紳士と月夜の晒し台 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
3.17
  • (0)
  • (18)
  • (21)
  • (8)
  • (1)
本棚登録 : 118
感想 : 31
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488127114

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 古き良き黄金時代のイギリス王道ミステリーです。驚異的な他殺体の発見から始まり、クリスティばりの人物表現とテンポの良い物語展開で黄金時代のミステリーを存分に堪能することができました!(笑)
    ある夜、村の巡査がパトロール中に発見したものは、村の広場に展示されている晒し台にのせられた紳士の刺殺体であった。事件を担当することになったハナサイド警視は大金持ちであった被害者の一族とその関係者に一通り面会するが、誰もに強い動機がありアリバイが無い状況であった。警視を翻弄する被害者一族であったが、そこに、第二の事件が発生して・・・。
    この物語は人物構成が上手くできていて、しかもその関係者同士の会話を通して事件と問題点を浮かび上がらせていくという、会話主体の進行と理解が絶妙な形で提示されていました。誰もが怪しく感じる容疑者たちですが、登場人物が一族とその周辺に限られるためそれほど多くなく、その分、個性豊かな人物描写ができたといえるでしょう。そんな人物たちがウィットに富み、時にはブラックユーモアを交えながら繰り出す事件についての深読みの会話は面白いことこの上ありませんでした。これは作者のなかなかの技量ですね。そんなわけで、誰もが怪しいのですが(笑)、ハナサイド警視ならず自分も翻弄されてしまって、一番目をつけていた容疑者はハズしてしましました。(笑)
    少しウィットに富み過ぎて、張り詰めた緊迫感に欠けると感じるのは仕方がないところでしょうか。これまでの経緯からして、ラストの神が宿ったとしか思えない真相解明の流れはちょっと手抜きなんじゃないかなあ。(笑)もう少し丁寧に演出してほしかった。
    殺された富豪一族内で発生するお互いの駆け引き・疑心暗鬼と、第二の事件というお約束な展開が嬉しい上質の推理小説です。

    • mkt99さん
      ブリジットさん、重ね重ねコメントありがとうございます!(^o^)

      ほう!警視とか警部とか、警察ってフランスが発祥なんですか!(驚)同じく無...
      ブリジットさん、重ね重ねコメントありがとうございます!(^o^)

      ほう!警視とか警部とか、警察ってフランスが発祥なんですか!(驚)同じく無知。(笑)

      そうなんですよねー。不安定な時代って何かと小説向きですよね。(笑)NHK大河ドラマでも、戦国と幕末はお約束ですしね!題材がいくらあっても足りない感じがあります。異次元の魅惑的な世界にどっぷりつかっているような感覚ですかね?(笑)
      2013/09/19
    • ブリジットさん
      この小説で解説はいってました(笑)
      それがただしければフランス発祥です、…のはずです!

      戦国と幕末が日本史2大巨頭ですよね~
      わたしも幕末...
      この小説で解説はいってました(笑)
      それがただしければフランス発祥です、…のはずです!

      戦国と幕末が日本史2大巨頭ですよね~
      わたしも幕末が好きなひとりです。どの人物に焦点をあてても面白い…いい時代です(笑)いろんな人物の小説を読むと、ほんとにどっぷりその世界にいるような気持ちになります❤人気あると小説多くて目移りしますね

      ほんと、コメントしまくって申し訳ないです…笑
      2013/09/21
    • mkt99さん
      ブリジットさん、こんばんわ。(^o^)/

      幕末は混乱期でいろいろなことがありましたから、ドラマになっても毎回違う視点で面白いですよね!今年...
      ブリジットさん、こんばんわ。(^o^)/

      幕末は混乱期でいろいろなことがありましたから、ドラマになっても毎回違う視点で面白いですよね!今年の大河ドラマの『八重の桜』もしっかりと観ています。(^^)幕末から明治にかけてが舞台で、会津が主役というのは『獅子の時代』以来のような気がしますが、新鮮な視点でなかなか面白いです。
      長崎というと、やはり一番人気は「海援隊」でしょうか?(笑)

      面白い会話ができてとても楽しいので、また遊びに来てください!(^o^)
      2013/09/21
  • 英国クラシックミステリ。

    邦題のタイトルそのまんま、実業家のアーノルドの刺殺体が晒し台(犯罪者を晒し者にするための中世の刑具。表紙のイラストが多分そうかと。)に乗せられた状態で発見されます。
    捜査に乗り出すハナサイド警視ですが、浮世離れした容疑者達に翻弄されるばかりで・・。

