忘れられた花園 下

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488013325

作品紹介・あらすじ

2005年、オーストラリアのブリスベンで祖母ネルと暮らしていたカサンドラは、亡くなった祖母からイギリス、コーンウォールの崖の上にあるコテージを相続した。1975年になぜネルはそのコテージを買ったのか?ネルの書き残したノートと古いお伽噺集を手に、カサンドラはイギリスに渡った。今はホテルとなっているマウントラチェット家の豪壮な屋敷ブラックハースト荘、その敷地のはずれ、茨の迷路の先にあるコテージが彼女のものとなったのだった。カサンドラは、コテージの手入れを進めるうちに、蔓植物に埋もれるようにして閉ざされ、ひっそりと忘れられていた庭園を見出す。封印され忘れられた花園が彼女に告げる驚くべき真実とは?ネルとはいったい誰だったのか?そしてブラックハースト荘の秘密とは…?サンデー・タイムズ・ベストセラー第1位。Amazon.comベストブック。オーストラリアABIA年間最優秀小説賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  •  1913年、イギリスからオーストラリア帰着した船内に取り残されていた少女。身元不明の少女はネルと名付けられ家族に恵まれ大切に育てられたが、21歳の誕生日に遂に自分の出生を知る事になる。希望に満ちた眼は孤独に塗られ、彼女は一人自分を知るための旅に出る・・・。
    時は変わって2005年、ネルの孫娘のカサンドラはネルが残したコーンウォールのお屋敷の存在を告げられる。1975年、ネルは何を知り、何を以てその屋敷を購入したのか、孫娘に託した謎解きの鍵はネルとともに船内に残されていた一冊の御伽噺集に・・。

     第三回翻訳ミステリー大賞に恥じない濃密な物語でしたね。元が古い作品ではないし、翻訳も現代的な表現寄りで海外古典にありがちな読み難さは少ない。勿論西洋を舞台にしたお洒落な情景は損なわれてはいない。章立ては1900年から2005年の時代を細かく行き来し、各章で人物の視点も変わるので人物の年齢や関係性の把握には時間がかかってくる。登場人物欄か相関図は欲しかったところ。

  •  作家は1976年生まれブリスベン在住のオーストラリア人ケイト・モートンでロンドンの大学を卒業。この作品の舞台は作家の居住地であるブリスベンとイギリス南部のトレゲンナである。

    物語は祖母(ネル)が亡くなった後に遺言で唐突にトレゲンナにあるコテージを相続する孫(カサンドラ)が謎の別荘と祖母の生い立ちについてイギリスへ渡り祖母からさらに曾祖母の100年間に渡る謎に迫るミステリーです。

    曾祖母の時代1900年と祖母が自らの出生の謎を紐解くべくイギリスに渡航してきた1975年と孫の現代2005年の3時代をいったりきたりしながら物語は進行する。30年前に祖母(ネル)がひっそりとイギリスで自らの出生の秘密を調査した足跡に孫(カサンドラ)のイギリスでの行動が重なり少しずつ謎が解き明かされてゆく、終に悲壮な結末が判明するのは本書の題名でもあるコテージの”花園”の中だ。まさに100年間忘れられた花園なのだ。

    作品の謎解きキーワードとして作家である曾祖母のお伽話”老婆の目玉””取替え子””黄金の卵”の3話が挿入されているが、物語を読み進める内にこの3編のお伽話が謎解きの案内役になりまたこの短編のお話は随分巧妙で味わい深い。

  • 上巻で、どうしても頭の中で整理がつかずにごちゃごちゃになってしまう家系図。
    なぜなのか下巻を読んで納得した。

    謎解きはカサンドラにとっては憶測の域を脱しない部分が多い。真実を知るものは誰もが、土の下で口をつぐんでいるから。もしくは塞がれてしまっているから。その謎も途中で気がついてしまった。
    だって、それ以外ありえない。だからわたしは上巻で何度も何度も混乱したんだから。

    個人的には『秘密』のほうが好きだ。
    だけど、小説の途中で出てくるイライザ・メイクピースが書いたお話はどれも魅力的。しかもこの本に使われているフォントは非常に効果的で素晴らしい。そしてナサニエル・ウォーカーの描いた挿絵も、朧げにそのイメージが浮かぶのだ。

  • 上下巻、全700ページ、100年以上の時代と女性3人(5代)にも及ぶ壮大なゴシック小説。

    ボリュームあるゴシック調の小説ということで、身構えて読みだした。前半小説のリズムに乗れるまではスピードも上がらなかったが、上巻の後半あたりからがぜん面白くなってくる。下巻なんかはほぼ1日半で一気読み。

    イザベラ、ネル、カサンドラ。3人の主人公が語るパートが層をなして物語を編み上げる様は、リリアンで美しい紐を生み出すような(壮大さにかける比喩?)雰囲気で癖になる。この癖に馴染んだら、あとはひたすら編まれていく模様を楽しむだけ。

    謎解き部分は意外にあっさりとしていて、ミステリーとしては物足りないかも知れないが、部分的な謎解きは、この物語の小さな構成要素に過ぎない。主人公たち3人の、違う時代に同じ場所で起こっていくさまざまな営みと、別個に見えて複雑に関連しあう出来事の同調感の奥にあるものを味わう。

    3代記ものって色々傑作もあるが、この本も3代記ものの傑作である。700P読む価値ありです。

  • 三代の女性たちが奏でる悲しい旋律が物語を包み込む。複雑に入り組んだ迷路のような花園。むせかえるような濃い緑の匂い。イギリスコーンウォールのターコイズブルーに輝く海と、切り立った崖に差す夕日、波の音の聞こえる岸壁にそびえる屋敷。また、緑の庭園に映えるイライザの赤毛の美しいこと。そういった五感を刺激されるような色彩描写がつまびらかで巧妙なのも本書の魅力の一つだ。

  • 途中で謎が分かり、今一つミステリ感が減殺。

  • ケイトモートンの作品は2作目。「リヴァトン館」が面白かったので手に取ってみた作品。モートンが得意とするゴシック・ロマンスの雰囲気が良く出ている。イギリスとオーストラリアを舞台に繰り広げられるそれぞれの人物のストーリーにイライザ・メイクピースという架空のおとぎ話作家の挿話が入ってくる。詳細→http://takeshi3017.chu.jp/file7/naiyou20602.html

  • ミステリ

  • ネルの過去が次第に明かされていき、カサンドラは自分の進む道を考え始める。上巻ほどではなかったのだが、下巻も面白かった。少しずつ修復が進んでいくコテージと庭が、ひとのこころが補われていくのと似ているのかもしれない。こういう「しあわせな場所」を持つことは、ひとの幸福のひとつである気がする。

  • レベッカ、秘密の花園などの雰囲気を持ったゴシック・ミステリー。一気に読んでしまった。面白かった♪

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著者プロフィール

1976年、南オーストラリア州ベリに三人姉妹の長女として生まれる。クイーンズランド大学で舞台芸術と英文学を修めた。現在は夫と三人の息子とともにロンドン在住。2006年に『リヴァトン館』で作家デビュー
『湖畔荘 下 創元推理文庫』より

ケイト・モートンの作品

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