• 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488011123

感想・レビュー・書評

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  • 07月-01。3.0点。
    エーレンデュル警部シリーズ。湖の畔の家で、女性が首吊り自殺。彼女は死後の世界に興味を持ち、つい先日亡くなった母親が「印」を残すと言い張り。。。

    30年前の男子大学生失踪事件と、首吊り事件両方を追うエーレンデュル。少しずつ進む捜査、丁寧さが光る。

  • 彼女には深い葛藤があり、やはり自殺かと思われたが、そこにつけ込んだ犯人がいた。いくつもの話が展開し、実に面白い! 

  •  アイスランド捜査官エーレンデュルシリーズ第6弾。

    あらすじ
     サマーハウスで女性の首吊り遺体が発見され、自殺だと思われる。亡くなった女性、マリアの夫バルドヴィンは、マリアが病死した母レオノーラとものすごく仲が良かったこと、死んでから精神的にダメージを受けていたこと、心霊的なものにはまっていたことを話す。さらにマリアはレオノーラが何か霊的な合図サインを送ってくれると信じていた。なんとなく不審に思ったエーレンデュルは夫(医師)を調べ始める。そして彼が学生時代に、死後世界体験の実験に参加していたことを知る。被験者を一旦死なせてから生き返らせるというもの。マリアの過去については、父マグヌスの姉も尋ねる。マリアの父は彼女が幼い頃、ボートから転落して亡くなっていた。姉から聞いた話では、当時マグヌスには別の女性がいたらしい。さらに、マリアは女性霊媒師に会っていたことも分かる。霊媒師の名前はマグダレーナ。さらにさらに、マリアとエレオノーラには土地を売った膨大な金額の資産があったことも判明する。バルドウィンには投資で失敗したため、借金を抱えていた。またバルドウィンは別の女性がいて、彼女が女性霊媒師に扮していた。不倫相手カロリーナは学生時代、演劇を勉強していたためなりすますのは可能だった。
     エーレンデュルはマリアの父マグヌスが関係を持っていた女性を見つける。彼女の話によれば、レオノーラがマグヌスを突き落とした。それをマリアは見ていたのだ。
     ということで結末…マリアは父親の死を負担に感じていた。さらに母親の死が打撃となってどんどん精神を病んでいた。それにつけこんでバルドウィンと愛人は精神的に弱らせて殺害することにした。臨死実験をマリアの同意で計画したが、用意していたAEDは壊れていたし、おそらく息を吹き返したマリアを絞殺した。

     また、マリアの事件と並行して、エーレンデュルは過去に行方不明になった人の家族とも交流がある。例えば30年も前の青年ダーヴィッド。母親は亡くなり、父親だけが時たまエーレンデュルの家に訪ねてくる。もう一件、30年ほど前に姿を消した学生の女性ギュードルン。彼女は湖が好きな女の子だった。エーレンデュルは、もしかしたらダーヴィッドとギュードルンは付き合い始めていたのかもしれない、だから他の人は知らなかったのではないかと思いつく。そしてエレンディルはたくさんある湖の中から一つを探し出し、彼ら二人が氷の張った湖の上を車で進み、沈んでしまったということを突き止めた。

     エーレンディル個人の話では。最近、娘息子とも交流がある。次男シンドリはアルコール依存症のグループのミーティングに出ている。娘エヴァ=リンドはエーレンデュルに強い口調をぶつけながらも関わってくる。

    《感想》
     今回は静かに、徐々に人の悪意が暴かれていく話。単なる自殺かと思われていたが、夫が用意周到に、着実に、愛人と一緒になって妻の精神を追い詰めていく犯行。その妻には過去に父親を死なせてしまったという出来事があったのでスイッチが入ってしまったのだった。エーレンデュルは、それを薄皮をはぐように一人でじわじわと、でも着実に落ち着いて明らかにしていった。結果として夫達に罪を償わせることができるかは不明。でも二人の良心に働きかけようとする場面では、それまで淡々と仕事をしている感じだったエーレンディルの強い気持ちが表に出ていて、はっとした。
     今回はエーレンデュルの生涯の仕事といってもいい、行方不明者を探す仕事も一つ区切りがついている。30年間探し続けていた青年と、女学生の行方が分かった。二人を見つけた時には、青年の父親が亡くなっていたというのもこの作品らしいなと思う。
     今回一番印象に残ったのは娘エヴァ=リンドがエーレンデュルの行方不明になった弟について言ういうところ。「もう(弟を)行かせてやってよ。あんたはその幽霊を手放さなきゃダメよ。」これまで不器用で、突っかかってばっかりだったエヴァ=リンドが少し大人になって、エレンディルと会話できているところが素敵だと思った。