    殺されたアーノルドの腹違いの弟妹である、ケネスとアントニアがとにかく自由過ぎて(特にケネスが人を食ったキャラ)、このクセが強い面々がわちゃわちゃ大騒ぎを繰り広げる感じです。
    本書の著者の方は、元々ロマンス小説で有名みたいなので、その傾向が出ているかもです。
    アーノルドが死んで、遺産が手に入る事を臆面もなく喜ぶケネス達の前に思わぬ人物が現れて、さらに第二の殺人が起こった後から、ミステリ的に面白い展開になってきました。
    ただ、犯人は後半あたりから、予測がついちゃう感じです。あと、私としては、“何故死体が晒し台に乗せられていたのか?横溝正史作品ばりの見立て殺人なんかな?”と、ここが気になっていたのですが、結局あまり意味がなかったようで、ちょっと拍子抜けでした。
    因みに本書は“ハナサイド警視もの”の第一弾との事ですが、今回ハナサイド警視は翻弄されるばかりであまり活躍できませんでした。真相にたどり着いたのも、ケネス達の従兄弟で弁護士のジャイルズでしたしね。
    と、いうことで気が向いたら、“今度こそ”彼の活躍を期待して第二弾を読んでみるかもしれません。

  • イギリス黄金期のミステリ。
    1935年の作品。
    月夜の晩に、ロンドンから離れた村の広場で、紳士の死体が発見された。
    昔の晒し台に足を突っ込んで状態で。
    アントニア(トニー)というヒロインのイメージが強いので、最初はヒロインもののミステリ、コージー系と分類しましたが…いや?
    探偵役は、シリーズ物(1作目)としては、ハナサイド警部。
    今回のホームズ役は、アントニアの従兄で弁護士のジャイルズが活躍という。
    警部とジャイルズが親しくなってしまうのは、現代ならアウトだろうな~。

    恵まれた育ちだが大金持ちというわけではない兄ケネス・ヴェレカーと妹のアントニア。
    腹違いの兄アーノルドが、ほとんどの財産を継いでいたのだ。
    ケネスは画家で才能もあるが、年中ふざけたことばかり言っていて、嫌っていた異母兄の殺人事件にも動じず、財産を継げることを喜び、仮定として様々な推理を繰り広げる。
    浮世離れした態度に、周囲は呆れたり戸惑ったり煙に巻かれたり。
    妹のアントニアもぶっ飛んでいるが、兄よりは無邪気で率直。
    しかし婚約者に疑いがかかっても、殺したとしても気にしないという始末。
    アントニアは異母兄に婚約を反対されたために怒って車で駆けつけ、誰もいなかった別荘で一人でくつろいでいたのだ。
    つまり現場の田舎町にいたわけだが。
    ほかにも次々に怪しい人物が登場。容疑者には事欠かない事件。
    果たして真相は?
    ミステリ読みなら難しくはないけど、本格物として十分楽しめます。

    同時期のセイヤーズやクリスティにちょっと似た部分があり、古きよき時代を思わせ、ゆったりしていてユーモラス。
    いかれた連中のお喋りで笑わせるあたりは、クレイグ・ライスも思わせます。
    わかりやすくて、ロマンス物作家としても有名だというのも納得。ヒストリカル・ロマンスの草分けだそうです。

  • イギリスの作家「ジョージェット・ヘイヤー」の長篇ミステリ作品『紳士と月夜の晒し台(原題:Death in the Stocks、米題:Where There's a Will)』を読みました。
    「ジェフリー・アーチャー」、「マージェリー・アリンガム」、「エレナー・アップデール」、「エリス・ピーターズ」に続き、イギリスの作家の作品です。

    -----story-------------
    月夜の晩、ロンドンから離れた村の広場で、晒し台に両足を突っ込んだ紳士の刺殺体が発見された。
    動機を持つ者にはこと欠かないが、浮世離れした容疑者たちを前に、「ハナサイド警視」は苦戦する。
    そんなとき、思わぬ事態が発生して……。
    ヒストリカル・ロマンスの大家として知られる一方、「セイヤーズ」も認めた力量を持つ著者による、巧みな人物描写と緻密なプロットの傑作本格ミステリ。
    解説=「福井健太」

    *第7位『2012本格ミステリ・ベスト10』海外ランキング
    -----------------------

    1935年(昭和10年)に発表された「ハナサイド警視」シリーズの第1作にあたる作品です… 本国発表後から76年後の2011年(平成23年)に邦訳されて、『2012本格ミステリ・ベスト10』の海外ランキング7位となった作品です。


    月夜の晩にアシュリー・グリーン村で発見されたのは、古い晒し台に両足を突っ込んだ男… 実業家「アーノルド・ヴェレカー」の刺殺体だった、、、

    「アーノルド」のコテージを訪れた警官たちは被害者の異母妹「アントニア(トニー)・ヴェレカー」に出逢い、「アントニア」は従兄弟の弁護士「ジャイルズ・キャリントン」に助けを求める… スコットランド・ヤードの「ハナサイド警視」は捜査を開始し、被害者が「アントニア」の結婚に反対していたこと、「アーノルド」の異母弟「ケネス・ヴェレカー」の結婚資金援助を拒否していたこと、「アーノルド」の多額の遺産は「ケネス」が相続する見込みであること等を突き止める。

    しかし、話はそれだけでは済まなかった… 事件当日に解雇されていた運転手「ジャクソン」、被害者と逢っていた謎の男をはじめとして、容疑者が次々と浮上したのである、、、

