イドコロをつくる: 乱世で正気を失わないための暮らし方

著者 :
  • 東京書籍
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784487811151

作品紹介・あらすじ

不安の感染を防ぎ、思考の健康さを保つ。
縁側を自作する、近所の公園を使いこなす、銭湯に行く、行きつけのお店を大事にする、お気に入りの散歩道を見つける、趣味をつくる、一人で自然を眺める、仕事仲間、生活共同体、親しい友人を手入れする……現代において正気を失わないために各人が意識的に確保したい「イドコロ」を思考の免疫系という考え方で提案。
個人でできる小さい広場のつくり方、見つけ方。

感想・レビュー・書評

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  • 今は確かに乱世であるか。故に、正気を保つことが必要。「イドコロ」か。ちゃんと所持しておきたい。良書といえる。

  • イドコロ、つまり現代に必要な居場所についての考察と実践について書かれた一冊。ついついネットばかり見ちゃって、既に正気を失っている気もするが、そんな世の中で正気を保つために必要な居場所とは何か?という切り口から書かれている。皆が正気を失っているときは、自分も一緒に正気を失ったほうがいい気もする。イドコロの人達が皆正気を失っているケースもあると思うが、それはさておき。

    居場所の問題というと引きこもりとか孤独死とか社会的孤立の問題から考える場合が多いが「正気を保つために」という切り口はこの本のウリの一つだろう。ただ結論としては、社会的孤立の問題から考える居場所問題とほぼ同じだと感じた。居場所の分散、依存先の分散とか、対等な立場でいられる居場所の重要性がメンタルヘルスの立場からよく言われているが、それを著者の解釈で書き直したように読めた。ただ、お気に入りの公園のような場所も居場所(イドコロ)に入れるのはちょっと新しい視点かもしれない。

    この本では流動性の低い家族・会社のような居場所を「自然系イドコロ」、趣味の集まりや行きつけの店のような流動性の高い居場所を「獲得系イドコロ」と呼び、そのふたつが相互に補完し合う関係が理想だと言っている。そうかもな、とも思う一方、実感としては著者の言う「自然系イドコロ」が軸としてあって、その居場所への依存を減らすために、あるいは反発として「獲得系イドコロ」があるような気がする。居場所における作用・反作用のようなものではないか。

    本書では主に流動性の高い「獲得系イドコロ」について書かれていて、「自然系イドコロ」についても流動性を確保することについて書かれている。個人的には「獲得系イドコロ」を探して参加する能力はそこそこある。しかし本当に問題なのは「自然系イドコロ」だ。「自然系イドコロ」は、相互に束縛し合うことや親密さと切り離せない上、簡単に加わることも解消もできない。それは時に危険だ。しかし親密な関係を軸として持てない人間の不安定さは、「獲得系イドコロ」で誤魔化すことはできても補うことはできないと感じる。

    「獲得系イドコロ」について、コミュニティの運営というと続けることが大事という話になりがちだが、対等性が損なわれたり義務感や拘束感が出るくらいなら終わってもいい、という考え方は気が楽になる。しかし、それでいいのか?という気がしなくもない。実際、自分のコミットが浅かったせいで、ある集まり、実は自分にとって大事だった集まり、を終わらせてしまったかも、という思いがある。正気とは?対等とは?義務とは?拘束とは?といった哲学カフェ的なことを考えると、また別のハナシになってきそうではある。

    実践の部分で書かれていること、特に自分からイドコロを立ち上げるという点に関して自分にはハードル高いな、と思わざるを得なかった。著者の他の本でも感じたが、バイタリティあるなーと言わざるを得ない。私は趣味の集まり、読書会、哲学カフェ、自助グループ等に参加するくらいがせいぜいだ。

  • 他者と関わるイドコロを自分でつくるのはハードルが高いものの、手軽にできるイドコロづくり、公共空間の気に入った場所探しあたりからはじめてみたいと思う。

  • 居場所ではなくて、イドコロというのがポイント。
    いろいろなゆるやかなつながりのイドコロをいくつか見つけておくことが、「正気」を保つ秘訣だ!私はもう少しイドコロを見つけておいたほうがいいかな。

  • ★ 広国大の電子ブック ★
    KinoDen から利用

    【リンク先】
    https://kinoden.kinokuniya.co.jp/hirokoku/bookdetail/p/KP00052176

  • 著者の実体験を基に,「乱世で正気を失わない」ために「イドコロ」を持つ暮らし方が紹介されています。忙しい現代社会,誰もが心身とも健康で過ごすため,居心地のよいイドコロは大切ではないでしょうか。ふっと新しいイドコロを探してみたくなる1冊です。

  • 筆者の活動は魅力的だ。しかし彼のようにイドコロを主体的に作れない人種にとってはとっつきにくい内容であった。
    「イドコロ」についても地域差はあるだろうし、あまり参考になる部分がなかった。
    公民館のイベントなんて高齢者の集まりだし、近所の公園に一人佇んでいても…下手したら不審者扱いされそうだ笑
    嗚呼、今日も只管に孤独だ

  • コロナ禍で自粛生活が長引いたことにより,精神に不調をきたす人たちは多かったのではないだろうか.コロナ以前は意識もしなかった,日常に存在する「イドコロ」が,自粛生活によって奪われてしまうと調子が悪くなってしまう.今更そういうイドコロのありがたみがわかる.

