ヘビイチゴ・サナトリウム (ミステリ・フロンティア 2)

  • 東京創元社
2.78
  • (2)
  • (8)
  • (52)
  • (19)
  • (6)
本棚登録 : 151
感想 : 37
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488017019

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ★辻褄っていうのは、まちがってても合うんだよ(p.263)

    ▶視点が複数の人間の内面を少しずつ明らかにし次々に移ってゆくヴァージニア・ウルフの『燈台へ』タイプ(記述は神の視点で会話主体ですが)。▶幽霊の噂。▶ハルナを慕っていた海生。▶国語教諭宮坂の小説。▶自殺した宮坂。▶盗作疑惑。▶誰もが少しずつ何かを隠している。著者も含めて。▶それぞれ気になり調べる双葉、高柳。▶宮坂の妻、緑。▶緑のつくっていたサイト「ヘビイチゴ・サナトリウム」、その中の「アルファベット・ビスケット」。▶謎の人物が(最低)一人以上いる?

    ■簡単なメモ

    【一行目】晴れた朝、いつもの長い坂道をのぼっている。

    【浅野悠名/あさの・ゆうな】→悠名
    【絢/あや】藤川絢。白鳩学園高等部一年。美術部員。宮坂のことが好きだったという噂。「蒼く瞑い水の底」という小説のサイトをつくっている。
    【新木双葉/あらき・ふたば】→双葉
    【有坂紫乃/ありさか・しの】→紫乃
    【アルファベット・ビスケット】緑のサイト中のコンテンツ。
    【石原】緑の実家。
    【椅子】図書室の椅子にはガタがきていた。
    【糸井】文芸誌「海音」の編集者。
    【岩田塔子/いわた・とうこ】図書室司書。第一印象としてミステリ的にはいちばん怪しい人物ですね。さて、どうなるでしょう?
    【江崎ハルナ】→ハルナ
    【オースター】ポール・オースター。アメリカの作家。『鍵のない部屋』は宮坂が小説を書くときその構造を参考にした。個人的に、オースターはけっこう好みです。
    【大前】教師。
    【屋上】飛び降り自殺が続出しているのに開放したままの屋上。学校のおおらかさにある意味感心しました。
    【桑元さら/くわもと・さら】→さら
    【さら】桑元さら。白鳩学園高等部三年。美術部員。杉村梨花子死後美術部長になった。江崎ハルナのことが嫌いだった。
    【シオン】ハルナの姉。西桜大在学中に自殺。
    【自殺者】自殺だったかもしれない人物は、緑、シオン、梨花子、ハルナ、宮坂。そしてもう一人。
    【紫乃/しの】有坂紫乃。白鳩学園高等部一年。美術部員。細かいことは気にしないタイプ。
    【白鳩学園】中高一貫校。
    【杉村梨花子/すぎむら・りかこ】→梨花子
    【西桜大学】宮坂、その妻の緑、ハルナの姉シオン、高柳が在籍していた。ストーリー的には広瀬も在籍してたかも? あるいは広瀬はそのうちの誰かと同一人物かも?
    【制服】《制服というのはおそろしい。学校のなかに何百人もハルナの幽霊がうろうろしているのだ。》p.20
    【芹沢/せりざわ】教師。
    【高柳/たかやなぎ】海生や双葉の担任。数学教師。緑が亡くなるまでは宮坂と親しかった。後半、探偵役の一人になる。
    【田辺】刑事。
    【築島/つきしま】教師。
    【辻褄】史明いわく《辻褄っていうのは、まちがってても合うんだよ》p.263
    【デッサン】海生はデッサンすること自体が好きと言う。ハルナは海生はデッサンすることで自分になろうとしていると言った。ハルナ自身はデッサンすることは自分ではなく透明なものになることと言う。
    【遠山/とおやま】刑事。
    【中津/なかつ】美術部顧問。
    【西山海生/にしやま・みお】→海生
    【二年前後前】広瀬透失踪。緑自殺。シオン自殺などがあったようだ。
    【野枝/のえ】橋口野枝。白鳩学園中等部一年。美術部員。
    【橋口野枝/はしぐち・のえ】→野枝
    【ハルナ】江崎ハルナ。死んでいるが主人公と言える。白鳩学園高等部三年。美術部の先輩。南校舎から落ちて亡くなった。ストイックに常に絵に集中していた。美大入学は確実と云われていたが、事故で失明しかけており今後どうなるかは不明だった。彼女の幽霊が出ると噂になっていた。《ハルナ先輩は正しい。それ以外のどんな部分があろうと、ハルナ先輩はそういう人だったんだ。》p.250
    【美術部員】杉村梨花子(高三・自殺)、江崎ハルナ(高三・転落死)、桑元さら(高三)、有坂紫乃(高一)、藤川絢(高一)、西山海生(中三)、新木双葉(中三)、浅野悠名(中一)、橋口野枝(中一)。
    【広瀬透】緑が好きだった作家のようだ。「ヘビイチゴ・サナトリウム」を通じていくらか交渉があったもよう。二年以上前に失踪した。
    【藤川絢/ふじかわ・あや】→絢
    【双葉/ふたば】新木双葉。白鳩学園中学三年生。海生の隣の席。三年になって海生と親しくなって美術部に入った。スラッとしている。ショートカットの髪。五歳上の兄、史明(ふみあき)がいる。後半、探偵役の一人になる。
    【史明/ふみあき】新木史明。双葉の兄。優秀で今は東大生らしい。
    【ヘビイチゴ・サナトリウム】緑の運営していた(かもしれない)サイト。オーナーの好きな小説・映画は、ブルーノ・シュルツ、タルコフスキー、クエイ兄弟、広瀬透、そのほか不思議な感じの映画や小説全般。
    【ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹】ジェフリー・ユージェニデス著。五人姉妹がなんかよくわからない理由で自殺する話らしい。岩田が海生に薦めた。
    【海生/みお】西山海生。白鳩学園中学三年生。美術部員。身長一四八センチ、体重四十キロ以下。肩までの髪をふたつに分けて結んでおり、小柄で小学生にも見える。双葉は「うみお」と呼ぶ。母は由里子(ゆりこ)。父は写真家で家を出ていった。ミステリ的には岩田に次いで有力な犯人候補の一人ではあります。
    【緑】宮坂の妻だった。浮世離れしていた。コミュニケーション力不全だった。二年前飛び降り自殺した。
    【みなこ】チョークの線を踏んでしまった生徒。
    【宮坂雅弘/みやさか・まさひろ】国語教師。「海音」新人文学賞を受賞した。ハルナと親しかった。妻の緑は二年前亡くなっている。
    【森田】『小説海音』編集者。広瀬透の担当だった。
    【悠名/ゆうな】浅野悠名。白鳩学園中等部一年。美術部員。
    【由里子/ゆりこ】海生の母。小学校教師。
    【梨花子/りかこ】杉村梨花子。白鳩学園高等部三年。美術部長だったが自殺。

