、私の憧れの又吉くんや文則くんとも仲が良い、羨ましいな、と思っていた。
    そんなときに私は見つけてしまった。暗そうな表紙の「おまじない」という小説を。
    よく知りもしないで勝手に「悩みとかなさそう~人からめちゃくちゃ愛されてそ~」と思っていた陽キャ西さんの意外な一面を見てしまった感覚に近い。
    そこに惹かれてこの本を読んだ。こういうのって陰キャにありがちな展開すぎて相変わらずクソだせぇ、が、結果的に。

    なぜ私は今まで西加奈子を読まないで生きてこれたのか?

    というくらい、めちゃくちゃ良かった。
    短編集だったのだけど、全部が全部めちゃくちゃ良かった。読みやすいし分かりやすいしめちゃくちゃおもしろい。
    「孫係」では「その人の望む自分でいる努力をする」ことを肯定してくれたことが嬉しかった。
    「あなたがいい子でいようとすることは、とてもえらいことなんです。それは涙ぐましい努力だし、いい子のふりではなく、本当にいい子だから出来ることなんです」という言葉に救われた。
    「あねご」と「ドブロブニク」では号泣してしまった。
    選ばれないとか、馬鹿にされるとか、気を遣われるとか。そういうことは日々たくさんあって、でも私は日々生きていかなくてはならなくて、誰かに優しくされると泣きたくなったりする。苦しい。

    めちゃくちゃ良かった。
    いやぁほんと、なんで出会わずに生きてこれたんだろうなぁ。本屋さんではあんなに西さんの作品が並んでたのにな。
    でも今がその時だったんだろうなぁ。本と出会うタイミングは全部運命だもんなたぶんな。

    これをキッカケに、西さんの他の作品にも触れてみたいと思う。読むのが楽しみ。

  • 短編集。表題になっている作品は収録されていない。強いていうなら最後に収録されている書き下ろしの「ドラゴン・スープレックス」には、はっきりと「おまじない」という言葉が使われ、おまじないの効果について言及されている。それ以外の作品にあるのは、おまじないとして作用する、誰かの「言葉」だ。

    最初の「燃やす」が一番わかりやすい。主人公はボーイッシュな女の子だったが、思春期になり可愛いと言われるようになった頃、変質者の被害に合う。彼女に母親は言う「ほらね」。

    おまじない、は漢字で書くと「お呪い(おまじない)」で、当たり前だが「呪い(のろい)」とほぼ同義だ。呪文は、使い方次第で、のろいにもおまじないにもなる。この母親の吐いた言葉は、おまじないではなく「のろい」だ。

    痴漢に合うのは短いスカートを履いていたから、夜道で襲われたのは、そんな時間に一人で歩いていたから、女の子たちはあらゆる場面で「ほらね」という呪いをかけられる。「ほらね、言わんこっちゃない」「ほらね、だから言ったじゃないの」母親は自分の正しき助言を娘が聞き入れなかったから、この災いは当然の罰であるかのように無意識に娘を否定してしまっていることに気づかない。

    この娘にかけられた「のろい」を解く「おまじない」の言葉を言ってくれるのは、学校の裏でいろんなものを「燃やす」仕事をしているおじさんだ。とてもシンプルなカタルシスなのだけどちょっと泣いてしまった。

    「あねご」の主人公にも、飲んだくれる父親に対して母親が言った「本当に、見てられない。」という言葉の呪いがかけられている。長じて同じようにお酒を飲んでは陽気にふるまい、自分がブスであることを自虐ギャグにして、笑わせるのではなく笑われていることに気づかないふりをして、あねごは生きてきた。いつしか彼女自身が陰で「本当に、見てられない。」と言われるような人生を送ってしまっている。そんな彼女にも、ある人物が、自己肯定するためのある言葉をかけてくれる。

    その他好きだったのは「孫係」のおじいちゃんの言葉の数々。本当に含蓄が深い。「根はいい子なんていうのも納得出来ない。みんな根はいい子なんだ。それをどれだけ態度に表せられるかですよ。」「正直なことと優しいことは別なんだ。」「素敵ではないです。素敵ではない。でも私は大好きでした。」などなど。現実的なアドバイスとしてとても役立ちそうなことが沢山あった。

