Nのために

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488024550

作品紹介・あらすじ

「N」と出会う時、悲劇は起こる-。大学一年生の秋、杉下希美は運命的な出会いをする。台風による床上浸水がきっかけで、同じアパートの安藤望・西崎真人と親しくなったのだ。努力家の安藤と、小説家志望の西崎。それぞれにトラウマと屈折があり、夢を抱く三人は、やがてある計画に手を染めた。すべては「N」のために-。タワーマンションで起きた悲劇的な殺人事件。そして、その真実をモノローグ形式で抒情的に解き明かす、著者渾身の連作長編。『告白』『少女』『贖罪』に続く、新たなるステージ。

感想・レビュー・書評

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  • 初めて湊かなえさんの本を読みました。初心者には丁度いいよ見やすさで内容も頭に入ってきました!

  • あれから十年、あの事件の真相は何だったのか。
    Nという共通のイニシャルを持つ者達の中での交錯する様々な愛。
    親愛や尊敬、虐待やDVによる歪んだ愛情、同情や自己犠牲。
    そんな様々な愛情がぶつかり合うことは、運命的な出会いにもなれば、時に破滅の始まりだったりもする。
    誰かの愛は、誰かにとっての憎しみであったりもする。
    人が抱える様々な愛の形を表現した作者の文体、そして作品名、装丁、全てにおいて美を感じさせる作品であった。

  • タワーマンションで起きた夫婦殺害事件。
    冒頭で4人のNからの証言により事件の概要を掴むが、そこから少しずつ、証言とは異なる事実、其々の思惑が明らかになっていく。

    歪な愛の形、依存…一人で逞しく生きるようにみえる杉下も、時には人の行動を誤解までして、依存している。
    生き残った4人のNには、みんな幸せになってと願ってしまう。

    ドラマ化されてるみたいだけど、きっとより人物描写も細かくなって、活字とは違う面白さがありそう。みてみよっかな。

  • 本作は「真の愛とはなにか」×「罪の共有」をテーマに描かれたミステリー小説となっております。

    こちらの作品では「N」がつく人物が複数登場し、タイトル「Nのために」が誰にとってのNのためなのかという視点で読むかによって様々な見解が出来る嗜好を凝らした作品となっております。

    大枠な部分では放火、殺人に巻き込まれた男女4人の物語、といった感じですが、実際の所は「真の愛とはなにか」ということを問いただすかのような内容となっています。そんな普段は扱わない「愛」をテーマにした作品ですら湊ワールドが色濃く出ているのが見処です!

  • 登場人物がみんなN。なので敵役の野口夫妻すらNのためにという物語をそれぞれ持っていた。
    小さな愛媛の島から出てきた杉下。住んでるボロアパートの野バラ荘を守るために野口夫妻に近づく。そして事件が起きる。それぞれの視点で語られる事件、そして杉下が生きてきた過去。

  • 2010年に読んでいて再読。
    ちゃんと辻褄があっていて解決された事件が、実は複雑な背景の中絡み合ってて、それぞれが自分の大事なNを守るために嘘をついているけど、ただの純粋な絆じゃない。それぞれが人に言えない過去や、ちょっとした過ち、後悔を持ち続けている。それが嘘をより強固にしているんだと思う。
    野バラ荘(N)を守るための作戦が思わぬ展開に…
    湊かなえさんらしい、登場人物の過去が絶妙にいやな感じで、また物語にどんどん引き込まれてしまった。

  • これまで読んだ湊かなえミステリー作品のなかで、粗いけど、一番気迫が感じられた。
    様々な思いが混線してて、こういう話好き。

    ミステリーの裏で、究極の愛とは何か、がテーマ。
    杉下にとっての究極の愛は、罪を共有した全員、ということなんだろうか。
    私は俗物的だから、どうしても特定の誰か一人を愛していたんだろうという目で読んでしまい、安藤なのかなぁと思ったんだけど。

  • みんながみんな、秘密の共有をして、ある部分では自分たち一人ひとりがだれも知りえぬ秘密を隠している。
    結末は納得しえぬものでも、そこに誰かへの愛があるのならいい。

  • なかなかに深い過去を持つ4人の物語。それぞれが、それぞれに大切な人を守るために、少しずつ嘘をつき、結果的には守られた…のかな?

    4人の人物を語るだけで、十分物語になりそうなほど、濃いバックグラウンド設定。 虐待を受けていた小説家志望の男の子、父親から捨てられて世間知らずのお邪魔な母親と暮らしていた女、この2人が基本的にはメインキャストだけど、それぞれの話をもっと読みたかったかなぁ、とも。

    ちと難読な感じもするけど、それは俺の読解力の問題と、細切れに読んでいるから、まぁ仕方なしかな。他の作品も読んでみようかなぁ。

  • 殺人事件の参考人たちから語られた「事実」は、愛する人を守るためのひとつひとつの嘘が作り上げたフィクションだった。

    湊かなえさんの真骨頂、独白形式のミステリー。

    初めに参考人たちの証言で語られる殺人事件の顛末は実は真実ではなく、真実はその後それぞれの独白で読者に密かに明かされる。

    登場人物それぞれも片鱗しかしらない真実。

    嘘で作り上げられた「事実」が真実であってもいいのではないか。愛する人を守る嘘は暴かれなくてもいい。そんな気づきを得る作品。

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著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』(『望郷』に収録)で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。

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