- Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488118105
感想・レビュー・書評
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ミステリ。フェル博士。
海外ミステリ、しかも、カーといえば、硬派なイメージもあるけど、今作は非常にコミカル。
オカルト風味、ロマンス、酒盛り、密室と、なんでもありな感じ。
個人的に大好きな作品である、バークリー『最上階の殺人』に近い雰囲気を感じた。
なかなかに自分好みな一冊でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ふらっと寄った古書店で見つけて迷わずに購入。
50年以上も前に翻訳されたものとあって、多少の読み辛さは覚悟していましたが、そんな心配どこ吹く風、すんなりと物語に入っていくことが出来ました。保険金絡みという馴染みある(?)設定も分かりやすくて良いですね。
今まで読んだカーの中でもとりわけ不可能性の強い密室でしたが、何度も言及され、その度に不可解性が増していくゲージの特性を活かしたトリックは(実現可能かはさて置いて)流石です。
原題には『自殺』という文字が入っているそうですが、ここら辺が難しいところで、どの死が自殺で、どれが他殺かという判断がとても難しい、カーの巧さが光る良作でした。 -
フェル博士もの。スコットランドにある怪しげな城で男が死んだ。男は塔の最上階から落下したのだが、ドアには鍵がかかっており、唯一の窓からは誰も侵入できない。しかし、男には自殺する理由がない。この密室事件に乗り出すフェル博士が導きだした真実は――。
面白かったんだけど、突出した部分があまりないせいか地味な印象がある。解説に書いてあったけれど、いろんな要素が盛り込まれている(殺人、ロマン、ユーモアなどなど)せいか、ごちゃごちゃがいいせいせいだと思う。逆にそれだけの要素を楽しめる作品ではあるので、バランスはとれている作品です。
推理小説部分だけで言えば、密室のバリエーションとしてこういう内容もありますね、というところ。オチもある程度わかったし、トリックも慎重になれば見破れるものだと思うので(もっとも、完璧には難しいですが)、悪くはなかったのですが良くなかったというところでしょうか。(当日の時代背景を知れば違うのかもしれませんが)
いろんな要素があり面白い作品でしたし、カー自身も代表作としている作品らしいです。 -
カーの怪奇趣味、ロマンス、ドタバタがかなり良い塩梅でちりばめられていて、面白かった。(特に、密造酒を飲み過ぎて二日酔いでフラフラになる辺りや、ヒロインとヒーローのロマンスの辺りが大好きだ!)
トリックはアレですが、それを差し引いてもストーリーと解決編の展開は充分面白い。
あまり「重さ」がない作品なので、カー初心者にもオススメできそうですね。 -
フェル博士シリーズです。
本書はファースとロマンスの色が濃く、明るい作品です。
物語は大学教授の史学上の論争から始まり、この2人の熱戦、冷戦は全編を通じて陰惨な事件の物語に陽気さを添えています。
そして、最悪な出会いをしたこの2人のロマンスも見所です。
怪奇趣味、ファース、ロマンスといったカーの要素が全て盛り込まれた本書はそれ故にカーの独特の雰囲気が濃厚でなく、いつもより控えめになっています。 -
おい、画像ねえじゃねえか!
カーさんの作品は2作目で、こんなドマイナーなのが手に入ったから読んだが、くっそ面白い。
ユーモア、怪奇、ガチな密室が織り交ぜられていて、食指をそそる。
人によっては、怪奇面たりねえよ、となるやもしれん。 -
相性最悪のご対面をした二人が
巻き込まれる奇怪な事件。
事件はその後連続しておきますが、
事件を起こす犯人という代物が
なかなか想像もつかないのがこの事件の特徴。
ただし、ひとつだけ重要なヒントが出てきて
大体の人物は消し去ることができますが、
誰がある人物なのかは…
まあ、この作品はミステリー以外のほうが
面白いかな。
乱痴気騒ぎで記憶ぶっ飛ばす人が
いるからねぇ。 -
カーの中では好きな部類の話でした。
カーの作品には多いですが、怪奇趣味が初めから安っぽくてギャグに近くなってるところが愛嬌があって、逆に好きです。 -
なんとも素っ気無い題名だが、実際のところ、この題名は正確ではない。原題は“The Case Of The Constant Suicides”といい、『連続自殺事件』が正しい題名。
スコットランドの田舎町にあるシャイラ城。この城には昔の城主が塔から自殺したという言い伝えがあった。しかもそれは亡霊によって起きたという別の言い伝えもあった。そしてまたキャンベル一族の長アンガス・キャンベル氏が塔から墜落死するという事件が起こる。事件当時、部屋は密室であったことから自殺のように思われたが、いくつかおかしい点があった。実はアンガスは直前に多額の生命保険に加入しており、自殺では保険が下りないこと。事件当夜に友人のフォーブスと言い争いをしていたこと、さらにベッドの下に見慣れない犬用のケースがあったこと。これらの状況から親族の間では他殺ではないかと思うようになり、知り合いのフェル博士に事件の調査を依頼する。
事件を再現しようと遺産相続人のコーリンが同じ状況で塔の頂上の部屋で一晩過ごすと、アンガスと同様に飛び降りてしまう。一命はとりとめたが、今度は容疑者であるフォーブスが自宅で首吊死体として発見される。
とこのように事件は全て自殺のような状況であり、これを考えると邦題はほとんどネタバレである。とはいえ、たいていのミステリ読者ならば人の死を扱った小説、しかもミステリが自殺で終るわけではないことは暗黙の了解であるから、タイトルが誤訳でしかもネタバレなどと糾弾するほどのものではない。
本作はよくカー入門書として最適だと云われている。事件の怪奇性に加え、カー特有のファルスも織り込まれており、さらには中心人物の男女2人によるラブコメ要素も盛り込まれていることから、カーのエッセンスが詰まった作品と云え、確かにその意見には頷けるところがある。
が、しかし本作には事件の解決に関わる致命的なミスがあり、これが当時でも話題になり、現在でもこの作品はその一点が汚点として残っている。
私も読んだ当初、この真相に対して不満を持った一人で、それが上の評価に表れている。もしカーを多数読んだ今、本作を読んだとしてもこれについてはカーだからという寛容さを示すことなく、今なお変わらない評価を下すだろう。
事件が不整合性を伴い、なんともちぐはぐな状況で起きたことが、実は被害者自身の意図が介入した故に起こったことという趣向は前に読んだ『緑のカプセルの謎』もそうだが、カーの作品には多数あり、それが傑作に繋がっている。つまりあくまで完全なロジックの構築で事件を解決したクイーンと違い、カーは登場人物をミステリを構成する駒ではなく、意思を持った人間として描いたからだろう。本作にもその考えが盛り込まれており、それが故、あたかも自殺事件が連続したかのように見えたという結果を生み出している妙味が味わえるだけに、このミスは非常に勿体無い。