法学の誕生:近代日本にとって「法」とは何であったか (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480867261

感想・レビュー・書評

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  • あるレポートを書くために必要に迫られて購入した本。
    法学に関する専門書で読みにくいのかと思いきや、「法学」という考えが生まれる日本の歴史に触れることができ、時空を超えて浪漫を感じることができる一冊。
    近代社会を築き上げた先人の気概も伝わってきて胸が熱くなった。そして、「法」というものが、文化としてそれぞれの社会に根付き、我々の生活に深く関わっていることを痛感する。
    社会人として是非一読しておきたい良書である。

  • Message body

    西洋の法と法学の受容に成功したことが日本近代化の鍵であったという認識の下、ではどのようにして法学の受容が成し遂げられたのか、そして、どのようにして日本の法学が生み出されたのか、という課題について、日本が西洋の法と法学を受容しようとしていた最も初期の法学者である穂積陳重・八束という兄弟の歩みに焦点を当て、論じられている。本書での論述を通じて、穂積兄弟を通して受容された西洋法学とは、日本を近代化する手段であると同時に、日本の歴史や伝統を西洋の(つまり普遍性のある)土俵の上で正当化するための武器であったことが明らかにされている。
    近代日本における、単なる法典の受容ではない、(西洋の)法学の受容の過程について深く知ることができ、たいへん興味深い内容だった。特に、近代日本における初期の西洋法学の受容は、漢学というフィルターを通しての翻訳による受容であり、漢語によって表現されていた世界観と西洋の世界観という異なる世界観の接合によって達成されたという指摘が目から鱗であった。また、穂積八束については、極端な国家主義者で学者としては評価が低いというイメージを持っていたが、本書では日本における西洋法学受容のひとつのかたちとして再評価されており、その内容を十分に理解できたわけではないが、穂積八束に対する見方が変わった。本書全体を通して、著者の博覧強記ぶりにも感嘆した。

  • 通信制の大学で日本法制史を受講してあるので、参考に読みました。明治維新後の西洋法の受容に関しては大学の教科書より詳しく書かれていて、大変参考になりました。

  • 明治初期における欧化と国粋の対立状況において、いかにして法学を受容していくかという事に奮闘した穂積兄弟。弟の八束は受験でも出てくるので知ってはいたが、兄の陳重の方は全く知らなかった。本書は兄メインで語られているが、人物的には弟の方が面白そうではあるものの、兄の業績には多大なものがあり、大変読み応えのある内容となっている。
    「受容された西洋法学は日本の伝統を西洋の土俵で正当化するための武器であった」とあるように、目的は不平等条約改正ではあるが、「国体」を護持するために家族法を中心とする日本の(伝統的な?)制度を維持する事の苦心が伺える。これは西洋の自由主義・個人主義が台頭している事への懸念であり対抗でもある。そして、日清日露に勝利し条約改正も完了した「一等国」が己の道を突き進むのは必然だったのかもしれない。穂積兄弟はそこまで予見はしていなかったのかもしれないが。
    戦後日本は欧化したものの、昨今憲法改正が話題になっており、自民党案ではイエ制度が復活的されようとしているとの評価もあるが、支持者も一定数いるようではある。本日、安倍は退陣するようだが、本書を読んで今後の憲法論議がどうなるのかあらあめて気になる所ではある。

  • 2018/03/20 初観測

  • 長文の読後感を書いたが、反映されなかったのでめげた。
    東大民法系の教授連は、大村敦志を含め、実務の壁に圧倒されて明治法制史に逃げている感があることだけ記す。

  • 民法の大家であり、民法を中心とした法の歴史かと思いきや、壮大なスケールの法学の歴史であった。
    しかも、二人の兄弟を中心として描かれており、読み物としても面白い。
    穂積兄弟は名前しか知らなかったが、法学の基礎となる人物であることを再認識した。

  • 東2法経図・6F開架 321A/U14h//K

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著者プロフィール

東京大学名誉教授

「2023年 『民法判例集 担保物権・債権総論〔第4版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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