流浪の月

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488028022

感想・レビュー・書評

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  •  うん。愛だな。男女の性愛とは違う(いや、そうなのか?)。この二人の関係、“同士”でもないし、“親友”でもないし…。でも、世の中で唯一分かりあえるお互いが細くても切っても切れない糸で結ばれている。絶対に手を離したくない二人。
     更紗は自由過ぎてぶっ飛んた両親に育てられ、世間からは何と言われようと、そんな両親と幸せに暮らしていた。しかし、父親が癌でなくなったあと、母親は彼氏を作って家を出、九歳の更紗は一人になり、伯母の家に身を寄せることになった。
     死ぬほどいやな叔母の家での暮らし。ある日、学校帰りにどうしても叔母の家に帰りたくなくて、ベンチでずっと本を読んでいたら、かねてから“ロリコン”という噂があった文という大学生に声をかけられる。「僕の所へ来る?」と。更紗にとってはそれは救いの手だった。世間は“更紗ちゃん誘拐事件”として騒ぎたてるが、文は更紗に対して世間が想像するようないたずらをするようなことはなく、更紗が嫌なことは何もせず、自由過ぎる生活をする更紗に四角四面な生活をしていた文が影響を受けて、二人で二ヶ月間楽しく暮らす。ある日動物園で、二人が発見され、文が逮捕され、更紗が“保護”されるまでは。
     「文は何も嫌なことはしていない。そういうことをしたのは、叔母の家の息子のほうだった。」と言おうとしても、どうしても言えない更紗。文は犯人として取り調べを受け、少年院に送られる。更紗はその後ずっと“少女の時に辛い体験をした女の子”として世間から憐れまれる。本当は文と過ごした二ヶ月間が、両親が居なくなって以来、一番幸せな時だったと言いたくてもどうしても言えない。「可哀想」という言葉の中には“蔑み”があると私は思う。だけど、世間は更紗のことを“可哀想な子”として扱う。その残酷さに気づかない世間の人達に私はイライラした。
     文は“誘拐犯”となる前から、実は人に言えない問題を抱えていて、そんな文を更紗は唯一救ってくれた相手だった。そのことを更紗は15年間知らなかったけれど。
     お互いに相手を傷つけ、相手の人生を台無しにしてしまった、もう会ってはいけないと思いながら、ある日、文の経営するカフェに更紗が客としてやって来る。お互いがお互いをストーカーして、また結ばれた。ネット社会の誹謗中傷にさらされては、そこにいられなくなって、二人で遠い町に引っ越す。世間は“変質者で元誘拐犯”と“誘拐犯に洗脳されたもと少女”として見るがそうではない。しかし、恋人同士でもない。しかしそれよりも強い絆で結ばれている。これも愛だと思う。

     まちがいさがしの まちがいのほうに 生まれてきたような 気でいたけど 
     まちがいさがしの 正解のほうじゃ きっと出会えなかったと思う

     雷に打たれたように感動した米津玄師さんの「まちがいさがし」の歌詞が浮かんできた。
     世の中からはみ出た者同士、“間違った者”同士だからお互いに掛け替えのない存在、ずっと一緒にいたい存在。これは愛だな。

  • 事実と真実の違い、インターネットの恐ろしさ、人の善意とはいったい何なのかなどなど考えさせられた。
    ストーリーはのめり込ませる没入感がありテンポもよく読み飽きしない。
    主人公の二人が、今生活している場所にいられなくなったら次にどこに住もうかと前向きに語り合っていることに希望を見た気がする。

  • 始めのファミリーレストランのシーンで、過去の少女誘拐事件の話が出てきたため、犯罪小説なのかと思って読んでいったら…。
    「"真実"は当事者にしか分からない。」という究極の恋愛小説だった。文(ふみ)が働いていた喫茶店『calico』の意味を知って、そんなふうに感じた。

  • 娘に感謝!娘の学校の図書館を活用しよう!
    2冊目は『流浪の月』です

    またまたある日の1Q家の会話です
    娘「パパこれは読んだことある?」
    父「読んだことない」
    娘「星を編むは貸出中でなかった」
     「代わりにこれ借りた」
     「読むなら貸してあげる」
    父「ありがとう」

    ということで我が図書館ではまだ予約が多い本作も娘のおかげで読むことができました
    娘よ、サンキュー(≧∇≦)b


    で、前回読んだ『汝、星のごとく』と同じぐらい良い作品じゃないですか〜。゚(゚´Д`゚)゚。


    あなたと共にいることを世界中の誰もが反対し、批判するはずだ
    わたし(更紗)が女児誘拐事件の被害者で、あなた(文)が女児誘拐事件の犯人だから

    真実を知らない者たちは好き勝手言う!
    そんなもの糞くらいだ!
    と、思う


    わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう

    思いやりというフィルターを通して自分勝手な正義感や優しさを押し付けてくるのはウンザリだ!
    中途半端な理解と優しさのがんじがらめはいらない!
    と、思う


