ピーター卿の事件簿【新版】 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488183127

作品紹介・あらすじ

ミステリの女王セイヤーズが創造したピーター・ウィムジイ卿は、従僕を連れた優雅な貴族探偵として世に出たのち、作家ハリエット・ヴェインとの大恋愛を経て人間として大きく成長し、古今の名探偵の中でも屈指の魅力的な人物となった。本書はそのピーター卿の活躍する中短編から「鏡の映像」「盗まれた胃袋」「銅の指を持つ男の悲惨な話」「不和の種、小さな村のメロドラマ」等、絶妙な話術が冴える7編の秀作を選んだ短編集である。

感想・レビュー・書評

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  • ミステリーの完成度や驚きを期待するのではなくピーター卿というキャラクターを味わう短編集。『ピーター・ウィムジイ卿の奇怪な失踪』と『完全アリバイ』が楽しい。戸川安宣氏によるセイヤーズの生涯とピーター卿に関する解説が充実。

  • 他の本で出てきた、セイヤーズを一度読んでみるか、と思い立って読み始めた。
    しかし、ピーター卿の前知識が何もないままに読んでしまったので、いきなりお子様が生まれるのには驚いた。そうか、この本は、いくつかある短編中編をピックアップしたものだったのね。

    あとがきを読むと、ピーター卿の生い立ちが分かるし、どのように結婚したかもわかるので、ピーター卿の話を初めて読む人はあとがきを読んでから読んだ方がいいと思う。

    イギリスの上流社会が色濃く書かれていて、ちょっとわかりにくい部分もあった。ちょうど馬車と自動車が混在している頃の時代らしい。
    アガサ・クリスティのほうが私は好みかな。

  • 「ピーター卿の事件簿」ドロシー・L・セイヤーズ お初。雰囲気は金と気品と優雅さを持ったホームズ。短編集だからか、ピーター卿の人となりがイマイチ不明。前半は推理と言うより怪奇譚。推理も最初から犯人が分かってしまうし、今一つ醍醐味にかける。滅多にない事だが、半分で読み止め。

    結局最後まで読む事にした。後書き見たら最後の二つが良さそうなんで(ピーター卿に子が生まれる。暗号解読の2編)。やっぱ、折角買ったのに読まないというのはね。出会いが勿体ない。

    後書き読み違え。暗号解読はナシ。

  • ドロシー・L・セイヤーズ著、宇野利泰訳『ピーター卿の事件簿【新版】』(創元推理文庫、2017年)はイギリス貴族ピーター卿が探偵となって事件を解決する推理小説である。第一次世界大戦後を舞台とする。本書は7編の中短編を収録する。怪奇的な話が多いものの、超自然的な現象は出て来ず、科学で説明できるものである。
    最初の物語「鏡の映像」ではピーター卿は冤罪に陥りそうな人を救う弁護士的な役回りをする。駆けつけた警察官に対して人権侵害的な尋問を戒める。他の英国推理小説でも感じるが、英国では警察の取り調べに対する被疑者の人権尊重の意識が高い。
    英米のミステリーを読んで感じることは、警察の人権侵害を抑制する意識の高さである。被疑者・被告人の人権擁護は日本よりも進んでいると感じることが多い。アングロサクソンの法体系を弱肉強食的と否定的に捉え、嫌悪される傾向がある。しかし、むしろ学ぶところが多い。この点は見習わなければならない。
    この「鏡の映像」と同じく、他の作品でもピーター卿は困っている人を助ける立場である。本書の紹介文では「古今の名探偵の中でも屈指の魅力的な人物」と説明される。魅力的な人物とすることには議論があるだろう。
    シャーロック・ホームズのようなキャラクターの方が強烈な印象がある。そのホームズのような強烈な印象には、他人を小馬鹿にしたり、じらしたりして楽しむところがある。それに比べるとピーター卿は親切で誠実である。この京菜キャラクターが魅力的と評される社会であって欲しい。
    「盗まれた胃袋」「完全アリバイ」「不和の種、小さな村のメロドラマ」は相続問題が背景にあり、遺言書が紛争の種になる。特に最後の「不和の種、小さな村のメロドラマ」は遺言書が不幸の原因になる。遺言書を無視して兄弟で均分相続することが最善の解決策になることは皮肉である。

  • 新版になって、ウィムジー→ウィムジイと他の創元推理文庫のピーター卿シリーズと同じ表記になり、各短編の邦題&原題が1頁に記載されたのが良いです。解説も加筆・補填されている一方、「暗号ミステリ傑作選」収録の『龍頭の秘密の学究的解明』の解題は残っているので、これを機会にピーター卿短編全集を完成させるために、東京創元社さんには「事件簿3」の刊行を切に願います。

  • セイヤーズの名作が新版に。
    『鏡の映像』と『盗まれた胃袋』が面白かった。ピーター卿シリーズは創元が一通り版権を持っている筈なので、他の長編も是非新版にして欲しい。

  • 古き時代のミステリー、というのが感想かな。

  • 公爵で金に不自由がなく金髪で背が高く、粋で優しいスポーツマンのピーターウィムジィ卿の短編7篇収録。個人的にセイヤーズの長編より短編の方が無駄がなくて好きだ。この中でのおすすめは「幽霊に憑かれた巡査」。存在しない13番地の家はどこに?という不可能興味あふれる作品。左右の臓器が逆になってる男が記憶を失っている間に殺人を犯したらしい…「鏡の映像」や首のない馬と頭のない馭者の乗る馬車の話、中篇「不和の種、小さな村のメロドラマ」など怪奇趣味の意外な発端が面白い。

  • 再読。今回は登場人物たちの関係性がわかるので、本編や解説がより楽しめた。魔法使を演じる場面が愉快な「ピ-タ-・ウィムジイ卿の奇怪な失踪」と、男の所業と結末にぞっとする「銅の指を持つ男の悲惨な話」がお気に入り。

  • 【収録作品】鏡の映像/ピーター・ウィムジイ卿の奇怪な失踪/盗まれた胃袋/完全アリバイ/銅の指を持つ男の悲惨な話/幽霊に憑かれた巡査/不和の種、小さな村のメロドラマ

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著者プロフィール

ドロシー・L・セイヤーズ(Dorothy Leigh Sayers 1893–1957)
イギリスの小説家、劇作家、古典・現代言語学者、ディテクションクラブ第三代会長。オックスフォードに生まれる。オックスフォード大学サマーヴィル・コレッジにて現代言語学を学ぶ。長らく女性への学位授与を認めてこなかった同大学で学位を授与された女性の第一世代に属する。1922年から29年まで広告会社でコピーライターとして働く傍ら、Lord Peter Wimseyシリーズを執筆。アガサ・クリスティらと並び、探偵小説の黄金期を牽引する小説家の一人と目される。宗教劇の劇作家として、またダンテのThe Devine Comedyの訳者としても名を馳せた。

「2022年 『ストロング・ポイズン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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