- Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488028510
作品紹介・あらすじ
大阪の商人文化の中心地として栄華を極めた船場――戦下の昭和18年、婦人化粧品販売で富を築いた大鞠家の長男に嫁ぐことになった陸軍軍人の娘、中久世美禰子。だが夫は軍医として出征することになり、一癖も二癖もある大鞠家の人々のなかに彼女は単身残される。戦局が悪化の一途をたどる中、大鞠家ではある晩“流血の大惨事”が発生する。危機的状況の中、誰が、なぜ、どうやってこのような奇怪な殺人を? 正統派本格推理の歴史に新たな頁を加える傑作長編ミステリ!
感想・レビュー・書評
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大阪商人の大家、大鞠家で起こる殺人劇! クラシカルな世界でミステリーを堪能できる傑作 #大鞠家殺人事件
戦時中の大阪、化粧品会社で財をなした大鞠家。屋敷には大鞠家一族や丁稚奉公が暮らしていた。ある日長男が結婚することになり、お嫁さんが嫁いできた。
彼女は一族を次々に襲う事件に巻き込まれていく。果たして犯人は誰なのか…
重厚感がスゴイ。
これだけボリュームがあって、読みづらい大阪弁や古い言い回しがある小説ながらも、読ませるのがかなり上手。読む手がまったく止まりませんよ。
少しずつ事件や謎を見せられるので、読み手を煽りまくるのが手法が大変秀逸。
登場人物もこの時代ならではのキャラクターばっかり。みんな活発に生きているさまが手に取るようにわかりました。
特に主人公である大鞠家に嫁いできたお嫁さんが気丈でカッコいいんですよ!一人きりなのに愚痴ひとつを言わず、しっかり前だけを見てる姿は惚れちゃうっ
本作の最も優れた読みどころは、やっぱり戦前、戦時中の大阪浪花の雰囲気が味わえるところ。
大阪の商人文化、栄華ある大家、お家騒動、丁稚奉公たち、戦時中の暮らしなどなど… 重厚感たっぷりに読み手を魅了してくれます。しかも大阪商人の大家という、まるで縁遠かった世界での殺人劇です。この時代にタイムスリップできちゃう作品、素晴らしいっ
ミステリーもなんとも不思議で、正直何一つ真相が全く分からず終盤を迎えてしまいました。ただ何の根拠もなく、犯人はこいつくせぇなぁ~という目星はついちゃいましたが。
本作トリックは及第点くらいなんですが、隠されていた真相や犯人の動機が素晴らしかったです。なんですかこの外れさた感じの謀略は! これぞミステリーですよ、最高!
ちょい残念なのは、世界観、重厚感は十分で最高なんですが、その割にミステリーや物語としての切れ味として普通な点。もう二つくらい工夫や驚きがあると満点かなと思いました。
しかし本作も2022年度のミステリーランキングを賑わす一冊になりそうです。
現代では味わえない戦時中、大阪商人のお家を堪能できる本作、ハイテクデバイスばかり弄ってネットの渦の中にいる方に、是非オススメしたい作品でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
大阪の商人文化の中心である船場。
そのなかにある「大鞠百薬館」を築いた大鞠家の創業者の長男・千太郎が行方不明になったのは明治39年のことだった。
その後、長女が婿をとり昭和18年にはその息子である多一郎は陸軍軍医となり、嫁として大鞠家に入ったのは美禰子だった。
そこから大鞠家に次々と起こる殺人事件。
もうこの一族の摩訶不思議な事件に夢中になってしまった。
殺人事件というよりも惨劇なのだが、いったい誰が何故⁇というのは…。
戦後に明らかになるのだが…。
いやぁ、これこそ正統派推理小説なのか、しっかりと堪能できた。
時代背景もその当時の言葉も遠いことなのに人間味を感じたというのもこの一族のなかで起こることだったからかもしれない。
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満足の一冊。
時は明治から昭和初期にかけて。
舞台は商人の町、大阪 船場。
これだけで充分ストーリーにのみこまれる。
後継ぎ長男が行方不明、次世代の長男は結婚と同時に出征、そして起きた連続殺人事件。
次々と大鞠家に襲いかかる悲劇。
夫の帰りを待つ長男の嫁、美禰子は何を知り行くのか…ボリュームも気にならないほどの展開が面白い。
一族内での殺人事件、スケキヨを思い出す逆さスタイルには横溝チックを感じられてまた良かった。
満足感がきちんと残る、戦中戦後という時代背景、商人文化、人のドス黒さがきちんと活かされた正統派ミステリ。 -
202301
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クラシックミステリが好きで、とりわけ“一家・一族(ファミリー・クラン)もの”が好物の私(横溝正史氏の金田一事件ファイルは勿論コンプリート済)。
もう、このタイトルには、ホイホイされちゃいますよね!