  • シリーズ6作目。
    相変わらずの少し暗い雰囲気、弟の行方不明事件が影を落としながら、自殺?の真相と共に過去の失踪事件の謎に迫っていく。
    劇的な何かがあるわけではないし、読後感がすごいいいわけではないが、つい読んでしまうシリーズ。
    次作に期待。

  • このシリーズの、どことなくひんやりとした感じが好き。

  • エーレンデュルシリーズ、6作目!
    彼の、捜査班や、私生活は、それ程かかわってこない。
    エーレンデュルの、芯となる、弟さんの失踪、行方不明が、あるからだろう、今回は、深層、真相の、追求が、辛いし、痛い程にわかるストーリーだったな。

  • 6作目。堪能しました。アイスランドの凍てつく湖が目の前に広がるよう。絶望に陥る人と狡猾な人のコントラスト、そしてサブストーリーが見事に絡み合う様に打ち震えるほど。いやー、素晴らしかったです。ここまで読んできた身にとっては、エヴァリンドとこんな風に過ごし会話する姿に、涙を禁じ得ません。そして、すべてを目の当たりにしたエーデルデュルの背中を映すラスト、彼にも希望があることを望まずにはいられませんでした

  • アイスランドミステリー、エーレンデュル警部第6段。湖の畔のサマーハウスで、女性が自殺した。些細な違和感から、エーレンデュル警部が孤独な捜査を始め、事件は思わぬ方向に展開する。
    いつものように、北欧のひっそりとした森や湖と、濃密で陰鬱な人間関係のバランスが絶妙。

  • 個人的に偏愛、もはや「アイスランドの麻耶雄嵩」と化しつつある名前買い作家の最新刊。今回も通常運転で、明らかな動機がある中年女性の明らかな自殺事件を、主人公の偏屈おじさん(てか爺さん)刑事が「我ながら個人的興味以上の理由はないとわかっていながら、今は比較的暇なので」一人コツコツ聞き込みしていくという、これ以上ないくらい地味な設定。
    なのにこれがいつもながら、読ませる。

    「こんな事件を調べて何になるの? てか『事件』ですらないよね」と言われた捜査が意外な形で実を結ぶのは、小説なのだからまあ当たり前。なのに作者の円熟の筆は、そこに小説的な嘘くささを感じさせない。情報の出し方やそれをもたらす脇役たちの造型が実にみごとで、地味な捜査に自然に伴走していける。主人公の過去や周囲の人々との関わり方といった日常生活がおいおい差し挟まれるが、それが本線にゆるやかに絡んでいって、最後にはあっと驚く(当社比。とにかく静かなシリーズなので)真相へと至るのには感嘆した。
    今作で特筆すべきは、主人公と娘エヴァとの関わりだろう。長らくお騒がせを続けてきた彼女の造型には、実際不快なところがあった。ギリギリのラインを保ってきたのが、今作で大化け。これまでのごたごたがあってこその、「いい娘」でも「いい父親」でもないふたりのやりとり、相変わらず抑えた筆致で描かれるそれは必見である。

    エロ、グロ、ドロドロ、ドンパチを求める向きにはまったく勧められないし、逆にほっこりコージー・ミステリが好きな人にもお勧めできないが、はまる人には間違いなくはまる。
    別シリーズの新作がまったく期待外れで英語読書が数か月停滞してるので、そちらは切って本シリーズの次作に手を出そうかな。ここまでトリオで進んできた本シリーズ、今作はほぼエーレンデュルしか出てこない。次はエリンボルク、その次はシグルデュル=オーリが主人公らしいけど、こんな感じのピン活躍なのだとしたら、それもまた楽しみだ。

    2022/5/14読了

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