- Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488105464
感想・レビュー・書評
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マープルが最後にさらりと持っていく短編集。最後だけ異質だけど、あとはマープルが話せば結末がわかる的な流れ。
これはあれだ。水戸黄門。マープルは間違えないという安心感。
短編集……というより掌編レベルの短いお話がたくさん載っているので、隙間時間に読むのがいいかな。
ちょっと飽きてしまったのもあるけど。
次は長編が読みたいかな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
エドワード・ゴーリーがもっとも好きな作家としてクリスティを挙げており、かなり意外だった。
絶対、ホラー色の強いシャーロック・ホームズ派だと思っていたので。
アガサ・クリスティは怖がりの私が唯一読めるミステリ作家である。
流血、怪談といったグロテスクさやゾクゾクする要素が少ない上に、人間の悲しい本性をしっかり描きながらも安心してワクワクさせてくれるのだ。
特にマープルシリーズは、ミス・マープルの上品さと穏やかさ、さらにはオールドミスならではの開けた視界が快い。
クリスティのシャイで繊細な性格がとてもよく表れた、デリケートなミステリーだと思う。
望むらくは、これを柴田元幸さんに訳していただくことだな。
この本の中で好きなのは「青いゼラニウム」。 -
困った。薦める言葉がない。
すべて書かれてしまっている。
冒頭、作者クリスティ自身によるまえがきと、
巻末、大矢博子氏による解説によって。
クリスティ作品と、ミス・マープルについて、その魅力から読みどころから、実にわかりやすく、かつ濃厚な文が書かれている。
初心者はへえと目をひらき、ファンはウムと合点すること請け合いだ。
とっととこの本を手にとって、それらに目を通すのがよい。
以上
以下蛇足。
私がクリスティ作品、なかでもミス・マープルのものでどれが好きか、どれを薦めるかといえば、『火曜クラブ』である。
『火曜クラブ』は早川版、創元推理文庫では『ミス・マープルと13の謎』の題である。
その理由といえば、
「だって、13編もあるんだよ!」
という他ない。
たいそうな話ではない、重大でもなく、大仰でもない事件と解決が13編。
これが面白いと言わずしてなんといおう。
ルース・レンデルは「クリスティは人間が書けていない」と言ったという。
確かにきっぱり否定はできない。
主人、執事、医者、女優・・・典型的な人物ばかりが登場するからだ。
けれども、本当にそうだろうか?
くだくだしく話の長い老嬢、
頭がからっぽの女優、
家政に疲れた主婦・・・・・・
典型的と見えたその人(たいがい女性だ)が、ふとした時に見せた違う面、
その鮮やかなひらめきに、私はいつも驚かされる。
アガサ・クリスティと、ルース・レンデルは、逆の手法で人間を描いているのだと思う。
まあ、後から生まれたレンデルにすれば、クリスティのむこうをはるのに、そうでも言わないと執筆できなかったのだろうけれど。
そしてこの表紙はすばらしかった。
ミスマープルが初登場の際、ありさまはこうだ。
『先祖伝来の大きな肘かけ椅子にまっすぐ背筋をのばして座ったミス・マープルは、ウェストまわりをぴちっと絞った黒いドレス――胸の前にはメクリン・レースが滝のようにたれかかっている――をまとい、手には黒いレースの指なし手袋、高くゆいあげた雪白の髪には、おなじく黒いレースのキャップをのせている。さいぜんから編み物の手を休めずにいるが、編んでいるのは、なにやら白くてやわらかな、ふわふわしたものだ。』 (12頁)
メクリン・レース? 指なし手袋??
すぐさま想像できなかったものが、そのままに描かれている。
なるほど、ヴィクトリア時代の婦人の姿はこうかと、すばらしい助けになった。
そんな色々を述べた後、繰り返しになるのだが、
とっととこの本を手にとって目を通すのが好い。