曲がり角の死体 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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本棚登録 : 74
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488211073

作品紹介・あらすじ

大雨の夜、急カーブの続く難所で起きた自動車の衝突事故。大破した車の運転席からは、著名な実業家が死体となって発見される。しかし検死の結果、被害者は事故の数時間前に一酸化炭素中毒によって死亡したことが判明する。事故直前には、現場と別の場所を走る被害者の車の目撃証言も……。死者が自動車を運転したのか? 謎解きの醍醐味が味わえる英国探偵小説黄金期の快作。解説=林克郎

感想・レビュー・書評

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  • 70冊の著作があり、当時はアガサ・クリスティと並ぶ人気女流作家だったロラック。
    黄金期の本格推理小説の翻訳です。

    スコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)のマクドナルド警部もの。
    堅実な仕事ぶりで定評があり、なかなかハンサムでもあるらしい?

    ある大雨の夜、自動車の衝突事故が起き、車の中には著名な実業家が。
    ところが検死の結果、被害者は事故の数時間前に死亡していたとわかります。
    しかも、被害者の車が別なところを走っていたという証言も?
    田舎町で起きた事件は思いがけない謎を呼び、マクドナルド警部の登場となります。

    大手のマーケットを誘致するかどうかで揺れる街の様子は、古いようで今も続く問題。
    登場人物がしっかりと描かれ、謎が謎を呼びながらアクションも交え、しまいには解きほぐされていく。
    クリスティと比べると派手さは少なめで、読み返したくなる甘い要素も(あることはあるんですが)少なくて、なるほど翻訳が遅れる理由もわからないではないですが(笑)
    手堅い謎解きを楽しめる、ミステリファンには嬉しい翻訳です☆

  • ☆は3つでつけたけれど、正確には3つ半寄りかな、トータルの印象で言うと。

    何気ない(あまり派手ではない)小さな事件だったはずが、そこから徐々に大きな背景が見えてきて、町を巻き込んで発展していくドラマが興味深い作品。

    事件そのものだけが注目されるのではなく、一昔前の田舎町の、昔ながらの商店と新しく力をつけてきた大型チェーン店経営者の攻防とか、ちょっと古いけれどどこか懐かしい風俗描写(車の扱いやガソリンスタンドの在り方、ご婦人の生活ぶりなど)あたりにも丁寧に描写がなされているところが面白かった。なんというか…午後の2時間ドラマミステリの上質版を見ているようというか、人間性もストーリーに絡めてくるあたりが特徴的というか…。

    「不安定な心理状態」的な強引な言い回しが後半に出てきたのは残念だったけれど、死者が1人しかいない中で、しかも、舞台が都会や絶海の孤島なんていう派手な設定ではない中で、これだけいろんなドラマを重ねられたのはやはり作者の手腕なのだろうと思う。あと、装丁がお洒落な点も良い。積極的に持ち歩きたくなるし、なかにどんなスタイリッシュな作品がおさめられているのだろうと外観だけでワクワクする。

    珈琲片手に、日常の合間で淡々と楽しむのに向いている作品。

  • マクドナルド首席警部もの、東京創元社からは3冊目の邦訳。
    英国黄金期の探偵小説らしく緻密なプロットとスピーディな展開が魅力的。トリックに関しては流石に古びている側面もあるが、まぁ、ミステリというジャンル的に仕方が無いことか。

  • 古き良き時代の本格ミステリ。なかなか面白かったが、若干最後のところがバタバタ感が。ほかの作品も読んでみたい。

  • 英国本格黄金期。良いですねぇ。地味ですが端正で手堅い。
    作品の舞台は古典にありがちな金持ちの邸宅などではなく、イギリスの片田舎。殺されたのがその田舎に大型モール(イ○ン的な…)を作ろうとしてた企業の社長。事故にみせかけた一酸化中毒死と思われるが、一体誰が?……と派手さは全くないのに、出てくる登場人物がどれも性格描写が素晴らしく、良いドラマでした。
    あとがきで初めて女性作家と知ったんですが、男性作家と思われてたのも納得。(警部が足でコツコツアリバイ確認していく系の話なのでね…)

  • 大雨の夜に車の衝突事故。大破した車から死体が見つかるが、事故の数時間前には死亡していたとわかり…
    安定のマクドナルド警部もの。被害者は家庭内でも商売上でも敵が多く、警部はコツコツと聞き込みをして被害者の生前の足取りを追う。地味だが端正な本格。

  • 1940年発表、英国探偵小説黄金期の作品。ある事故現場から発見された実業家の死体。だがこの死には不審な点がいくつもあった。
    手堅い作風という印象。派手さや衝撃は薄いがキチッと描いていて気軽に楽しめる、といった感じ。悪く言うとそこまで突出した部分がなく、目立つ作品ではない。

  • マクドナルドさんの聞き込みの感じとか好き。
    話は結構複雑で、登場人物も多いし、理解しながら読むのは大変だった。

  • ロラックの小説はどれも面白い。派手さはあまりないが、英国推理小説の傑作が生まれていた時代、クリスティと並び称されていた(らしい)というのも納得の、しっかりと手の込んだ重厚、かつ読み手を引き込み続ける丁寧な造りになっている。登場人物も、どれも魅力的だし人間臭い。

    とある豪雨の夜。見通しの悪い峠の曲がり角で交通事故に巻き込まれた車の車内にいた男が死んだ。男はこの地域に最近、大規模スーパーを建てようと目論んでいた、誰からも嫌われているが、商売の腕は立つビジネスマン。しかし検屍の結果、男は事故のだいぶ前には死んでいたことが判明。しかも死因は一酸化炭素中毒。そのうえ、事故の直前にこの男が運転する車を見たという目撃証言が複数の地域から出てくる。果たしてこの夜、何が起きていたのか。ロンドン警視庁の主席警部であるマクドナルド警部が捜査に乗り出した…というのが物語の筋。

    ロラックはかなりフェアな作家で、トリックを解きほぐすための鍵や犯行のヒントをストーリーの中で出している。その点、「実は裏でこんなことがあったんだよ」と後から全部話して聞かせるドイルのホームズものではなく、「ほぼ全て見せたから(探偵と同じものを見ているんだから)読者のあなたも解いてみなさい」というクリスティのポワロものに近い。

    実際、この作品でもマクドナルド警部が「とある人物」に聞き取り捜査をした際、犯行の大きなヒントがさりげなく書かれている。自分はその時点で、犯行そのものがどうなされたかは推理できたのだが、その人物の具体的な犯行の手順を見出すことはできなかった。

    推理小説は犯人が分かることで読後感を高めるジャンルなので、同じ作品を繰り返し読むのはちょっと難しい。それでも、トリックの見事さや登場人物の言動に魅力があれば、しばらく経ってからまた読み返そう、という気にはなる。
    この作品も2年ぐらい間を空けて、登場人物一覧を見ても誰が犯人だったかパッとは思い出せないぐらいの時期になったら、また読みたくなるかもしれない。本棚に残しておこうと思う。

  • 2015/09/30読了

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