待っている チャンドラー短編全集 (3) 創元推理文庫 (131‐5) (創元推理文庫 131-5 チャンドラー短編全集 3)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488131050

感想・レビュー・書評

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  • 『ビンゴ教授の嗅ぎ薬』は異色だというので、マーロウものを書く作家の「異色」とは何ぞや、と不思議に思いながら読んだが、なるほど、異色だった。
    マーロウもの以外なら、一番好きかもしれない。

  • チャンドラー短編集その3

    「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」など、毛色の変わった作品が多い
    「犬が好きだった男」ではどっかでみた、赤毛の「レッド」が登場。「さらば愛しき人よ」の前身作品だったのかな?
    「真珠は困りもの」はチャンドラーにしては後味の良い、爽やかさがあって好きです

  • 「ベイ・シティ・ブルース」
    タフガイ、ディ・スペインが犯人。

    「真珠は困りもの」では、老婦人の盗まれた真珠の首飾りを探すことになった主人公。事件の最中に出会った気の良い大男とやはりコンビを組む。二人ともナイスガイ、魅力的なキャラクター造りに成功している。情のある会話も素敵。

    「犬が好きだった男」は失踪した娘を、娘の好きだった犬を手がかりにして探す探偵カーマディの話し。獣医、強盗犯、精神病院、カジノ船と目まぐるしく場面が展開していく。「さらば、愛しき人よ」の素材が多い佳作。

    「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」は、推理小説物ではなく、透明人間になり、妻の浮気相手を殺してしまう話し。「あの人もう10年前に死んでいたんですよ」

    「待っている」は、夜のホテルを舞台にした感傷的な作品。
    女イブ・クレッシーは出所している男を待っているが…そこで事件は起きて。

    佳作ばかりの良い作品です。
    やっぱり表題作が味わい深い。

  • 「レイモンド・チャンドラー」のミステリー作品集『チャンドラー短編全集3 待っている(原題:I'll be Waiting and Other Stories)』を読みました。

    久しぶりにミステリ作品を読みたくなったんですよね。

    -----story-------------
    ●「大沢在昌」氏推薦――「大人の女の恋と諦念、大人の男の優しさ」(ミステリーズ!Vol.01)

    タフでなければ生きていけない、優しくなければ生きている資格がない。
    ロスアンジェルスのネオンの中を無鉄砲に、しかし一抹の感傷を抱いて歩む主人公「フィリップ・マーロウ」。
    その「マーロウ」に現代人の一典型を見出し、彼の魅力にひかれる読者は多い。
    本書は「マーロウ」ものを含めた中編、『ベイ・シティ・ブルース』、『真珠は困りもの』、『犬が好きだった男』異色短編『ビンゴ教授の嗅ぎ薬』そして『待っている』を収録。
    -----------------------

    「レイモンド・チャンドラー」の中篇、短篇を収録した日本独自の編纂版です、、、

    1936年(昭和11年)から1951年(昭和26年)に発表された5篇を収録… 「レイモンド・チャンドラー」作品は初めて読みましたが、独特な世界観があって、なかなか面白かったですね。

     ■ベイ・シティ・ブルース(原題:Bay City Blues)1938年 ダイム・ディテクティヴ・マンスリー誌
     ■真珠は困りもの(原題:Pearls are a Nuisance)1939年 ダイム・ディテクティヴ・マンスリー誌
     ■犬が好きだった男(原題:The Man who Liked Dogs)1936年 ブラック・マスク誌
     ■ビンゴ教授の嗅ぎ薬(原題:Proffessor Bingo's Snuff)1951年 パーク・イースト誌(米)/ゴー誌(英)同時発表
     ■待っている(原題:I'll be Waiting)1939年 サタデイ・イヴニング・ポスト誌
     ■訳者あとがき 稲葉明雄

    『ベイ・シティ・ブルース』は、「オーストラリアン夫人」が自宅ガレージで一酸化炭素中毒により自殺した「オーストラリアン事件」の捜査を、第一発見者の「ハリイ・マトスン」から私立探偵「フィリップ・マーロウ」が捜査を依頼される物語、、、

    「マーロウ」は、何者かの脅威に身の危険を感じて古びたおんぼろアパート、テニアン・アームズ荘に潜んでいた「ハリイ・マトスン」と接触を図ろうとするが、接触する直前に彼は殺害され、重要人物と思われる「ハリイ・マトスン」の元妻で「オーストラリアン医師」に看護師として雇われていた「ヘレン・マトスン」への接触を試みるが、彼女も殺害されてしまう… さらに「ヘレン・マトスン」の殺害容疑は「マーロウ」に向けられてしまう。