  • 私立の中高一貫の女子中学校・女子高校を舞台に起こる連続自殺。それは自殺だったのか?原因はなんだったのか?よそで起こった自殺とつながりはあるのだろうか。自殺した生徒の後輩たちが、噂された教師が、その教師とかつて仲の良かった教師が、司書教諭が、それぞれ舞台をまわす。ただ、どの登場人物もしょっちゅう、「思いつき」(わたしはこう思う!けど○○について説明できる?それはわからないけど…)、「思い込み」(○○先輩はそんな事する人じゃない!)、「理解の強要」(まずは私の気持ちをわかってほしい)そして噂好き、根拠がうすかろうがなんだろうがぱっと広まっていく噂。それらが高速で順繰りでてきて、ややげんなりしてしまった。それが舞台となる場所の特質なのだとしたらそうなのかもしれないけれど。事件か?自殺か?誰が犯人なのか?原因は?二転三転する見込みに、だんだんと真実があきらかになっていき…と。◆「わたしは正しかったんだ、って」「なにが?」「わかりません」「わかるって言ったじゃないか」「わかったことをすべて言葉にできるわけじゃないでしょう?」(p.192)…このやりとりが一番ひんやりとした。◆活版印刷三日月堂シリーズ、紙屋ふじさきシリーズ、金継ぎの家とほしおさなえ作品を読んできたので、デビュー作も、と思ったけど、風合いがだいぶちがった。

  • ミルクレープのよう

  • 女子校の屋上からの連続墜死事件と、墜死した生徒と教師が合作した小説の盗作疑惑、更に重なる教師の自殺した妻が残したネットサイトの文章。コロコロと変わる視点や感覚的で多くを説明しない描写が寄り添い辛い。一貫した自他の境界のくずれや、一方的な憧憬を押し付ける後輩の当たり前のように描かれる病みが印象的。

