壊れた世界で彼は (創元推理文庫 Mヘ 20-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488162061

作品紹介・あらすじ

真夜中、小さな町で立てこもり事件が発生した。一般家庭に銃を持った男数名が侵入したという。刑事ニックが現場に到着すると、家から大音量で音楽が流れ、爆発音が続いた。狙撃班が銃弾を浴びせ、機動隊が突入し、妻と娘たちを救出。だが家には犯人5名の遺体はあったが、夫の姿がなかった。警察は、犯人の一人が夫を人質にして逃亡したと考え、大規模な捜索を開始する。謎めいた行動を取る犯人の目的とは――。『死んだレモン』の著者が贈る意外性抜群の衝撃作!

感想・レビュー・書評

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  •  『死んだレモン』で衝撃的翻訳デビューを果たしたフィン・ベルは、作風もオリジナリティ豊か、発想も豊かだが、相当に毛色の変わった作家である。1978年アフリカ生まれ。ふうむ、若い! 法心理学者で受刑者のカウンセラー。ふうむ、やるな。ニュージーランドへ移住。思い切った人生転換。毛色の変わった作家だが、『死んだレモン』も電子書籍で自費出版したと言う。コロナの時代、作家になるのも新手の手法が出現しているとは驚愕の至り。それでもニュージーランド国内のミステリー文学賞を受賞しているのだ。強引だが個性的な作品が受けたのだろう。本業の知識経験ももちろん作品の材料になっているように思う。

     それは本作でもまさにそう思う。ミステリーのようであり、秘境アドベンチャー小説のようでもあり、本格ミステリーみたいな意外性たっぷりな結末と言い、小説の作り方は上手だし、精神の世界に踏み込んでのキャラクター間の会話が何だか意味深い。とりわけ語り手の主人公ニックと先輩刑事トーブの間の語りは本書の前半の読みどころになっている。

     舞台は金鉱採掘の時代を終えたトンネルだらけの南島の僻村。南と言っても反対側の半球であり、南極大陸に限りなく近い島。季節は初冬。雪だ。中国系移民家族所有の孤立した農場。犯罪者に人質となっている一家。包囲する無数の警官。そんなクライマックスみたいな状況で本書は開幕する。そして直後の爆発。ギャングたちの死体。行方をくらました一部のマフィア。その人質となった父親ジェイムズ・チェン。彼らを追う組織犯罪対策本部の我らがヒーローズ二人。

     ニュージーランドが金山で賑わった歴史にも触れつつ、古い坑道を舞台にしたシーンがほとんどでありながら、不可解な事件の背景への推理も二転三転する。坑道の中で展開するアクションと推理劇。そして主人公ニックと救出される側の中国系開拓者の末裔ジェイムズの二人の葛藤劇。小説というよりも舞台劇みたいで、動きがあるようでなく、静かな独白の多い坑道内部での描写。その息苦しさを読者は味わわなくてはならない。

     作中の大半を占める暗黒と寒さと迫りくる吹雪と追走劇。ギャングとの対決アクションや、部分崩壊をする古い坑道の恐怖などなど、気が休まる時間がほとんどないままに独白が展開する。この物語はどこに向かうのか、不安さえ感じるが、最後にはしっかり決着をつける。この決着について読者がどう感じるかは、それぞれだと思うが、ミステリーとしての意外性と、結末のどんでん返しなどは娯楽小説としてしっかり用意されているのでご安心を。

     しかし、ミステリー内容はともかく、ラストに至る長々とした描写が、辛かった。インディー・ジョーンズが出てきそうなほど非現実的なアドベンチャー・ワールド。坑道内の描写は読みにくく、異次元に過ぎ、想像力が情景に上手く届かない。ラストの逆転劇と意外な主人公の決断とが、かろうじて本書の印象をアップさせているかな? それにしても『死んだレモン』と比較すると、ちと辛い。

  • 真夜中、小さな町で立てこもり事件が発生した。一般家庭に銃を持った男数名が侵入したという。刑事ニックが現場に到着すると、家から大音量で音楽が流れ、爆発音が続いた。狙撃班が銃弾を浴びせ、機動隊が突入し、妻と娘たちを救出。だが家には犯人5名の遺体はあったが、夫の姿がなかった。警察は、犯人の一人が夫を人質にして逃亡したと考え、大規模な捜索を開始する。謎めいた行動を取る犯人の目的とは――。

    帯の表現には、ん?という感じ。前作ほどではなかった。

  • うーん。いつ面白くなるかと期待したまま終わった。ニックとトーブの相棒の呼吸や恋人のマリアとの関係性がイマイチの表現でしか描かれてなくて、凄く残念。先日読んだ「真夜中の相棒」の人間関係の濃淡、危うさが秀逸だっただけについつい厳しい☆になった。

  • こういうことは言いたかないが、私ですらすぐにネタはわかった。
    Who、Howは見え見えで、Why done itはさすがにわからないわけだけど、それとて伏線があるでなし。一読して「ふーん」としかならないのがつらいところ。
    あと特筆すべきこととしては、読後感がよろしくない。何の救いもないラスト。

    ニュージーランド、それも南島の僻地が舞台で、そのご当地描写は楽しめた。

    2022/6/12読了

  • うーん、予想の斜め上。

  • 意外性抜群の衝撃作

     というあおりは少しなじまない。日本的でウェットな結末を迎えるので意外といえば意外かな。何度も恋人にプロポーズを断られる憎めない主人公ニックを軸に話が進むので、どうしてもニックが好きになる。だからこそ、ウェットな感じが好みではないかなぁ。

  •  「死んだレモン」に続くニュージーランド南島もの2作目。シリーズではなくこんどは警察のニックとトーブという2人組捜査官が主人公。地元ギャングによる人質立てこもり事件が、大爆発と犯人たちの死亡というカタストロフで終わる、そこが物語の始まり。犯人の1人が人質を連れて地下に延びる金鉱跡をたどって逃亡する。それを追う2人。よくあるように逃亡と追跡が交互に語られる。いったいギャングの動機がなんなのか首をかしげる捜査陣。最後に地下坑道で追い詰めたニックがたどりついた真相とは、というのが本作の眼目なのだが、ミステリを読みなれた人なら、ああこれはと途中で気づくだろう。ストーリーは平板だが、ニックとトーブのコンビがなかなかいい味出している。それだけに最後の結末はかなり予想外で驚かされた。

  • オチだけ

  • ラストにびっくり

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