ポンド氏の逆説 (創元推理文庫 M チ 3-9)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488110093

感想・レビュー・書評

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  • 『詩人と狂人たち』の出来栄えに失望した私は本作に関してはチェスタトンコンプリート達成(当時出版されていた分に関して)のための一里塚として惰性的に本書を手にしたのだが、これが当たりだった。

    先に書いたようにブラウン神父シリーズでもチェスタトンが得意とする逆説を利用した短編は数多く収録されていたが、本書はその名の通り、逆説ばかりを集めたミステリ短編集である。
    ブラウン神父シリーズの時に若干この逆説に慣れというか、飽きにも似た感慨を抱いていたが、そんなときでもこの短編集に収録されている逆説は斬新さに溢れた煌めきがあった。
    どんな逆説か以下に挙げてみよう。

    「三人の騎士」:死刑執行の中止を伝える伝令が途中で死んでしまったために、囚人は釈放された。

    「博士の意見が一致すると・・・」:二人の男が完全に意見が一致したために、一人がもう一方を殺した。

    「道化師ポンド」:赤い鉛筆だったから、黒々と書けた。

    「名指せない名前」:国民から好かれていた思想家は政府から忌み嫌われていたが追放されなかった。

    「愛の指輪」:ガーガン大尉は誠実な人がゆえに、不必要な嘘をつく。

    「恐るべきロメオ」:明らかにその人だと思われる影法師ほど見間違えやすい物はない。

    「目立たないのっぽ」:背が高すぎるために目立たない。

    と、ちょっと読んだだけでは???と首を傾げる逆説ばかりだが、これらの逆説がポンド氏によって非常に合理的に解説される。
    中にはその逆説が成立する状況を想定しやすいものもあるが、そのほとんどは謎という魅力に満ちている。特に1編目の「三人の騎士」は「ああ、そういうことだったのか!」と膝を打ってしまった。そしてこの1篇で私はこの逆説ミステリ集に取り込まれてしまった。
    そして本書は最後に読んだだけあって、私の中でチェスタトンの評価を決定付けた作品集とも云える。最後が『詩人と狂人たち』だったら、今もこれほどにチェスタトンという名前は私の中に深く刻まれていたか、微妙ではある(でも『~童心』があるから、チェスタトンはやはり忘れられない作家ではあっただろうけど)。

    現在この作品は絶版だが、この作品と『奇商クラブ』はぜひとも復刊して、多くの人に読んで欲しい短編集だ。
    光文社が『木曜日だった男』みたいに古典新訳文庫で上梓してくれると一番いいのだが。

  •  逆説を用いた探偵小説。謎自体を抽出するならば探偵小説といえるのか? と疑問に思うのだが、そこは論客チェスタトン、みごとな探偵小説に仕上がっております。

     私のお気に入りは「愛の指輪」これは上手い!! そしてガラッと反転する展開、最後の最後まで気を抜けない。面白かった。

  • 読みにくい!とりあえずそんな感想。逆説集と銘打ってるだけあって色々な俄かには信じがたいような説が提示されて、最終的にはいつものあの語り口でなんとなく納得させられてしまうと言う感じ。まあ面白かったけどさ。とりあえず読みにくいって。

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