  • 【あらすじ】
    「みんな飛び下りて死んじゃった。なんでだろう?」中高一貫の女子校で、高三の生徒が屋上から墜落死した。先輩の死を不思議に思った海生は、友人の双葉と共に真相を探り始める。様々な噂が飛び交う中、国語教師も同じく墜死した。小説家志望だった彼は、死んだ女生徒と小説を書いていたが、死の直前に新人賞受賞を辞退していた。ある雑誌の作品中に自作と同じ文章を発見したからだ。何故そんなことが? すべてに一生懸命だった少女たちの物語。

    【感想】
    難しくて複雑なところが結構あった。最後の方が特によくわからなくて、頭がこんがらがってしまった。でも、読み進めていくと、いろんな真相、予想だにしていなかった展開が見えてきて、面白かった。

  • ほしおさなえさんの児童書を読んでおもしろかったので読んでみたけれど、全体的にいまいち。人物描写も設定も。入れ子入れ子で複雑にはなっても奥行きは出ない。

  • 中高一貫の女子高で起こる連続飛び降り事件。その真相を女子高生2人組と教師が追います。
    本筋とはあまり関係ない登場人物が多いですし、呼び方が統一されていないので把握出来ません。視点もコロコロ変わるので読み辛かったです。
    最後のどんでん返しは混乱したままの状態だったのであまり驚けませんでした。
    本書は一応推理小説の体裁を取っていますが、誰が探偵役なのか終盤になるまではっきりしませんし、ロジックは憶測だらけで不満が残りました。 

  • 不思議な魅力の小説。名前の間違えは発見、文庫では直っているのかな?

  •  中高一貫校の女子高で、高3の江崎ハルナが屋上から落下し、亡くなるという出来事が…。才能にあふれ、芸術系の大学に進むことも難なく思われていたハルナは、思わぬ事故で視力を失いそうになり、そのために将来を悲観したのか、あるいは視力が弱く、工事中の手すりに気づくのが遅れたのか。
     学校では、ハルナの幽霊を見たという噂が飛び交い、彼女の自殺は国語の男性教師宮坂のせいだという新たな噂まで。やがて、その宮坂さえも、屋上から飛び降り、ハルナの死の真相はますます謎に包まれるものとなった。
     美術部の後輩で、ハルナを慕っていた中3の海生(みお)と、勝気な双葉は、彼女の死の真相を突き止めようと、動き始めるが…

     美術部の先輩と、彼女と何らかの交流があったと思われる男性教師の死。男性教師が小説を書き、その小説にすべての鍵があるのではと、後輩の2人の少女と、男性教師の同僚が2人の死の理由を探ろうとします。読み進めるにつれ、見事に騙されたことに気づき、さらに二転三転していくのですが…。
     様々な登場人物のモノローグで展開していくのですが、誰がどう関わっているのか、あまりにも広く、漫然としていて、うまくついて行けなかったのが残念でした。

  • 女子校の雰囲気や、女子中高生の独善的だったりふわふわしたところだったり。そういう空気感が出ている。

    未成年の子どもたちはともかく、でてくる大人がなんだか未熟で、人物像がやっぱりふわふわしていた。
    もう少し緊迫感が欲しいし、雑然としすぎてる気がするのだけど、このふわふわとした雰囲気の作品展には、そういう要素はあまりあわないのかな。

    つまりは私にはそんなにあわなかった、というわけで。

全37件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1964年東京都生まれ。作家・詩人。95年「影をめくるとき」が第38回群像新人文学賞優秀作受賞。2002年『ヘビイチゴ・サナトリウム』が、第12回鮎川哲也賞最終候補作となる。16年から刊行された「活版印刷三日月堂」シリーズが話題を呼び、第5回静岡書店大賞(映像化したい文庫部門)を受賞するなど人気となる。主な作品に「菓子屋横丁月光荘」シリーズ、『三ノ池植物園標本室(上・下)』など。

「2021年 『東京のぼる坂くだる坂』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ほしおさなえの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
米澤 穂信
米澤 穂信
有川 浩
Q&A
恩田 陸
瀬尾 まいこ
有川 浩
米澤 穂信
坂木 司
伊坂 幸太郎
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×