    更紗と文はお互いを必要としている、、、
    そばにいたいだけ、、、
    自由になりたいだけ、、、
    ただそれだけ、、、
    なのにどうして世間はそれを許してくれない、、、


    私は文に恋をしていない
    キスもしない
    抱き合うことも望まない
    だけど、今までに身体をつないだ誰よりも、文と一緒にいたい

    そういう愛の形があってもいいのではないだろうか
    と、思う

    これは、ずっと人とはちがう自分にもがいていたふたりの美しい愛の形の物語


    • ultraman719さん
      輩が湧いてくるシリーズもお忘れなく!w
      輩が湧いてくるシリーズもお忘れなく!w
      2024/05/09
    • 1Q84O1さん
      そんなシリーズ読んだこともないし、知らな〜いw
      そんなシリーズ読んだこともないし、知らな〜いw
      2024/05/09
    • ultraman719さん
      湧いた〜
      ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ
      湧いた〜
      ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ
      2024/05/10
  • 愛にはいろんな形がある。一緒に居たい。話したい。横に並んで黙っているのが心地いい。触れたい。守りたい。応援したい。一緒に仕事をしたい。支えたい。笑い合いたい。見ていたい。

    恋とか友情とか家族愛とか推しとか、名前は沢山あるけれど、これは林檎でこれは梨で、という風に簡単に区別できるものではない。

    一つ一つどこか歪で、完璧な丸なんてどこにも無い。
    人と人、一対一の、その二人だけの関係。

    そう思うと結婚って面白いですね。偶発的に知らずのうちに発生する愛情と、決まりで人と人を結びつける結婚という制度。全然違うものなのになぁ。恋愛結婚はあり得ることではあるけれどそれが主流になるのは変じゃない?ううん難しい。

    親と私。兄妹と私。友人と私。その関係が果たして世間一般でいうところの「親子」や「友達」に当てはまるのかは分からないけれど、私は彼らを愛している。一緒に居たいと思って時間を共有すること。大事なのはそれだけなんだよなぁ、と、最近つくづく噛みしめます。


    「普通」とはかけ離れた二人の物語。濃紺の空にぽっかりとひとつ浮かぶ月みたいなお話でした。けっこう好き。作者さんの他のお話も読みたい。

  • 事実と真実は違う

    更紗と文と梨花
    出会えて良かったと思う

    それが恋愛でなくても一緒にいたい誰かと両思いだったら、過去とか場所とかそういうものとは関係なく幸せなんだろうな
    (図書本)

  • 図書館で物色中、背表紙に「第17回本屋大賞」の文字。迷わず手に取りました。

    「彼が本当に悪だったのかどうかは、彼と彼女にしかわからない」
    この一言に尽きるなと感じました。

    上辺だけしか知らない人達が、さも当事者かのように騒ぎ、かき乱していく。
    性加害報道で盛り上がるワイドショーが頭を過ぎりました。

    お互いの欠けた部分を補うように寄り添う、更紗と文。終始心が重くなる展開でしたが、最後は明るく微笑ましく終わり、読了感が良かったです。

  • テーマ的にあまり得意ではないので、少し遠ざけていた感はありました。とても読みやすい文章でぐっと引き込まれ、状況が思い描きやすかった。
    ふたりの間では美しい世界であっても、他者から見れば異質で違う真実になっている。この場合犯罪者と被害者、確かにそういうことになる。そこまでいかなくても、現実でも、相手のことをわかっていたつもりでも、何もわかっていなかった、その一見浅薄な認識で相手を追い詰めてしまってることもありえるなぁ…と。人は強く振舞いながら、内では誰にも触れて欲しくない事情がある。言ったところで。同情されること程、辛いことはない。
    ネットは便利ですが、ネットの無い頃なら時間の経過と共に薄れてゆくことが、分析評価が次から次へと書き足されてゆく。立ち直らなければならない犯罪者、被害者どちらにも、心の傷が癒えない時代になったのだと、ネットの恐ろしさを感じました。

    文のために用意された「サイコロのような離れ」ここ辛かった。母屋に向かって作られている窓、外の様子をうかがうことも、誰かが中をうかがうこともできない。表面的にでも、なぜそこまで疎外するのだろう。目は合わせない母親、しかし栄養のある美味しい料理を作ってくれる。ここ泣けた。自分が母親の立場ならどうしただろうと突き付けられたようだった。
    言葉で言い表せない、文と更紗のような関係、あってもいいのでは。なにより、自分を嫌悪しているところまで認めてくれる相手の存在があることは幸せだと思う。

  • 主人公更紗と、文の関係を表す言葉で
    世間が納得する名前は何もない。
    それでもいいじゃないか・・・・
    私はそう思う。

    この世には、さまざまなひと言ふた言で
    言い表せない人間がいる。
    人に話すことのできない、辛さ、もど
    かしさ、恥ずかしさもあるかと思う。
    そこに湧き上がる感情。
    病気という言葉で片付けてしまえば早い
    のかも知れない。

