文明交錯 (海外文学セレクション)

  • 東京創元社
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488016852

作品紹介・あらすじ

インカ帝国があっけなく滅びたのは、鉄、銃、馬、抗体を持たなかったからだと言われている。では、それらを彼らが持っていたとしたら世界はどう変わっただろうか? スペインがインカを、ではなく、インカがスペインを征服したとしたら……。ヨーロッパ全体はどう変わったのか? という架空の逆転世界を描いた小説。『HHhH』や『言語の七番目の機能』の著者が贈る、大胆かつスリリングな傑作歴史改変小説!

感想・レビュー・書評

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  • インカ帝国は1533年にピサロ率いるスペイン軍によって滅ぼされた。が、もし、インカ帝国軍が海を渡り、逆にスペインを征服していたらどうなるか?が描かれた歴史改変小説。

    僕は世界史が苦手で知識がほとんどない。歴史の知識があればあるほどこの小説を楽しむことができただろうと思うと、残念で仕方ない。

    ジャレド・ダイヤモンドの「銃・病原菌・鉄」にヒントを得て描かれたそうなので、もしこれから読まれる方がいらっしゃいましたら、こちらも参照されるとより楽しめるかもしれません。

  • ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』の問いを逆転させた「アタワルパがスペインに行って征服する」歴史改変小説。


    第1部は、中世アイルランドの実在の「サガ」の抜粋ないし要約から始まる。第2部で、コロンブス登場。そして、第3部で、インカ皇帝アタワルパの生涯を描く。最後の第4部は、セルバンテス風の小説。波瀾万丈の冒険の最後には、青い空が広がっている。

    おもしろかった。なにが「野蛮」や「善」であるのか。視点を変えてみる面白さがある。
    「太陽神の九十五か条の提題」には思わず笑ってしまった。たしかに知識があったらもっと楽しめたとおもうが。
    訳者あとがきにあるように、基本的に史実の逆転なので、訳注はざっと読む程度にして、あとから気になったところをチェックしたらよかったかなと。その方が物語の世界に入っていけたと、ちょっとだけ後悔。
    「言語の七番目の機能」も気になる。

  • 『読書の秋2020』対談:ローラン・ビネと平野啓一郎 | Institut français du Japon - Okinawa(2020-10-31)
    https://www.institutfrancais.jp/okinawa/agenda/binet/

    世界は変わり続ける: ローラン・ビネ『文明』と網野徹哉『インカとスペイン 帝国の交錯』(2020年12月19日)
    https://elmundocambiaconstantemente.blogspot.com/2020/12/blog-post_19.html

    Web東京創元社マガジン : 「インカ帝国の皇帝アタワルパを知っているかな? くらりくん」――ローラン・ビネ/橘明美訳『文明交錯』3月30日発売!
    http://www.webmysteries.jp/archives/31926245.html

    文明交錯 - ローラン・ビネ/橘明美 訳|東京創元社
    http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488016852

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      【今週はこれを読め! SF編】インカがヨーロッパを席巻、波瀾万丈の歴史改変小説 - 牧眞司|WEB本の雑誌
      https://www.web...
      【今週はこれを読め! SF編】インカがヨーロッパを席巻、波瀾万丈の歴史改変小説 - 牧眞司|WEB本の雑誌
      https://www.webdoku.jp/newshz/maki/2023/04/18/120419.html
      2023/04/21
  • いわゆる歴史改変小説で、インカ帝国が滅びずにヨーロッパにやってきて、あれよあれよと、というていでお話は進行する。年代記風の文体で書かれていて、まさに見てきた風な内容で、華麗に逆転の歴史が展開するのは見事としか言いようがなく、まぁ荒唐無稽ではあるのだけど、あながちそうとも言い切れない感が醸し出されているので、歴史好きほどクスリとかニヤリとかしながら楽しめると思う。

  • そもそもの世界史の素地が無いのに読み始めている。
    かつて『銃・病原菌・鉄』を読んだときに、何故、インカ帝国がスペインに滅ぼされたのか、納得していたので、この本がフィクションとは分かっていたけれどうっかり集中してしまって、楽しい読書時間となった。

    何しろ、整合不整合も分からないままの読書なので、本気で楽しいとは言い難い、恥ずかしいけれど。
    こういった本が世間の方々にもっと認めて頂けたのなら紙の書物、こんなに危機感を感じることはないのかも~
    老婆心ながら、余計なことまで考えてしまったを