    人間関係があまりにも大きくなりすぎてしまった世の中で,心の平穏を取り戻すために消費を中心としたストレス発散方法を実践しても,それは持続可能ではないかもしれない.

    この本に書いてある「イドコロ」をつくる様々な方法を楽しみながら実践すると,確かに心が安定すると思う.大事なのは,一箇所に依存しないこと,ゆるりとしたイドコロを複数持って,乱世で正気を保つこと.納得させられる内容だった.

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/763827

  • 良かった。

    ナリワイ本がシゴトということであれば、
    本書はイドコロとして、関わる人や場などを意識したもの。
    多分というかこれらのシゴトであるナリワイと、イドコロは切り離すものとか独立したものでなく、含むことが多い。

    例えば著者が言うシェアアトリエのようなコワーキング的なものは、それがシゴトにもなるし、一方でイドコロにもなる。こういう例はよくある。

    自然系と獲得系で大きくイドコロを分けていて、具体的なアイデアも示されている。

    想定読者として、この本を読んだ時にそういうイドコロは作れないといって尻込みしたり、それは著者だから出来るという感覚を覚える人は多分いるだろう。そういう人へのおせっかいとして、多分そういう人は関わった人やチャレンジが圧倒的に少ないからこそ、苦手意識がある。苦手だから機会が減るというループだと思う。

    無理しなくてもいいのは、免疫液になぞらえて、やれる範囲で共有していくというのが著者らしいともいえる。

    例えば公園へ散歩でもいいし、歩くコースでなにか見つけるのもいいし、お店で美味しいからたまにいく店で少し話すとか、趣味の教室やイベントでたまたま知り合って友達になるとか。それはもうなんでもいい。生活をしていれば人と出会うからだ。

    そういう意味で意図的にゆるくしつつも、イドコロが複数あれば免疫としても、体調としても思考としても、いい感じになるのではないかというのが著者の主張。これはそのとおりだと感じた。

    実際に依存先が複数あることが、自立という感覚は多分正しくて(自立は自分で全てやることではないということ)、色々な場や関わりがあることでそれらが出来る。ただこれらはたくさんあればいいみたいな資本主義的な意味で、社会資源=交流する人や関わる人が多いことが絶対でもない。少なくてもいいので丁寧にというのもあるし、ここはその人の、信条であったり、生き方なのでそれぞれだと思う。

    様々な関わりに依拠できる、または違う自分を出すとか、そういうことは短期的には一見価値がないようにみえる。が、中長期的にはそれらこそ、ストレス対策でもあるし、もっといえばQOLを上げるという意味では有効だと僕も思う。

    イドコロの解像度が低いと行動に移しづらいところはあるが、自分のイドコロを獲得系なら意図的に増やすことはできるし、自然系は友人や家族というところですぐに増やせるものではない。だからこそ、バランスなり、その時の生き方を踏まえつつ、自分なりの感じを模索していくためのヒントになりそう。

    他に読んでて思ったのは、イドコロを少し整理したり、増やしたりとかちょっとしたメンテナンスをしてみようと感じて、久しぶりに読書会など参加してみようと感じた。

    多分もっとも本書がハマる人は、色々な場に行って関係性を作れるという人はそこまで刺さらない。ある程度整理してみようとか、今の関わり方や場や生き方にちょっとどうなんだろーみたいなふわっとしたクエスチョンがある人にはこういうイドコロという視点で見直すきっかけになると思うので、その要素があればいいかなと思う。

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著者プロフィール

伊藤洋志
個人のための仕事づくりレーベル「ナリワイ」主宰。1979年生まれ、香川県出身。京都大学農学部森林科学専攻修士課程修了。個人が身一つで始められ頭と体が鍛えられる仕事をナリワイと定義し、研究と実践を行う。主な著作に『ナリワイをつくる』『イドコロをつくる』(いずれも東京書籍)。「遊撃農家」などの個人のナリワイとチーム活動による野良着メーカー「SAGYO」のディレクター、「熊野マウンテンビル」運営責任者などの活動に加え、タイアカ族の山岳村落の学術研究プロジェクトにも参画する。

「2023年 『山岳新校、ひらきました』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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