- Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488010980
作品紹介・あらすじ
マリーは、お世辞にも可愛いとはいえない小さな女の子。父の死後、母と共に人体のパーツを蝋で作る医師のところに住み込むが、そのあまりのリアルさに敬虔なクリスチャンである母は耐えられずに自殺、残されたマリーが、医師の手伝いをすることに。やがてマリーは医師に伴われてパリに行き、ルイ16世の妹に仕える。だがパリには革命の嵐が。〈アイアマンガー3部作〉の著者が激動の時代を生きたマリーの生涯を描く、驚天動地の物語。
感想・レビュー・書評
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ロンドンの蝋人形館の創始者として有名なマダム・タッソー。
フランスで生きた若い頃の波乱の人生を描きます。
マダム・タッソーが描いたことになっている、筆者の絵も魅力的。
マリーは可愛いとは言えない特徴のある顔の、小柄な女の子。
早く両親を亡くし、ひたすら働き続けます。
医師のクルティウス先生のところに住み込み、蝋で人体のリアルなパーツを作る手伝いもしました。
やがてパリに出た医師は、蝋人形で評判をとります。
大家である未亡人は癖が強い人物で、マリーを嫌い冷たく当たりますが、最後には態度を軟化させるのが意外な展開でちょっとほっこりしました。
ベルサイユ宮殿でルイ16世の妹と親しくなったマリー。
おりしも革命が起きて、楽しい生活は一変します。
親王派とみなされて投獄されるが、腕を活かす仕事のために命は救われることに。
フランス革命を変わった角度から眺めるのもまた、思いもよらない動乱を実感させる感覚がありました。
マダム・タッソー館のフランス革命のシーンは、現地でデスマスクを作るほどの体験者だったから出来たことだったのですね。
15年の歳月を費やして書かれた大作。
登場人物は濃く強烈で、貧富の差が激しい時代の過酷さと、運命の大転換とで目眩がするよう。どこかにあたたかさ、生命力も脈々と。
読まなければ知り得ない、感じられなかった世界。
驚嘆を覚えつつ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読み応えがあった。
あの有名な蝋人形館、マダム・タッソーの生涯を描いた作品。
革命期のパリ。この激動の時代と、おちびと呼ばれたマリーの波乱万丈とも言える生涯は母との別れから老彫刻家の弟子になり…と、実に読み応えがあった。
この時代にこれだけの技術があったのはもちろん、蝋人形は歴史の記録の一つの方法でもあるのか…そう思うと不気味というイメージしかなかったその見方も変わる。
所々うかがえる、人生の分岐点でのせつないマリーの心情が印象的。
いわゆる一人の女性の生きた証を小説で知ることができる、これって面白い! -
蝋人形で有名なマリー・タッソーの生涯。みなし子が,蝋で医学標本を作る医師の下,フランス革命後,恐怖政治と粛清に呑み込まれていく姿に圧倒。特に,特殊技能のお陰で処刑をぎりぎり免れた場面は心拍数が上がる。
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主人公の「おちび」(原題はLittle)とはマダム・タッソーのこと.例の蝋人形館には30年ほど前に行ったことはあってタッソーとは設立者だろうな,ぐらいにしか思っていなかった.7歳でパリに連れられてきた彼女がフランスで革命の激動に巻き込まれ,41歳でイギリスに渡るまでの期間を描いた話.
どうやら史実にフィクションを重ねているらしいが,愛を与えられなかったおちびの切ない物語である.とはいえ悲壮さはなく,ディケンズ(最後の方にちょっとだけ名前が出てくる)風の人間ドラマである. -
★4.5
ロンドンで蝋人形館を経営した、マダム・タッソーことアンネ・マリー・グロショルツの物語。彼女の誕生から晩年まで、まさに波乱万丈な人生が丁寧に綴られる。その大半は、グロテスクで残酷で奇妙だけれど、時々とても優しくて愛おしい。中でも、“おちび”と呼ばれたマリーを忌み嫌っていた未亡人が、後にマリーを認める下りは感慨深いものがある。また、マリーとエドモンの恋、マリーのヴェルサイユ宮殿での生活も印象的。そして、マリーの人生と並行してフランス革命が描かれる。マリーが描いた体になっている、著者のイラストも素敵。 -
ロンドンに実在する蝋人形館の経営者であるマダムタッソーの人生を描いた作品。
決して美人ではなく、恵まれた環境にもおかれないマリーが、たくましく、貪欲に、力強く人生を生きていく姿が一冊を通して描かれていると思います。
この物語の面白いところは聖人君子のような人間が出てこず、全員が一癖も二癖もあるような登場人物であるところ。わたしは、クルティウス先生が好きです。
いかんせん文量が凄いので、最初は読み進めるのに苦労したけれど、マリーがパリに渡ってからは怒涛の展開で、ページをめくる手が止まらなくなりました。
本当に素晴らしい作品に出会えた時は、一晩眠れなくなって誰かに読んだ本の話をしたくなるんだなと気付かせてくれた作品でした。 -
フィクションとノンフィクションの中間な
マダム・タッソーの自伝的物語。
結構なボリュームで中盤疲れたけど
読み切ってよかったと思う。
タッソーの蝋人形館がロンドンにあるから
勝手にイギリス人かと思ってたけど
大陸の生まれでフランス育ちだったのか。
そして、フランス革命の時代を生きた。
史実をうまく加えて書いてあるのでしょうが
なかなかに激動の人生だな。
人間の嫌なところも写し切る蝋人形。
…怖いねぇ。 -
おちびマリーの物語。過酷な運命でフランス革命を背景に蝋人形を作る彼女の生き抜く力強さ。宮廷での日々が好きだったな。後半一気読みだった。ケアリー凄い。読みたい本は借りて読むと長く遅れるけど、これは待って読んで正解。
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18世紀のフランスを舞台に、スイス生まれのマリー・グロショルツが、両親と死に別れ、師のもとで蝋加工や人体について学び、フランス王女の教師となり、革命期には王族や政治家のデスマスクを作り、投獄から生きのび、結婚して、ロンドンに渡って展示室を作る。
臓器、スケッチ、服、デスマスク…と蝋人形に至る技術との出会い。孤児や野犬や死人や臭いやらで、花の都どころじゃないパリ、を感じました。 -
既刊と違い、あくまでマダム・タッソー自身の自伝録という設定で書かれているため筆者お得意のファンタジックな描写は皆無なのだけれど、だからこそ描かれる現実を陰惨に、残酷に、読者の胸の肉を骨を血の一滴余すところなく奥深くまで切り刻む。