- Amazon.co.jp ・本 (389ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488016708
作品紹介・あらすじ
夢のなかで訪れることのできる町パリンプセストに魅せられた四人の男女。彼らは肌にパリンプセストの地図を持つ相手と次々と身体を重ね、眠りの中で町を歩く。喪われたものを取り戻せる町パリンプセストでは、鮫頭の将軍を打ち負かし勝者となった女カシミラが移住者を求めていたのだ。何度か夢で訪れるうちに四人の男女は次第に永住を願うようになる。現実世界でのパリンプセストへの道は? ラムダ賞受賞、幻想と夢が交錯する極上のファンタジー。
感想・レビュー・書評
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長い旅だった。夢の中でしか訪れることのできないパリンプセスト……入るためには体のどこかに地図をもつ相手と交わらなければならない。それはもはや麻薬のようなもので、あちらの世界へ行くために、人々は相手を探してまぐわいを繰り返していく。飢餓感をもつ者にはたまらなく魅力的であるものの、現実世界に満足している人にはお呼びでないものだ。永住権を手に入れるのも大変で、どれほどの人間が精神を屍と化してきたのだろうと思う。興味本位でうっかり踏み入ると絡めとられてしまいそうだが、最後の恐ろしい手招きを振り切って自分は何とかこちらへ戻ってこられた。あとは禁断症状が出ないことを祈りたい。
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夢ツアーの一環。気づけばそこそこ長く積んでいた。
著者オリジナルの邦訳としてはこれが最新刊。思ったより出ないな……。妖精国シリーズも2巻で止まってるし。『The Melancholy of Mechagirl』が気になる。著者はちょくちょくジャパネスク趣味を見せるけど、これもそうだろうか。
物語を手探りする楽しみと、現実で地図を求め眠りで夢の街を彷徨う人々の錯綜する道行きが響き合う、万華鏡か迷宮のような手触りがとても不思議で魅力的。読むより前、一瞥だけで夢と現を区別させるフォントの違いや、各章の規則的な構成も、有機的にシステマティックで、その手触りをさらに滑らかにしてくれる。そこへ神話でお馴染みのモチーフや未知の奇想が散りばめられるから眩暈がする心地。
痙攣的で理不尽で容赦がないうえ、『孤児の物語』よりさらに難解でついていくのも一苦労だけど、夢を求め好んで倒れていく魂の憧憬はかくも耽美で妖しい。素敵。
作中に妖精国シリーズがちらっと出てくる。また読みたくなってきた。そういえば2巻はまだ一度も読んでいない。 -
ロマン・ギャリのように繊細で心が弱くて、結果文章が混沌としてしまったような場合は、なんというか許容範囲であるような気がする。が、この作者は①コンパスなしで樹海に入山②酔い止めなしでいろは坂を車で下山、するような「あんたうっかりじゃなくて故意だな!」という、こうーなんですか、要するに「必要があって」ならいいんだが「最初からそのつもり」という混沌さに最初からひいてる。ごめん、また風邪がぶり返した。でも熱が出ると、体は痛くないな!