- Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488018290
作品紹介・あらすじ
人の記憶を取り出して他人にも理解できるように翻訳する技術が実用化された時代。その技術は特別な力を持ったインタープリタと呼ばれる人々によって実現されていた。珊瑚は優秀な若手インタープリタとして将来を嘱望され、さまざまな背景を持つ依頼人の記憶翻訳を手がけている。しかしその仕事は彼女自身のなかにある埋められない欠落と向き合うことでもあった――第5回創元SF短編賞を受賞した表題作にはじまる連作短編集。
感想・レビュー・書評
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『娯楽』★★★★☆ 8
【詩情】★★★★★ 15
【整合】★★★★☆ 12
『意外』★★★☆☆ 6
「人物」★★★★★ 5
「可読」★★☆☆☆ 2
「作家」★★★★☆ 4
【尖鋭】★★★★☆ 12
『奥行』★★★★☆ 8
『印象』★★★★★ 10
《総合》82 A-詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
HSPはやってるよなぁと思ったら、SFにまで進出していた。すごいぞHSP。とはいいつつも、この作品のHSPは医学用語?とは異なる単語で構成された過剰に共感してしまう人たちとしている。
電脳とかバーチャルリアリティとか、その手のものが実現されるとして、どのような刺激を脳に与えたら、それをそれと認識できるのか。そのインターフェース作りをターゲットとしたSFを読んだことがないように思う。
HSPの共感してしまう能力を駆使して、事象を翻訳するというのは、なるほどと思わせる説得力だ。
もちろん、設定説明だけではない、不思議であり不安を伴う世界に生きる人々の物語も魅力的である。
あと、犬SFってジャンルがあるらしい。確かに犬SF。 -
短編集。
コニー・ウィリスの「クロストーク」の後書きで紹介されていた作品。
過剰共感能力を持つ人々の話。
似ているようで全く違うアプローチのSF。
主人公は商売のため、人助けのために個人の意識下に潜航する。いきなり「インタープリタ」「トランキライザ」「共感ジャマー」等、専門用語で溢れかえる。
え、なんや、意味わからんと思う間も無くアクションSFシーンは終わり、そこから物語の背景説明が始まる。
後書きによると本作品は「犬SF」だそうだ。
2010年代のベスト犬SFとも。
そんなジャンルあるんかいなと思ったけど、実に良かった。物語のキーが犬なのだ。
そして不覚にも犬が死ぬシーンで泣いてしまった。
自分にびっくり。過剰共感能力かいなと思った。
残る作品は、まぁ平均点以上。でも表題作が一番。
最後の作品が物語の端緒になっていて、もう一度読み返したくなるのがミソ。
まだまだ続きそう。
門田さん、頑張って! -
夢枕獏先生のサイコダイバーを思い起こす、精神世界のお話。正直オチがいまいちスッキリしなかったりと完成度はそこまで高いとは思えず。実際読むのに結構時間かかったのだけど興味深いといえば色々考えさせられる1冊だった。
まだまだ続き書けそうな感じと思ったら続編も出てるようなのでぜひ読んでみたい。
評点はちょっと辛目の3点で。 -
メンタルダイブといわれる記憶の底を探ることができる未来。世界観が面白いしキャラクターもよく描かれていて脇役も良い雰囲気を出している。
続編が出たら読みたい。 -
2014年6月創元SF文庫さよならの儀式年間日本SF傑作選:風牙、ミステリーズ!2018年4月号(vol88)、6月号(vol89):閉鎖回廊、書下ろし:みなもとに還る、虚ろの座、の連作短編4つを2018年10月創元日本SF叢書から刊行。他者の記憶世界を翻訳できる主人公:珊瑚の冒険譚。アイデアとそれを取り巻く登場人物配置、アクションが秀逸で、面白く、楽しめました。
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【収録作品】風牙/閉鎖回廊/みなもとに還る/虚ろの座
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SF。第5回創元SF短編賞受賞作。中短編集。
人間の記憶の中に潜行する、メンタルダイブもの、サイコダイバーものというらしい。
SFとして、世界観が興味深いだけでなく、単純にストーリーが面白い。
特に「閉鎖回廊」がホラー・ミステリ風の雰囲気もあって好み。
『ランドスケープと夏の定理』と同時受賞ということで、この年は豊作ですね。