    「マーロウ」は、警官「ディ・スペイン」と協力して捜査を進め、容疑者を追い詰めて行き、真相が判明したかに思えたが… 最後の最後で「ディ・スペイン」が第三の殺人に関わっており、自らの犯罪を隠ぺいするために「マーロウ」と連携したことが判明するという大どんでん返し。

    3つの殺人事件の犯人が別々で、さらに犯人を庇うために「オーストラリアン医師」が偽証していたりして複雑な展開… 僅か100ページ強の中篇でしたが、なかなか重厚な内容でしたね。


    『真珠は困りもの』は、「ペンラドック夫人」の真珠の首飾り盗難事件の捜査を、飲んだくれの私立探偵「ウォルター・ゲイジ」が、彼の婚約者で「ペンラドック夫人」の付き添い看護婦「エレン・マッキントッシュ」から依頼される物語、、、

    「ペンラドック夫人」は、夫が亡くなったあと家計を維持するために真珠の首飾りを宝石商の「ランシング・ガリモア」に引き取ってもらっており、自分が保有していた首飾りは、その際に造ってもらった精巧なイミテーションだった… 「ペンラドック夫人」はイミテーションであることが発覚するのを懼れていた。

    犯人と目されるのは、「ペンラドック夫人」の元運転手で一昨日に辞めてしまった「ヘンリー・アイケルバーガー」… 「ゲイジ」は、「アイケルバーガー」の居場所を突き止め、真相を吐かせようとするが失敗、、、

    しかし、その後、大酒飲みの二人は酒好きということで意気投合し、二人で大いに飲んで、協力して真珠の首飾りを取り戻そうとする… 捜査を進めるうちに、イミテーションと思われていた真珠の首飾りは、実は本物であった(宝石商「ガリモア」がイミテーションと偽って、本物を返していた)ことが判明、そして、厚い友情が芽生えた二人に無情な結末が。

    でも、結果的には真珠の首飾りは取り戻せたし、二人の友情も破綻しなかった(多分)ので、ハッピーエンドだったのかな。


    『犬が好きだった男』は、私立探偵「カーマディ」が愛犬「フォス」とともに行方不明となった女性「イザベル・スネア」の捜索を同居する大伯母から依頼される物語、、、

    「カーマディ」が麻薬を注射されて病院に監禁されたり、その病院と賭博船モンティシート号での二度に渡る派手で激しい銃撃戦等、ハードな内容が目立つ作品でした… 銀行荒らしの「ジェリー(ファーマー)・セイント」とその妹「ダイアナ」、元警官で船乗りの「レッド」といった特徴的なキャラクターが印象的でしたね。

    それにしても… 「イザベル・スネア」が、まさか「ジェリー(ファーマー)・セイント」の妻で、自らの意思で一緒に過ごしていたとは、、、

    想定外のエンディングでしたね… 後に私立探偵「フィリップ・マーロウ」を主人公とする長編シリーズの第2作『さらば愛しき女よ(原題:Farewell, My Lovely)』の骨子となった作品らしいです。


    『ビンゴ教授の嗅ぎ薬』は、「オーガスタス・ビンゴ教授」から入手した嗅ぎ薬の見本を使って透明人間となった「ジョウ・ペティグルー」が、妻「グラディス」と不倫関係にあり妻を絞殺した「ポーター・グリーン」を銃殺後、室内を密室状態にして完全犯罪を目論む物語、、、

    透明人間になったとき自分にだけ見える「ジョゼフ」という分身(幻影?)の登場や、
    謎だらけの「ビンゴ教授」と嗅ぎ薬、
    「ビンゴ教授」がエンディングで発する
     「ペティグルーさんも可哀想な人だ。あの人は、ほんとうは十年前から死んでいたのですよ。
     自分で、そうとは知らなかっただけでね」
    という謎めいた言葉、等々に象徴されるように、ちょっと奇妙な物語… 幻想譚でしたね。


    『待っている』は、ウィンダミア・ホテルの最上階の部屋に宿泊して5日間も外出しない女性「イヴ・クレッシー」… 彼女のことが気になっていたホテル探偵「トニー・リゼック」は、ギャングの「アル」からホテルの外に呼び出され、「イヴ」を探している男「ジョニー・ロールズ」を捕らえるために「女をホテルから出せ」と脅されるが、「ジョニー」が同じホテルに宿泊していることに気付いた「トニー」は彼を逃がそうとする物語、、、

    「トニー」は「ジョニー」の部屋へ行き、状況を伝え、地下の駐車場から逃げるよう促がす… 「アル」は、それを予感して待ち伏せており、「ジョニー」は「アル」に追い詰められる。

