神の家の災い (創元推理文庫 M ト 7-3)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488219048

感想・レビュー・書評

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  • なかなか面白かった。何と言っても中世ロンドンの空気や臭い、喧騒が漂ってくるかのような香りを感じさせてくれるところがとても良い。また、登場人物の描写もなかなか優れています。特に、国王勅任の検死官ジョン・クランストン卿の大酒のみで下品だが好人物な姿と、その書記にして聖アーコンウォルド教会司祭のアセルスタン托鉢修道士(主役)の知的で人間味溢れるただずまいは、その対比が鮮やかで、この迷コンビの雰囲気を身近に感じることができ、素晴らしい。まるで、たびたび放たれるクランストンのげっぷに、アセルスタンと一緒に顔をしかめている気分が味わえます。(笑)そして周辺に登場する人物と動物もとても丁寧に描き、臨場感を感じさせてくれる。(このあたりの感覚は「解説」でもとても的を得て説明されていますね)
    本作では大きな謎が3つ提示される。3つとも難しい舞台設定だが、そうした雰囲気を保持したまま終盤まで流れていきます。短編3つが長編として1作になったような感じもありますね。ややもするとそれぞれ掘り下げと展開が短編的で、謎の雰囲気に少し負けている気がしました。謎が複数あるためか全容が明らかになるまでに少し時間がかかり最初は漫然として読んでいたのですが、中盤以降は俄然展開もよくなり、ラストには見事に解決されて爽快感を味わえます。
    この作品は、アセルスタン修道士シリーズ第3作とのことですが、背景である政治状況と聖アーコンウォルド教会の教会区の面々はシリーズを通しての繋がりがあるとのことで、これも興味津々です。

  • 摂政の開いた宴で、検死官クランストン卿は、主賓のクレモナ公ガレアッツォから挑戦を受ける羽目になる。
    ある屋敷の密室で、食事も取らずに4人もの人物が次々に怪死したのは何故か?期限は2週間。賭け金の千クラウンは払いきれる額ではなく、もし負けたら摂政の紐付きのような立場に?
    同じ頃、アセルスタン修道士の小さな教会では、改修中の床下から人骨が発見される。
    柩に触れた人の怪我が治ったと聖人の秘蹟として大騒動になってしまう。
    一方、アセルスタンがかって修行した大きな修道院では、修道士が墜落死、ついでもう一人が行方不明に。
    アセルスタンは調査を依頼される。
    緊張の高まる中、謎は解けるのか…?
    猥雑な中世のロンドン、クランストン卿には双子が生まれていて、いつもにましてにぎやかなメンバーだが、謎解きの面白さはオーソドックス。

  • 9784488219048

  • 検死官と托鉢修道士にふりかかる3つの謎。
    双子の息子達が生まれて幸せいっぱいの検死官が、名誉をかけて引き受けてしまった謎解きの賭け、修道院の改修中に発見された女性の遺体。
    そして古巣の大修道院で起きた連続殺人。
    にっこにこの巨漢の検死官がキレるシーンは、なかなかスカッとしますよ。カトリック、それも清貧を誓った托鉢修道士の恋もほのぼのとしてて良いです。猫やら豚やら馬までが生き生きと描かれていて、楽しい。
    検死官の大岡越前の裁きのような情のあるところが、いい。

  • 複数の謎が同時進行するモジュラー型。或いはコールドケース+本格ミステリ。中心の連続殺人の動機、この時代にもあったのか。それにしてもこの時代の英国のカトリックの聖職者って、よく飲みよく食べるな。キャラが良いので、楽しく読めるシリーズ。

  • 摂政の企みで、宿泊者が必ず死ぬ“緋色の部屋”の謎を解くという賭に乗らざるを得なかったクランストン検死官。相棒のアセルスタン修道士の教会では、工事の際に人骨が見つかり、奇跡を起こす聖遺物だと教区の人々が大盛り上がり。そんな二人は、同時並行して修道院内で起きた連続殺人事件の謎にも挑むことになります。
    シリーズ三作目。下品で食っちゃ寝で酔っ払いのクランストンのことも、彼が抱える埋められない喪失感と殺伐とした仕事内容を考慮すれば、それなりに許容できるかなあと偉そうに思ったり。家庭内ではモード夫人に頭が上がらないところなどが憎めない所以です。
    アセルスタンは未亡人のベネディクタをプラトニックに恋慕しているところがやはり可愛らしい(傍から見ると想いがだだ漏れのアセルスタン…)。彼は聖職者でありながら「奇跡」を容易に信じないところなど、現代人に近い理性の持ち主ですが、普段が穏やかなだけにキレ方はかなり激しく、受け持ち教区の影響でたくましくなっているんだねえ、という感じ。貧しくて倫理観が薄いように描かれてきた教区のみんなも、実は意外なほどアセルスタンを認めているみたいですね。
    たまにえぐい時代描写や割合普通の謎解きより、細部を楽しむように読んだ方がいいのかも。
    猫好きは、アセルスタンが愛するキャトリックな猫に注目。

  • 歴史ミステリ御三家を続けて読んできたが、最後の一人、ポール・ドハティの修道士アセルスタンシリーズ。
    舞台は14世紀のイギリス。暗いじめじめした雰囲気に陽気な飲んだくれクランストン卿とまじめなアセルスタン修道士コンビのやりとりが楽しい。
    御三家の中で一番読みごたえがあると思うが、3冊までしか翻訳されておらず。原書で読む語学力がないのが残念。

  • 摂政の宴で出された謎、修道院で起こった殺人、教会で見つかった人骨。
    それぞれ関係のない3つの事件に挑むクランストン検死官とアセルスタン修道士。

    シリーズ3作目でちょっと舵を切ったのかな?
    全体的に雰囲気が軽くなったように感じた。
    合わせて主人公二人をはじめ、周りの人々も生き生きとしてきて、読んでいて面白かった。
    3作の中ではこれが一番の好みの配分だなあ。
    これ以降訳出されていないのが残念。

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著者プロフィール

サンフランシスコの科学博物館「エクスプロラトリアム」の上級研究員(本書執筆当時)。共著にExplorabookなど多数。マサチューセッツ工科大学で固体物理学の博士号を取得。2017年8月死去。

「2018年 『とんでもない死に方の科学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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