    そして、7年前に南米で死亡したと思われていた「アーノルド」の実弟「ロジャー」が現われ、「アーノルド」の相続人となったことから疑惑の眼を向けられるが… 「ロジャー」も拳銃自殺に見せかけられて殺害される!? スコットランド・ヤードの捜査が手をこまねく中、「ジャイルズ」は独自に推理を進める……。


    素人探偵役となりスコットランド・ヤードの捜査状況を確認したり、捜査の進め方に口を出す「ジャイルズ」が怪しいなぁ… と思いながら読み進めましたが、推理は外れちゃいましたね、、、

    本格ミステリとしては物足りずインパクトに欠ける印象ですが… 恋愛模様も巧く織り交ぜた展開や巧みな人物描写、テンポ良い会話が愉しめる読みやすい作品でした。


    以下、主な登場人物です。

    「ケネス・ヴェレカー」
     画家

    「アントニア(トニー)・ヴェレカー」
     ケレスの妹

    「アーノルド・ヴェレカー」
     ケネスとアントニアの異母兄。<シャンヒルズ鉱業>会長兼社長

    「ロジャー・ヴェレカー」
     ケネスとアントニアの異母兄。

    「ジャイルズ・キャリントン」
     ケネスたちの従兄弟。弁護士

    「ヴァイオレット・ウィリアムズ」
     ケネスの婚約者

    「ルドルフ・メジャラー」
     アントニアの婚約者。<シャンヒルズ鉱業>会計主任

    「レスリー・リヴァース」
     ケネスとアントニアの幼なじみ

    「マーガトロイド」
     ケネスとアントニア宅の家政婦

    「ジャクソン」
     アーノルドの運転手

    「ハナサイド」
     スコットランド・ヤードの警視

    「ヘミングウェイ」
     スコットランド・ヤードの部長刑事

  • 裕福な紳士が晒し台に乗せられた刺殺体となって発見された。曲者揃いの遺産相続人や婚約者達に終始翻弄されるハナサイド警視。そして第二の殺人が。それにしてもハナサイド警視、全くいいところなし…。晒し台に乗せられていた理由に注目していたので、この結果については残念だった。遺産をめぐる人間模様や、少し奇抜な会話で楽しませるのは、さすがロマンス界の大家といった感じ。

  • 発端の怪奇性に対して、結末の意外性が弱く、ミステリとしてはやや薄味。ただ、たくさんのおかしな人物やロマンス部分など、物語としては十分に楽しめた。

  • 映像化したら、おもしろそうなお話。ただ、登場人物は、かなり騒がしい。

  • 3- 

    減らず口達が巻き込まれた騒々しい災難。

    何故晒し台に遺体が?といういかにも面白くなりそうな魅力的な謎を持って始まる物語だが、あまりその部分には焦点が当てられず謎解きものとして読むと肩すかしをくらう。容疑者が何人も登場するが、その誰にでも動機がありアリバイはない、だから捜査が難航している、という図式なのだが、読み手はこの中に犯人はいないと確信しているのでこれもさほど意味はない。減らず口どものキャラクターを楽しめれば良し、彼らのドタバタが楽しめればなお良し。

  • ドロシー・セイヤーズが認めたという触れ込みにつられて読んだ作品です。晒し台に固定された状態で殺されていた大富豪。敵を作る名人と言われた彼を殺したのは、現場近くにいた腹違いの妹か、遺産を手にできる腹違いの弟か、それとも…?
    本格ミステリを期待すると空振りします。作品中でも言われてますが、こういう単純な事件の方が犯人を見つけにくい。だったらまずは特異な点から追っていくべきところを最後までほぼ放置してます。犯人もわりと早い段階で目星をつけられる読者が多いんじゃないでしょうか。そんな簡単にいくわけはないだろうと期待しすぎて、無駄に「塩漬けアーモンドがなくなったことが後で鍵になるに違いない」なんて思ってました。全く関係なかったですけど。
    楽しむポイントは常識からかけ離れた関係者と、逆に常識人な顧問弁護士&警部の対比。変わり者の会話だけだと鬱陶しくなりそうなものですが、常識人のまともな会話にほっとします。常識人たちが振り回されすぎないのもよいです。意外性というのならば、探偵役になる人物の割り当てですかね。普通に警部が解決するものだと思って読んでましたから。展開は早いけれど、ユーモラスなロマンスは好感が持てます。さすが元々ロマンス作家。
    謎解きは二の次、ストーリーを楽しむミステリも大好きなんですが、登場人物たちの性格をつかむまでに時間がかかってしまいイマイチのめり込めず。エキセントリックさか、雰囲気か、もうちょっとインパクトが欲しかったです。

  • 2012/09/01読了

全31件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1902年、英国ウィンブルドン生まれ。1921年にThe Black Mothで作家デビュー。歴史小説やスリラー、ミステリと幅広い執筆活動を展開し、日本でも「悪魔公爵の子」(1932)や「紳士と月夜の晒し台」(35)、「グレイストーンズ屋敷殺人事件」(38)、「令嬢ヴェネシア」(58)などが訳されている。1974年死去。

「2023年 『やかましい遺産争族』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジョージェット・ヘイヤーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×