    しかし、結果的には、「アル」が「ジョニー」の逆襲にあい銃殺されてしまう、、、

    うーん、「トニー」が良かれと思ってした行動が後に思わぬ悲劇を起こしてしまったというエンディング… 何ともいえない切なく重い余韻が残りましたね。

    実はこのエンディング、訳者によって数パターンの解釈があるらしく、、、

    殺されたのは「アル」ではなく「ジョニー」だったり、二人とも死んだり という解釈や、

    「トニー」と「アル」が兄弟という設定で、エンディングの悲劇がより切なく重い解釈等があるようです… 英語って難しいですね。

  • こんなに面白い本をなぜ数年間も読まずに放って
    おいたのか・・・

  • 大沢在昌選文庫ベスト3

  • 東京創元社によるオリジナル短編集第3集。
    収録作は「ベイ・シティ・ブルース」、「真珠は困りもの」、「犬が大好きだった男」、「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」、表題作の短編5編。

    「ベイシティ・ブルース」は特に上昇志向が強く、降格された恨みから犯罪まで犯すド・スペインのキャラクターの濃さは本短編集でも異彩を放つ。

    「真珠は困りもの」は恐らく親の遺産で悠々自適に暮らしているウォルター・ゲイジが婚約者の依頼で探偵を務める話。
    このウォルターが坊ちゃんで、自意識過剰、自信家なところが他のチャンドラーの主人公と大いに違い、逆に他の短編に比べて特色が出た。特にウォルターがいきなり盗難の犯人と目したヘンリーに真珠が模造である事を話すところなど素人丸出しで、チャンドラーが他の探偵とウォルターをきちんと書き分けていることがよく解る。

    「犬が大好きだった男」は失踪した娘の捜索を頼まれたカーマディが唯一の手掛かりとしてその娘が連れていた犬を追って、獣医、強盗犯、精神病院へと次々と場面展開していく。死人も多く、激しい銃撃戦もあり、一番ハードな作品。しかもカーマディが麻薬を打たれて病院に監禁されてしまうシーンは確か長編でもあったように記憶しているがどの作品だったのか思い出せない。ロスマクのアーチャー物でも同様のシーンがあったように思うのだが。

    「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」はその題名から本格ミステリを早期させるが違う。これもうだつの上がらない亭主が主人公で、彼がビンゴ教授と名乗る奇妙な紳士から、嗅ぐと透明になるという嗅ぎ薬を手に入れる話。その透明になる薬を利用して妻の浮気相手を殺すのだが、そこから通常の透明人間譚とは違った全く予想外の展開を成す。チャンドラーは警察というのは本格ミステリに描かれるようにおバカではなく、そう簡単に容疑者を信じたりするものではなく、あくまで問い詰め、とことんまで追い詰める手強い相手としている。そして自説が間違っている事に気づいても決してそれを認めないのだというアンチテーゼを示したのだとも考えられる。密室殺人とファンタジー風味の透明になれる薬をチャンドラーがブレンドするとこんな話になるのだ。

    「待っている」は一夜の出来事を語った物語。それぞれの人物が何かを待っている。静かな夜に流れるラジオの音楽など、ムードは満点。限られた空間で起こる一夜の悲劇。それはトニーをこの上なくやるせない気持ちにさせる。その夜、トニーは兄を失ったが、代わりに何かを得たのか?それは解らない。

    本書に収録された作品は実にヴァラエティに富んでおり、収録作には外れがない。通常のプライヴェート・アイ物もそれぞれの探偵に特色があり、面白い(特に「真珠は困りもの」のウォルター・ゲイジが秀逸)。チャンドラーらしくない「ビンゴ教授~」もアクセントになっていて、全4冊の短編集の中でこれがベスト。チャンドラーも意外と手札を持っているのが解る作品集だ。

  • マーロウものの中編は安定した面白さがある。真珠の話はえらくほのぼのしているように感じた。おおらかな時代だな。嗅ぎ薬は何がやりたかったのかよくわからん。締めは秀逸なだけに残念。チャンドラーに短編は向いてない気がする。

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著者プロフィール

Raymond Chandler
1888年シカゴ生まれの小説家・脚本家。
12歳で英国に渡り帰化。24歳で米国に戻る。作品は多彩なスラングが特徴の一つであるが、彼自身はアメリカン・イングリッシュを外国語のように学んだ、スラングなどを作品に使う場合慎重に吟味なければならなかった、と語っている。なお、米国籍に戻ったのは本作『ザ・ロング・グッドバイ』を発表した後のこと。
1933年にパルプ・マガジン『ブラック・マスク』に「脅迫者は撃たない」を寄稿して作家デビュー。1939年には長編『大いなる眠り』を発表し、私立探偵フィリップ・マーロウを生み出す。翌年には『さらば愛しき女よ』、1942年に『高い窓』、1943年に『湖中の女』、1949年に『かわいい女』、そして、1953年に『ザ・ロング・グッドバイ』を発表する。1958 年刊行の『プレイバック』を含め、長編は全て日本で翻訳されている。1959年、死去。

「2024年 『プレイバック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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