蜘蛛の巣 下 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488218089

作品紹介・あらすじ

殺人現場で捕らえられたのは、目も見えず、耳も聞こえず、口もきけぬ青年だった。本当に彼が殺したのだろうか。フィデルマは捜査を開始する。高貴な一族の血をひく族長の未亡人、族長後継者の年若い娘、ローマ・カソリックの教えを厳しく説く神父、年老いたドゥルイドの隠者。白日のもとに暴かれる、アラグリンの谷に秘められた真実とは?"修道女フィデルマ・シリーズ"第一弾。

感想・レビュー・書評

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  • ミステリ。修道女フィデルマ。
    初めて読むフィデルマ・シリーズの長編作品。
    どの短編も面白かったが、長編は更に面白い。
    一番の魅力は、やはり世界観と舞台設定。
    訳者あとがきにあったが、まさにこの著者にしか書けない物語。
    "これまで誰一人手がけることができなかった分野"であり、二度と同じ設定のミステリは描かれないかもしれない。
    ミステリ的には、トリックや犯人当てよりも、論理的思考を極めた正統派ミステリという印象。
    世界観が大好きな自分としては、オールタイムベスト級の傑作。

  • 中盤で、エイダルフが食中毒により命の危機に見舞われるくだりなんですが、これ、もうちょいこれまでの焦ったい恋愛関係があっての、それでこそのこのシーンだと思うんですよ。いや、この第一作を初めて読んだだけでもじゅうぶんフィダルマの感情にキュンときたけども!
    その前の作品も堪能してからまた、読み直したいポイント。
    ラストの集会堂での告発シーンは王道のミステリならではで、モーエンによる首実験なんかすごく中世っぽくて好き。
    旧アイルランドにおける、女性や障害者への視点が現代から見ても羨ましく感じる平等精神。
    アイルランドへの過激なイメージが、後世に作られたものであると作後に書かれており、そのイメージ通りに思い込んでいたので、なんだか恥ずかしくなった。

  • 7世紀、アイルランド。ブレホン法に基づく上位弁護士であるフィデルマは、アラグリンの族長・エベルが殺害された事件の状況確認に向かう。容疑者は盲目で聾唖の若者・モーエン。しかし集落のようすに違和感を感じたフィデルマは、サクソン人の親友・エイダルフと共に独自調査を開始する。驚くべき秘密を抱えた人びとの思惑が織りなす蜘蛛の巣の中心に、やがて真犯人の姿が浮かび上がる。〈修道女フィデルマシリーズ〉の邦訳第1作目(原著では第5作目)の長篇。


    フィデルマ長篇、こんなに思いっきりエイダルフとのバディものなのか〜〜〜!!!と短篇集から入った読者はびっくり。だが確かに短篇だとサッと現れてサッと解決していくスーパー超人ゆえに(古代ケルト設定でこのキャラ造形が歴史考証的に可能という面白さはあれど)少し愛着の湧きにくい探偵役だったフィデルマが、エイダルフという助手役を得ると急にイキイキして可愛らしくすらある。
    エイダルフはサクソン人かつローマ派の修道士で、少し感情的になりやすいというフィデルマと正反対のキャラ付け。助手役の常として、偏見や無知を晒してフィデルマに解説を披露させる役割も担っているのだが、ブレホン法を知れば知るほど、エイダルフが語る封建的な家父長制が(現在の我々になじみ深いにも関わらず)非合理的で野蛮なものに感じられてくる。とはいえ、フィデルマが信奉するキリスト教ケルト派もドルイドの賢者によって相対化されるからこのシリーズはすごいんだけど。
    好きなキャラクターはまさにそのドルイド賢者・ガドラ。盲目のモーエンの手に古代言語のオガム文字を書き、サリヴァン先生よろしくことばを教えたという設定がすばらしい。この文字習得術は完全に創作だと思うのだが、画像検索したオガム文字のシンプルな構造を見ると本当にぴったりな方法に思える。下巻まで読むと、過激なローマ派の教えに侵された村で唯一ガドラの教えを受けていたテイファに思いを馳せずにはいられない。エベルが彼女たちにした行為の非情さがより強い痛みとして感じられる。
    ミステリーとしては、利権争いと痴情のもつれが絡み合って話が大きくなる金田一耕助タイプ。フィデルマは話術が巧みで目下の人には目線を合わせて接するのだが、貴族の社交場でナメた態度をとられると途端にプライドの高さを見せ、エイダルフに呆れられる(笑)。恋愛には寛容だがそれを政治的に用いることには厳しい。でもクローンにはもうちょっと温情があってもよくない?

  • まさしく!寝る間を惜しんで読んだ一冊。
    ストーリーもさることながら、7世紀アイルランドの風土、景色、素晴らしい描写で、読みながら、安野光雅さんの旅の本(題名合ってるかどうか、)のような、美しいペン画に素晴らしい彩色がなされたアイルランドの世界が、脳裏に浮かびました。本作が、フィデルマ日本初上陸作品。ぜひとも読んで欲しい本です。

  • 図書館で。前に短編集を読んだことがある気がしますが、長編を読んだのは初めて。
    古代のアイルランドなんて全然触れてなかったので、こういうトラブルを裁くシステムと人がいたんだな~。日本で言うと大岡越前みたいなものだろうか?日本と違って、司法を取り扱う人が現地に赴くというのも面白いし、女性だからと不当に差別されていないのは大きな違いだけれども。
    土地相続と金銭問題と氏族の族長問題が色々と絡まって大変なことに。
    個人的には叔母さんがとばっちりすぎて可哀想すぎるなと思いました。もっと早く、対話が出来る事を他の人も知っていたら…と思うと色々とツライ話でもありますね。

  • 族長殺害事件を調査するフィデルマは、ガドラの力を借りてモーエンから事情を聞き出します。やがて事件の背後に隠されていた、複雑な事情が明らかになります。最後にフィデルマが、集会場に関係者を集めて真実を暴く、推理小説らしい展開も面白かったです。
    そしてフィデルマがエイダルフの存在の大きさに気づく場面では、フィデルマの思いがけない可愛い一面が見られたのもよかったです。(^^)

  • 主人公とエイダルフの友情以上恋愛未満な感情がいいですね。
    こういう関係の男女が好物なので謎解きの面白さと二人のまどろっこしいようなニヤニヤするようなやり取りがとても楽しかった。
    当時のカソリックの風習では結婚許されているようですし、外国人との婚姻もそれほどハードル高い訳ではなさそうなのでどうなるのかな、と思ってしまいました。
    まずはちゃんとした1作目を読まないとなー
    謎解きの方は結構きわどい生々しい話だったりするのでいちいち説明をしなきゃならないフィデルマにちょっと同情をしてしまった。

  • 七世紀のアイルランドを舞台に、法廷弁護士でもあるフィデルマ修道女の活躍を描くシリーズの第一巻。小さなクランの族長であるエベルが殺された。その犯人とされたのは目も見えず、口も効けない、聾唖の若者だった。クランの人々はその若者が犯人と確信していたが、派遣されたフェデルマは真実は何かを一つ一つ探っていく。

  • 読みきれたー!
    下巻は怒涛の展開。

  • エイダルフとガドラのコンビが可愛いなあ。
    しかし、怪しい人がたくさんいて惑わされたけど、犯人あの人だったかー!怪しさ満点で逆に違うかなと思っていた。そして、フィデルマは常にカッコイイ。

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