待っている チャンドラー短編全集 (3) 創元推理文庫 (131‐5) (創元推理文庫 131-5 チャンドラー短編全集 3)
- 東京創元社 (1968年8月8日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488131050
感想・レビュー・書評
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『ビンゴ教授の嗅ぎ薬』は異色だというので、マーロウものを書く作家の「異色」とは何ぞや、と不思議に思いながら読んだが、なるほど、異色だった。
マーロウもの以外なら、一番好きかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
チャンドラー短編集その3
「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」など、毛色の変わった作品が多い
「犬が好きだった男」ではどっかでみた、赤毛の「レッド」が登場。「さらば愛しき人よ」の前身作品だったのかな?
「真珠は困りもの」はチャンドラーにしては後味の良い、爽やかさがあって好きです -
「レイモンド・チャンドラー」のミステリー作品集『チャンドラー短編全集3 待っている(原題:I'll be Waiting and Other Stories)』を読みました。
久しぶりにミステリ作品を読みたくなったんですよね。
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●「大沢在昌」氏推薦――「大人の女の恋と諦念、大人の男の優しさ」(ミステリーズ!Vol.01)
タフでなければ生きていけない、優しくなければ生きている資格がない。
ロスアンジェルスのネオンの中を無鉄砲に、しかし一抹の感傷を抱いて歩む主人公「フィリップ・マーロウ」。
その「マーロウ」に現代人の一典型を見出し、彼の魅力にひかれる読者は多い。
本書は「マーロウ」ものを含めた中編、『ベイ・シティ・ブルース』、『真珠は困りもの』、『犬が好きだった男』異色短編『ビンゴ教授の嗅ぎ薬』そして『待っている』を収録。
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「レイモンド・チャンドラー」の中篇、短篇を収録した日本独自の編纂版です、、、
1936年(昭和11年)から1951年(昭和26年)に発表された5篇を収録… 「レイモンド・チャンドラー」作品は初めて読みましたが、独特な世界観があって、なかなか面白かったですね。
■ベイ・シティ・ブルース(原題:Bay City Blues)1938年 ダイム・ディテクティヴ・マンスリー誌
■真珠は困りもの(原題:Pearls are a Nuisance)1939年 ダイム・ディテクティヴ・マンスリー誌
■犬が好きだった男(原題:The Man who Liked Dogs)1936年 ブラック・マスク誌
■ビンゴ教授の嗅ぎ薬(原題:Proffessor Bingo's Snuff)1951年 パーク・イースト誌(米)/ゴー誌(英)同時発表
■待っている(原題:I'll be Waiting)1939年 サタデイ・イヴニング・ポスト誌
■訳者あとがき 稲葉明雄
『ベイ・シティ・ブルース』は、「オーストラリアン夫人」が自宅ガレージで一酸化炭素中毒により自殺した「オーストラリアン事件」の捜査を、第一発見者の「ハリイ・マトスン」から私立探偵「フィリップ・マーロウ」が捜査を依頼される物語、、、
「マーロウ」は、何者かの脅威に身の危険を感じて古びたおんぼろアパート、テニアン・アームズ荘に潜んでいた「ハリイ・マトスン」と接触を図ろうとするが、接触する直前に彼は殺害され、重要人物と思われる「ハリイ・マトスン」の元妻で「オーストラリアン医師」に看護師として雇われていた「ヘレン・マトスン」への接触を試みるが、彼女も殺害されてしまう… さらに「ヘレン・マトスン」の殺害容疑は「マーロウ」に向けられてしまう。
「マーロウ」は、警官「ディ・スペイン」と協力して捜査を進め、容疑者を追い詰めて行き、真相が判明したかに思えたが… 最後の最後で「ディ・スペイン」が第三の殺人に関わっており、自らの犯罪を隠ぺいするために「マーロウ」と連携したことが判明するという大どんでん返し。
3つの殺人事件の犯人が別々で、さらに犯人を庇うために「オーストラリアン医師」が偽証していたりして複雑な展開… 僅か100ページ強の中篇でしたが、なかなか重厚な内容でしたね。
