書物愛 [海外篇] (創元ライブラリ)

制作 : 紀田 順一郎 
  • 東京創元社
3.88
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本棚登録 : 112
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488070731

作品紹介・あらすじ

滑稽でもあり悲しくもある書痴たちの諸相を、書物の達人紀田順一郎が選びに選び抜いた、傑作アンソロジー。ある人は身につまされ、ある人は笑い転げ、書物の魔力に改めて溜息をつくこと間違いなし。

感想・レビュー・書評

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  • 日本編に引き続き海外編です。
    日本の話に比べると、短編に出てくる登場人物たちの「書物愛」がグレードアップしているというか、すごい執着心だと思いました。年老いた女性と結婚してでもコレクションを奪おうとする男の話は壮絶でした。その仕返しもすごかったですが。
    あと、羊皮紙は羊の目の部分は穴が空いてる、というのにびっくりしました。
    ツヴァイクの短編が2つはいってましたが、どっちも読んだことがあったのでちょっと損した気分になりましたが、再読できてよかったと思うことにします…。

  • ・紀田順一郎編「書物愛」(創元ライブラリー)の 日本篇、海外篇の2冊を読んだ。書名通り、書物を愛する人々の物語のアンソロジーである。個人的には海外篇の方がはるかにおもしろかつた。日本篇は話が小さくていけない。例へば稲毛恍「嗤い声」は芥川賞、直木賞受賞作家の初版本狙ひに精を出す人々の物語である。かういふ人もゐるのかと思ふ反面、何もそこまでしなくてもと思ふ。初版本で稼がうとするらしい。他には、巻頭の夢野久作「悪魔祈祷書」を初めとして古書関連が多いのだが、いづれも私にはリアルすぎて おもしろくない。現実の古本屋はかうなのだらうなと思つてしまふ。その意味ではさすが夢野久作だと思ふ。どこかにネタ本でもあるのかもしれないが、かういふのは日本篇ではこれだけである。それでもやはり、海外篇の諸作に比べるとおもしろみに欠ける。日本にも愛書家がゐるはずなのに、物語になるとそれがかく も小さくなつてしまふのかと思ふばかりである。最大の違ひは古書の種類、スケールであらう。海外篇の多くの書物は羊皮紙の手稿本の類である。日本ならば中古中世の古写本や光悦本等になるのだらうけれど、そんなものを追ひ求める愛書家といふのは作家の想像の埒外にしかゐないのかもしれない。
    ・海外篇ではオクターヴ・ユザンヌ「シジスモンの遺産」は見事である。古書蒐集家の死後の騒動を描くのだが、それが半端ではない。主人公は相続人のオールドミスに求婚し、それを断られるや隣に転居して狙ふといふ有様である。かういふ熱狂は日本にはない。守るも責めるも狂の世界である。フローベール「愛書狂」も似たやうなものだが、こちらの方がスケールが小さい。そんなのに伍して、シュテファン・ツヴァイクが2篇入る。私はツヴァイクをほとんど知らないが、この2篇は優れた作品だと思ふ。「目に見えないコレクション」は書物ではなく版画蒐集家の物語である。第一次大戦後のインフレでそのコレクションの散逸する様を描く。それは本人には内緒で家族によつて行はれたから、本人は本物と信じて毎日コレクションを触覚で楽しむ。盲目だからである。ところがある日、それがばれさうになる……最後の一文、「あの古い真実の言葉を思いおこさずにはいられませんでしたーゲーテが言ったのだと思ひますがー、『蒐 集家は幸福である』と」(287頁)この皮肉にも痛切な言葉は日本篇の諸作のラストとは雲泥の差である。同じくツヴァイク「書痴メンデル」、こちらは店を持たない古本屋の物語、第一次大戦前後である。メンデルはあるカフェに陣取つて商売をしてゐる。その知識の豊富なことは他に類がなく、それ以外のことを気にしないのは正に書痴の書痴たる所以であつた。ところがある日当局に連行され拘束されて、帰つてきた時にはその面影はなく……これも戦争の悲劇である。書痴たるメンデルを時代が殺してしまふ悲劇は書物愛をはるかに凌駕する。この2篇はアンソロジー全体の中でも異色である。大体は前述のやうなテーマである。 あくまでも書物愛、愛書狂、これを越えることはない。ところがツヴァイクは軽々とそれを超える。それほどの大戦の衝撃だつたといふことでもあらう。私はこの2篇でこのアンソロジー、特に海外篇を良しとする。アンソロジー編者の良し悪しはこのやうな作品を一つでも入れることができるかどうかにかかつてゐる。 ツヴァイクを、しかも敢へて版画蒐集家を選んだ編者の慧眼を嬉しく思ふ。さすが紀田順一郎である。なほ、編者自身の短篇も収められてをり、これもお馴染みの古書業界、古書蒐集家に関はるミステリーである。いささか小さいが、日本篇の中では上出来だつたと言へる。

  • 『日本篇』と同時発売の、こちらは『海外篇』。
    『海外篇』で外せないのは、矢張り、フローベール『愛書狂』、ユザンヌ『シジスモンの遺産』だろう。どちらも滑稽でありながら物悲しい、コレクターの情念を戯画化して成功している(余談だが、白水社版とサバト本はどちらもコレクター心をくすぐる造本だ)。
    訳文もテンポが良く、読んでいて気持ちがいい。仏文の翻訳は矢張り生田耕作が一番好きだ。
    他の作品では、M.R.ジェイムズ『ポインター氏の日記帳』が収録されていたのが嬉しい。正統派の英国怪奇小説の書き手として知られる著者で、この短編も怪奇小説。カーテンの柄、見てみたいなぁ……。その他、『書痴メンデル』の切ない結末、テンポの良い会話劇とも読める『牧師の汚名』良かった。

    全体的に『日本篇』と比べると、『本』という『物』に対する意識の違いが垣間見えて面白い。『日本篇』は本を巡る人間関係やちょっとした謎がメインになっていることが多いが、『海外篇』では、『写本』や『豪華な装丁』への拘りが感じられるものが多いように思う。

  • ビブリオマニアをテーマにしたアンソロジーの海外篇。熱狂的なコレクターたちの突き抜けたマニアっぷりに呆れつつも、どこかで憧れも感じてしまう。お気に入りは「書痴メンデル」かな。

  • この本には国内篇もあるのだけど。
    個人の収集に対しての、もののあはれ、と言えばいいのか、その熱情に反転した無常が、海外篇だというのによほど身に沁みるものが多い…ように読んだ。その熱情の個人的社会的一過性を愛おしく、痛々しく、慕わしく、自戒を感じつつ、読んだ。
    東京創元社さん文庫化有難う。

  • 祝文庫化!

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    「滑稽でもあり悲しくもある書痴たちの諸相を、書物の達人紀田順一郎が選びに選び抜いた、傑作アンソロジー。ある人は身につまされ、ある人は笑い転げ、書物の魔力に改めて溜息をつくこと間違いなし。」
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    「世界で一冊しかない本。手にとる者の魂をうばう美しい本。人から人へと数奇な運命をたどる本。書物の達人が、本を主題とする知られざる名作、かくれた傑作を発掘する待望のアンソロジー。収録作品─フローベール「愛書狂」、アナトール・フランス「薪」、ギッシング「クリストファスン」、ツヴァイク「目に見えないコレクション」ほか全11篇。」

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