大阪・船場の豪商一族「大鞠家」で起きた、連続殺人事件・・・。その背景にある謎を巡る物語でございます。
いわゆる“二段組み”構成なので、一見ヴォリューミーなのですが、読みやすいので割とスラスラ進みます。
第二章あたりまでは、大鞠家の歴史や船場商家ならではの独特の奉公風習など、当時の時代背景についてのお話が続きます(ここに伏線があるのですが)。
そしてついに殺人が起こる第三章から話が動きだして、次々と起こる殺人と、過去に起こった創業者の長男の失踪事件との関係や、夜中に現れる謎の“赤毛の小鬼”の謎など、“ワクワクゾクゾク”しながら引き込まれていきます。
同時に戦時下ならではの薄暗い事情についても語られていて、そこに結構な行を割いている為“脱線”のように思ってしまいそうになりますが、そういうことを踏まえての内容ということなのでしょうね。
因みに、途中で“探偵”がセンセーショナルに登場しますが、これがマジでとんだ“道化”でした。
そして、終盤で一気に真相解明と伏線回収がされていくのですが、“謎解きをする人物”が唐突に登場した感と、上記の創業者の長男失踪のくだりを含め、ちょっと雑な印象なので動機や経緯をもっと丁寧に述べてほしかったなと思います。
というわけでクラシカルなミステリの雰囲気を堪能させて頂きました。
古典へのオマージュもあるので、その辺りもお楽しみ頂けるかと思います。-
あやごぜさん、こんばんは!
金田一コンプリートされてるんですね、すごい‼︎私はちゃんと読んだのははるか昔に何編か‥。ドラマ化よくされてるの...あやごぜさん、こんばんは!
金田一コンプリートされてるんですね、すごい‼︎私はちゃんと読んだのははるか昔に何編か‥。ドラマ化よくされてるので読んだつもりになってます。
この本気になってたもののとてもボリューミーなので「今はまだ」と敬遠してました。あやごぜさんレビュー読んで挑戦したくなりました。‥連休とかゆっくり時間とれる時に、かな(*´-`)2023/02/21 -
111108さん。コメントありがとうございます♪
そうなのです~。横溝さんの文体と相性が良かったのもあって
「金田一耕助ファイルシリ...111108さん。コメントありがとうございます♪
そうなのです~。横溝さんの文体と相性が良かったのもあって
「金田一耕助ファイルシリーズ」(『本陣殺人事件』から『病院坂の首縊りの家』まで)次々読んでいたら、コンプリートしちゃいましたww。
111108さんの仰る通り、映像化されている作品も多いので、内容知っている感じになりますよね~。
機会があれば、再度原作に手を出してみるのも一興かもです(^^♪
で、本書ですが、確かに二段組み構成でヴォリューム感はありますし、
謎解き以外の時代背景部分が長くて、ちょっと冗長なところもあるのですが、個人的にはクラシカルな雰囲気をたっぷり堪能できて良かったです。
111108さんも気になっていたとの事で、ゆっくりお時間とれる時にでも是非読んでみて下さいませ~♪2023/02/22 -
あやごぜさん、お返事ありがとうございます!
金田一コンプリートの理由で横溝さんの文体との相性、素敵ですね♪確かに読みたくなる口調?みたいな...あやごぜさん、お返事ありがとうございます!
金田一コンプリートの理由で横溝さんの文体との相性、素敵ですね♪確かに読みたくなる口調?みたいな文体ありますよね。
読んだつもり名作をきちんと読みたい今日この頃なので、横溝さんも探してみます。
時代背景部分にも興味あるのでこの本も読みたいです、そのうちに(^ ^)2023/02/23
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昔の船場独特の風習や戦争からくる悲劇を、本格ミステリーに仕立てたのは新鮮だった。きな臭くなりつつあるこの時代に向けて書かれたようにも思えた。恐怖を利用したプロパガンダに惑わされないようにしないとね。
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結末のミステリーは摂って付けたような寓話(著名な探偵小説をもじる)のようになるが、人の恨みは世代を超えて続くものだと恐ろしさも感じた。親族の絆はやはり一番強く、腹違い・養子縁組などの「絆」とはいざとなるとまるっきり違うということを物語っている。