  • 自分の不勉強が不甲斐ない。

  •  もしもインカ人がスペイン人を攻略して逆にヨーロッパ大陸を征服していたら、という設定の長大な歴史改変小説。
     インカ皇帝のアタワルパが登場する第三章では、ジャレド・ダイアモンド著『銃・病原菌・鉄』の中で、スペイン人のピサロに侵略された際の、わりと克明な再現シーンを思い出しながら読んだが、訳者あとがきによると著者も同じ本を読んでおり、なんと『銃・病原菌・鉄』に触発されて本書を書いたらしい。
     本書では、インカ帝国の内紛により逃げてきたアタワルパが部下とともにポルトガルになんとか上陸したあと、迫害されていた非キリスト教徒たちを味方につけながら、徐々に勢力を拡大していくことになっていく。太陽神を信仰するアタワルパたちが、まったく逆の視点から当時のヨーロッパ大陸の混沌を衝いて、豊富な金銀を産出する故郷の財力を元に、キリスト教圏を席巻していくところまでは面白かった。

     ただ、本書は過去から伝わる4つの伝承や年代記という構成で書かれているのだが、最初から最後まで小説というよりも、古事記や日本書紀のような歴史書めいた書きっぷりなので、主人公であるアタワルパをはじめ登場人物たちの会話や心情がすべて説明調で書かれており、後半は読み進めるのが苦痛だった。
     また、全体的に史実とフィクションが複雑に入り交じっており、世界史に詳しくないと人名、地名、国名に追いつけず、作者の仕掛けた醍醐味が半減すると思った。同じ作者の『HHhH(プラハ、1942年)』を読んだときにも感じたが、膨大な文献から作者が考証し再構築した想像世界のディテールをこれでもかと論じることに頭を使いすぎて、あまり読者のことを考えていないと感じた。本書はとてつもない大作であり、一部の好事家がいかにも好きそうな作品ではあるが、一風変わった研究論文のような小説と思った方がいいかもしれない。

  •  ヨーロッパ(スペイン)人によるアメリカ大陸発見と侵略の歴史を逆転し、インカ人がヨーロッパを征服するという歴史改変小説で、逆転パロディみたいな話。第一部〜第二部は、前日譚でごく短く、本書のほとんどを第三部の「アタワルパ年代記」が占めている。
     おそらく大半はカール五世の事績をアタワルパに置き換えて語っているのだと思うけれど、この時代のヨーロッパ史に通暁しておらず、なんとも言えない。詳しければもっと楽しめたのかも。「年代記」というように、記述もわりと淡々としていて、あまり心躍る感じでもなかった。強いて言えば、セルバンテスがメインで、エル・グレコやモンテーニュもでてくる第四部が一番面白かったかな。
     この話のとおりに歴史が進んでいたら、今ごろルーヴルのピラミッドはメキシコ風の太陽神殿だったんですかね(パリはメキシコ人によって陥落)。宗教的・人種的寛容などについて、いろいろと考えさせられる本ではあった。知識を深めてから、再読してみたい(時間ないけど)。

     ※この版元は校正が甘いのか、誤植がちらほらと。註番号が抜けていたりするのは、さすがにいかがなものかと思いましたわ。

  • 面白かった!ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」は途中で挫折したのだが、それでも。
    インカの王アタワルパがヨーロッパを制服する、転換した歴史小説。偉大で賢明な皇帝により、宗教への寛容、南米の金銀により市民の税負担軽減、福祉など、実際の国家より善政を敷いたことが痛快。
    荒唐無稽でありつつもユーモアとリアリティがある。メキシコからアステカの王まで攻めてくる。太陽信仰が広まり神殿が築かれ、エラスムスがトマス・モアに太陽神いいじゃないかと説き、黒い飲物(ワイン)が南米でも好まれ、王がマキャヴェリを熟読する。このような「文明交錯」がふんだんに織り込まれていて、始終ニヤニヤが止まらない。最後に出てくる有名な画家と作家の顛末も楽しい。
    ティツァーノが王の肖像画を描きヴェネツィアではヴェロネーゼがアタワルパ最期の顛末を描く。見てみたい(笑
    ローラン・ビネが楽しめるかどうかはテーマと自分の教養・知識との相性次第みたいだ。前作の「言語の七番目の機能」は完全に置いてけぼり。

  • ダヴィンチ年末特集で、豊崎・大森両氏が揃ってベスト作品に挙げていたのを見て、それはもう読んどかなきゃ!ってことで、さっそく図書館から借りてくる。ずっと気になりつつも、ここまで”HHhH”を読めずにいるので、本著者は初体験。しかしインカ帝国について無知なこともあり、果たして楽しめるのか大いに不安だったんだけど、歴史ifものだから前提としての歴史知識も当て嵌まらない訳だし(もちろん、史実を知っている方が楽しめるんだろうけど)、問題なく味わえたのでした。そして、史実の方にもちょっと興味が出たりして。いつかそっちに関する書も読めるといいな。

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