『真珠は困りもの』は、「ペンラドック夫人」の真珠の首飾り盗難事件の捜査を、飲んだくれの私立探偵「ウォルター・ゲイジ」が、彼の婚約者で「ペンラドック夫人」の付き添い看護婦「エレン・マッキントッシュ」から依頼される物語、、、
「ペンラドック夫人」は、夫が亡くなったあと家計を維持するために真珠の首飾りを宝石商の「ランシング・ガリモア」に引き取ってもらっており、自分が保有していた首飾りは、その際に造ってもらった精巧なイミテーションだった… 「ペンラドック夫人」はイミテーションであることが発覚するのを懼れていた。
犯人と目されるのは、「ペンラドック夫人」の元運転手で一昨日に辞めてしまった「ヘンリー・アイケルバーガー」… 「ゲイジ」は、「アイケルバーガー」の居場所を突き止め、真相を吐かせようとするが失敗、、、
しかし、その後、大酒飲みの二人は酒好きということで意気投合し、二人で大いに飲んで、協力して真珠の首飾りを取り戻そうとする… 捜査を進めるうちに、イミテーションと思われていた真珠の首飾りは、実は本物であった(宝石商「ガリモア」がイミテーションと偽って、本物を返していた)ことが判明、そして、厚い友情が芽生えた二人に無情な結末が。
でも、結果的には真珠の首飾りは取り戻せたし、二人の友情も破綻しなかった(多分)ので、ハッピーエンドだったのかな。
『犬が好きだった男』は、私立探偵「カーマディ」が愛犬「フォス」とともに行方不明となった女性「イザベル・スネア」の捜索を同居する大伯母から依頼される物語、、、
「カーマディ」が麻薬を注射されて病院に監禁されたり、その病院と賭博船モンティシート号での二度に渡る派手で激しい銃撃戦等、ハードな内容が目立つ作品でした… 銀行荒らしの「ジェリー(ファーマー)・セイント」とその妹「ダイアナ」、元警官で船乗りの「レッド」といった特徴的なキャラクターが印象的でしたね。
それにしても… 「イザベル・スネア」が、まさか「ジェリー(ファーマー)・セイント」の妻で、自らの意思で一緒に過ごしていたとは、、、
想定外のエンディングでしたね… 後に私立探偵「フィリップ・マーロウ」を主人公とする長編シリーズの第2作『さらば愛しき女よ(原題:Farewell, My Lovely)』の骨子となった作品らしいです。
『ビンゴ教授の嗅ぎ薬』は、「オーガスタス・ビンゴ教授」から入手した嗅ぎ薬の見本を使って透明人間となった「ジョウ・ペティグルー」が、妻「グラディス」と不倫関係にあり妻を絞殺した「ポーター・グリーン」を銃殺後、室内を密室状態にして完全犯罪を目論む物語、、、
透明人間になったとき自分にだけ見える「ジョゼフ」という分身(幻影?)の登場や、
謎だらけの「ビンゴ教授」と嗅ぎ薬、
「ビンゴ教授」がエンディングで発する
「ペティグルーさんも可哀想な人だ。あの人は、ほんとうは十年前から死んでいたのですよ。
自分で、そうとは知らなかっただけでね」
という謎めいた言葉、等々に象徴されるように、ちょっと奇妙な物語… 幻想譚でしたね。
『待っている』は、ウィンダミア・ホテルの最上階の部屋に宿泊して5日間も外出しない女性「イヴ・クレッシー」… 彼女のことが気になっていたホテル探偵「トニー・リゼック」は、ギャングの「アル」からホテルの外に呼び出され、「イヴ」を探している男「ジョニー・ロールズ」を捕らえるために「女をホテルから出せ」と脅されるが、「ジョニー」が同じホテルに宿泊していることに気付いた「トニー」は彼を逃がそうとする物語、、、
「トニー」は「ジョニー」の部屋へ行き、状況を伝え、地下の駐車場から逃げるよう促がす… 「アル」は、それを予感して待ち伏せており、「ジョニー」は「アル」に追い詰められる。
しかし、結果的には、「アル」が「ジョニー」の逆襲にあい銃殺されてしまう、、、
うーん、「トニー」が良かれと思ってした行動が後に思わぬ悲劇を起こしてしまったというエンディング… 何ともいえない切なく重い余韻が残りましたね。
実はこのエンディング、訳者によって数パターンの解釈があるらしく、、、
殺されたのは「アル」ではなく「ジョニー」だったり、二人とも死んだり という解釈や、
「トニー」と「アル」が兄弟という設定で、エンディングの悲劇がより切なく重い解釈等があるようです… 英語って難しいですね。 -
こんなに面白い本をなぜ数年間も読まずに放って
おいたのか・・・ -
大沢在昌選文庫ベスト3
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マーロウものの中編は安定した面白さがある。真珠の話はえらくほのぼのしているように感じた。おおらかな時代だな。嗅ぎ薬は何がやりたかったのかよくわからん。締めは秀逸なだけに残念。チャンドラーに短編は向いてない気がする。