    青年、文は公園にいた小学生の更紗を
    家に連れ帰った。更紗は預けられている伯母さんの家が地獄と感じていて、文の家は天国だった。
    TV で更紗を探しているニュースを
    見ても平気だったのか、覚悟の上か
    ふたりは動物園に行き、通報される。


    15年後、DVに悩む更紗は再会をする。
    自由な生活が欲しかった。
    文に逢ったことは、正しかったのか?
    決して、恋人同士にはなれない。
    世間の偏見に満ちた視線のなかで、
    それでも、居心地の良い人、場所だった。何故だろう?
    思うままに、生きていけば良い。
    誰が何と言おうと、自由なはずだ。
    真実はひとつなのだから。

    凪良ゆうさん、初読み作家さんだ。
    つい最近まで男性だと思っていた。
    凪良さん、失礼しました。
    流浪の月、は積読に「汝、星の如く」が
    あるので、予習なる予読のつもりで
    読みました。どのような本なのかを知ら
    ずに読みました。
    ――ああ、こういう人もいる。――
    確かに、皆様々なことを感じ、思い、
    泣き、笑って生きている。
    皆、幸せでいて欲しい。


    2023、1、18 読了

    • アールグレイさん
      知らない。
      残念だけど聞いたことのないお名前ですね!
      作家さんって沢山いますよね。(--)(__)ウン
      知らない。
      残念だけど聞いたことのないお名前ですね!
      作家さんって沢山いますよね。(--)(__)ウン
      2023/01/22
    • ポプラ並木さん
      アールグレイさんの「さん」が抜けていました。。。。ごめんなさい
      アールグレイさんの「さん」が抜けていました。。。。ごめんなさい
      2023/02/24
    • アールグレイさん
      こんにちは(^_^)/ポプラさん

      ――さんが抜けていた?
      そんなこと、抜けていていいですよ!
      私は、さんをつける。並木が略されているのです...
      こんにちは(^_^)/ポプラさん

      ――さんが抜けていた?
      そんなこと、抜けていていいですよ!
      私は、さんをつける。並木が略されているのですから。
      (=⌒ー⌒=)
      2023/02/24
  • 評判の良さに読んで見ようと買ったが、凪良ゆうは初かと思ったら「すみれ荘」を読んでいた。
    母親の失踪、従兄弟からのセクハラ、ロリコンの誘拐 、恋人からのDV など、重い内容が続くが、主人公の更紗と文のキャラクターからか関係性か、読み続けることができる。これが本当に身体の関係があったらアウトだろう。更紗の自由性が文の囚われていた殻を破ったように思う。
    子供だったから仕方が無いのかも知れないが、従兄弟のセクハラを主張できなかったのか、とか恋人のDVを警察に訴えるとかしていたら、もう少し世間の当たりも違って来たように思ってしまう。
    最後の方は、もう一人の梨花が加わり二人の絆が深まり、安住の地を得た事に安心した。。

    • かなさん
      浩太さん、初めまして。
      この度はこちらへのフォローとレビューへのいいねを
      ありがとうございます。
      こちらからもフォローさせて頂きますの...
      浩太さん、初めまして。
      この度はこちらへのフォローとレビューへのいいねを
      ありがとうございます。
      こちらからもフォローさせて頂きますので
      これからどうぞよろしくお願いします!

      この作品、私大好きなんです!
      凪良ゆうさんの作品は、読んでいて思うんですけど
      すごく登場人物の描き方が上手でそれでいて
      繊細な感じがします(^^)
      あとは、この作品の表紙がいいですよね♪
      読み終えてから表紙を見るとなんかいいんですよねぇ…。
      2023/06/26
    • 浩太さん
      かなさん
      コメントを見るのが遅くなり、申し訳ありません。
      私も皆さんのコメントを参考にして読んでいますが、この作家も評判が良いので読んで見た...
      かなさん
      コメントを見るのが遅くなり、申し訳ありません。
      私も皆さんのコメントを参考にして読んでいますが、この作家も評判が良いので読んで見たところです。繊細な感じで後にじわじわとくるような作家ですね。
      今後もよろしくお願いします。
      2023/06/30
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著者プロフィール

1973年生まれ、京都市在住。2007年、BLジャンルの初著書が刊行され、デビュー。17年『神さまのビオトープ』を刊行し、高い支持を得る。19年『流浪の月』と『わたしの美しい庭』を刊行。20年『流浪の月』で「本屋大賞」を受賞する。同作は、22年に実写映画化された。20年『滅びの前のシャングリラ』で、2年連続「本屋大賞」ノミネート。22年『汝、星のごとく』で、第168回「直木賞」候補、「2022王様のブランチBOOK大賞」「キノベス!2023」第1位に選ばれ、話題を呼ぶ。翌年、同作の続編にあたる『星を編む』を刊行した。

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