    「ドブロブニク」も良かった。子供の頃、脳内フレンドたちにいつも「おめでとう」と祝福されていた主人公は、映画、演劇に夢中になり気づくと四十半ば。もはや誰からも心からの「おめでとう」を貰えなくなった彼女は、フィンランドで自分を見つめ直す。タイトルはアキ・カウリスマキの映画「浮き雲」の主人公が働いていたレストランの名前。

    けして押しつけがましくなく、人間の駄目なところも狡いところも全部いったん受け入れた後で、さりげなく肯定してくれる西加奈子の真骨頂が詰まった1冊でした。

    ※収録
    燃やす/いちご/孫係/あねご/オーロラ/マタニティ/ドブロブニク/ドラゴン・スープレックス

  • 今のお前を変えろ、と言われたら悲しくなるけど、西加奈子はたぶん、私が私のままでいることを肯定してくれる。変わらないまま、幸せになることを許してくれる。
    この本に関して言えば、全ての女がどこかで抱えているであろう傷に触れてくるのだろうし、それに気づかされもする。けれど、決してそれを責めたりしない。
    どうぞ安心して読んでください。

  • 今日も加奈子ちゃんはさわやかにバットを振り切ってるなあと思いました。ボールを見ないで青空を見ながら思いっきりフルスイング。結果ボールにジャストミート。そんな感じがしました。読者の感想を気にしながらチマチマ書いているんじゃなくて、しかも独りよがりな独善性もなく、ひたすら「どうよ?おもろいやろ?」と笑顔でスコンスコンとミートしてくる。ホント素敵な話書くなあ。
    4話目迄は完全に心鷲掴みにされました。頑固じじいがいつまで経っても頑固じじいのままでいてくれる素晴らしさ「いちご」。パーフェクトで隙がないおじいいちゃまの内面に触れて、聖人君子でいる事の大変さと、色々な事を面白がる事の大切さに気付く「孫係」が特に好き。「ドラゴンスープレックス」もいいですね。題名からして力強いけれど、そこはかとなく、人間観察眼のやさしさが感じられます。

    現地をきっちり描写したのかな?と思われる「オーロラ」「ドブロブニク」で自分的にはブレーキ掛かったような気がする。個人的好みとしては勢いで書いたようなパワーあふれる西加奈子が好きです。

  • ことばにまつわる短編集。何気ない一言が刺さったり、救ってくれたり、守ってくれたり、抉ってきたり。ことばの持つ力について改めて考えさせられる。西さんらしい、人間臭さと愛に溢れたお話ばかりで、どの主人公も愛しい。いい本です。

  • 特別に共感できる話はなかったけど、ありそうな日常とその感情の揺らぎを感じつつ。
    久しぶりの読書

  • 大人になって、大丈夫なふりをしていても、
    ちゃんと自分の人生のページをめくったら、傷ついてきたことはたくさんある――。
    それでも、誰かの何気ないひとことで、世界は救われる。
    悩んだり傷ついたり、生きづらさを抱えながらも生きていくすべての人の背中をそっと押す、キラメキの8編。

    「あなたを救ってくれる言葉が、この世界にありますように」――西加奈子

    【収録作品】
    1 燃やす
    2 いちご
    3 孫係
    4 あねご
    5 オーロラ
    6 マタニティ
    7 ドブロブニク
    8 ドラゴン・スープレックス

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    短編集なのでサラリと読めた。途中、角田光代さんの作品とと似たような感覚にもなったけど、人が思っていることの描写はさすがで、破天荒なキャラもうまくまとまってしまう感じが良かった。漁港の肉子ちゃんみたいな長編がまた読みたい。

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著者プロフィール

西加奈子(にし かなこ)
1977年、イランのテヘラン生まれ。エジプトのカイロ、大阪府堺市で育つ。関西大学法学部卒業。雑誌「ぴあ」のライターを経て、2004年『あおい』でデビュー。
2007年『通天閣』で織田作之助賞大賞、2011年咲くやこの花賞、2013年『ふくわらい』で第1回河合隼雄物語賞、2015年『サラバ!』で第152回直木三十五賞を受賞。
その他代表作として、宮崎あおい・向井理出演で映画化された絵本『きいろいゾウ』、同じく映画化された『円卓』、20万部を超えるベストセラー『さくら』、本屋大賞ノミネート作『i』など。2020年初夏、『さくら』が映画化決定。プロレス好きとして知られる。お気に入りの本は『アントニオ猪木詩集』。

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