オーリエラントの魔道師たち

著者 :
  • 東京創元社
4.09
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本棚登録 : 374
感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488027155

感想・レビュー・書評

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  • シリーズの色んな時間軸、国から切り取った短編集。1本1本の完成度が高く人間関係のパターンも豊富で相変わらずほんとうに面白い。乾石さんの本の中でもやっぱりこの一連が群を抜いて装丁も美しくこればっかりは絶対新書で買って本棚に置きたいシリーズ。

  • 夜の写本師読まなきゃ。

  • 心の内に闇を宿す者。人を呪ったり、復讐したりするのはいけないことだと、そんな奇麗ごとではない世界。いけないとか、いけなくないとか、そんなことではなくて、せずにはいられない深い感情がある。たとえ、そのために自身の命を差し出すことになっても。
    魔道師の中にある、闇。それは、人間の中にある闇だ。すべての人間の中にある闇。それに気付かず、潔白な人間のようにして生きることは、それはそれで幸せなことかもしれない。でもその闇は、やはりそこにある。闇を受け入れることは破滅かもしれないけれど、それでも、為すべきことは、為したいことは何なのか、そこから目を背けて生きることを生きるとは言わない。
    この短編集は、シリーズの中ではどちらかというと全体的にあっけらかんとした雰囲気がある。身の内に闇を宿しながらも、前を向いている感じだ。たとえ、その一歩先が奈落へと続く崖だったとしても、その一歩をためらわないような。
    どの作品も好きだったけれど、特に『黒蓮花』と『魔道写本師』が良かった。

  • 紐結びの呪文。植物や対象者の肉体の一部を使う呪文。死骸を使う呪文。呪文書を書き写した紙を使う呪文。


    日本小説でここまでファンタジーな世界観の話を読んだのは初めてです。

  • 『夜の写本師』の世界・オーリエラントを舞台とした短編集。
    紐結びの魔導師と貴石占術師の魔導くらべ『紐結びの魔導師』、苦しんでいる女たちのための密かな魔法組織を描く『闇を抱く』、死体を用いるプアダンの魔導師の復讐劇である『黒蓮華』、魔法ならざる魔法を操るもう一人の夜の写本師の物語『魔導写本師』の4編。
    同じ世界を舞台にしているけど、時系列はかなりバラバラ。一番古い年代が『黒蓮華』で暦でいうとコンスル帝国紀元1年、一番新しいのは『闇を抱く』の1831年。
    このシリーズは本当にダークファンタジーだと思う(^_^;)『闇を抱く』では男尊女卑って感じの世界だから虐げられてる女性達が辛い・・・『黒蓮華』は死体を用いるって時点でグロイし、『紐結びの魔道師』では貴石占術師が受ける怪我が読んでて痛いし、『魔導写本師』はイスルイールの過去に驚いた。
    グロイのや怖いのは苦手なのに、このシリーズは目が離せなくて困ります。
    ずっと図書館から借りて読んでましたけど、手元に置いておきたいシリーズです。
    いつかハードカバーを自分の本棚に並べたいと思います!

  • 時代も場所も様々なオーリエントの世界。4つの短編集。

  • ファンタジーなのに、何となく中世ヨーロッパを思わせる短編集。

    読みにくいというわけでもなかったですし
    面白かったというわけでもなかったです。
    ああそうなんだ、という感じで始まって終了。
    普通の生活に、ちょっとだけエッセンスを加えるように
    魔法がからんでくるだけの世界。
    そして女性は怖い、と思える世界。

    何にせよ、相手の思いやりや何かがいつもあるもの、と思ったら
    恐ろしいしっぺ返しがくるので危険です。

  • 短編集である。
    どの話も全てお気に入りだ。
    相変わらず挿画も素晴らしいし、
    この本自体がギデスディン魔法や
    魔道写本に使えそうで
    触れるだけで少しどきどきするのも
    また嬉しい。
    テイクオク魔法やアルアンテス魔法は
    手を伸ばせば届きそうなのでは、
    と思わせてしまうところが、
    また心憎いばかりだ。
    実際、心に闇を住まわせる覚悟など
    持ち得るわけもない小市民に
    淡い夢を見せてくれて
    ありがとう、乾石さん。
    次巻が本当に待ち遠しい…!

  • 『紐結びの魔道師』は、そういえば、この人はアンジストのときから、名前遊びが好きだったんだっけと思いだした。
    短篇集。どれもおもしろい。
    この人の話は何故か、どれを読んでも、おもしろいと言って終わりで、感想を書くに至らないんだけど、文章が豪華だから絵巻物のように眺めちゃうのかしら。

    『闇を抱く』は、虐げられた女達の話。
    こういうのはいいね。乾石さんの書く女性はたいがい強いから、その強さが遺憾なく発揮されていい。
    肉体的強さ、慣習から来る立場の強さをひけらかして、あらゆる暴力を振るうものは、罰せられて当然。
    と思うのだけれど、そこを許すような部分もあるのが、謎。そんな連れ合いもいいのだろうか。

    『黒蓮華』
    この世界の、魔導師の覚悟を表していていい。これだけ毛色が違って、他のものも覚悟を抱えていながらも、この話が暗黒面からの話で一番、印象に残る。
    魔術を返されれば死ぬ。恨みを買えば、復讐されるかも知れない。

    結びのふたりの幸せは、蛇足のようにも思えたのだけれど、恨みや因果を引きずることもなく生きるものもいる、ということを、白花と、兄妹ふたりで表したのかな。

    人の悲しみは、その人のいる世界で決まる。
    悲しみの種類、大きさ、見た目、よその人から見てどれほどの違いがあっても、当人たちの深さは同じほどかも知れないし、場処を移ってみれば、やはり違うのかも知れない。
    アンナ・カレーニナに言うように、幸福な家庭はどれも似ていて、不幸な家庭は家庭の数だけ不幸の種類がある。
    善意は通じるものだと私も思っているけれど、通じない人もいる。
    善意も何も、そんなものを抱く余裕すらない世界だってある。いくらだってある。
    悪意も何も、そうしないと生きていけない世界もある。
    だから、求めても得られないのかも知れないし、失ったら取り戻せないのかも知れない。
    壊すことだけで報われる恨みや悲しみがが種になって、失ってのち、もう一度、関係を作る、ということを放棄したら、黒い蓮が見えるのか。
    こう返る、と期待したものが返らない力不足は、応えられない、求められない、そういう悲しみにしかならないのか、そうでないのかは、その人のいる世界と、ありようで変わるのだろうけれど。
    黒い蓮は私も咲かせるだろうし、白い花も同時に咲く可能性だけはある。残ってる。



    『魔道写本師』
    人の心の闇がどう育っていくのかという、闇を背負う覚悟があるのかどうかという、自分に引き換えたら、思慮の浅さが何かを招いていないか、その場限りの取り繕いで安心していないか、という、胸に手を当てたくなるような話。
    竜、美しかった。

  • 【収録作品】紐結びの魔道師/闇を抱く/黒蓮華(こくれんか)/魔道写本師

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著者プロフィール

山形県生まれ。山形大学卒業。1999年、教育総研ファンタジー大賞を受賞。『夜の写本師』からはじまる〈オーリエラントの魔道師〉シリーズをはじめ、緻密かつスケールの大きい物語世界を生み出すハイ・ファンタジーの書き手として、読者から絶大な支持を集める。他の著書に「紐結びの魔道師」3部作(東京創元社)、『竜鏡の占人 リオランの鏡』(角川文庫)、『闇の虹水晶』(創元推理文庫)など。

「2019年 『炎のタペストリー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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