鉄の門 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488247102

作品紹介・あらすじ

親友の夫だった医師アンドルー・モローと再婚したルシール。血の繋がらない二人の子供と義妹との同居は、傍目には平穏に見えるものの、16年前に変死を遂げた親友ミルドレットの面影と、彼女に未練を残すアンドルーの態度が、絶えずルシールの心を苦しめていた。そしてある冬の朝、謎めいた男がルシールに小箱を渡して立ち去った。その後彼女は何も言い残さず、姿を消してしまう。心理ミステリの巧手ミラーの初期を代表する傑作、待望の新訳。

感想・レビュー・書評

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  • いつもながら書き出しが上手い。裕福な医師の後妻の突然の失踪やいびつな家族関係。探偵役のサンズ警部がいい味出して、途中まで謎に引っ張られ面白かったが尻すぼみ感。新訳版なのに誤訳?誤植?も残念。春日武彦さんの解説は良かった。

  • 古いミステリの新訳が出て、解説を春日武彦先生が
    書かれたという情報が流れてきたので、
    興味を持って購入。
    精神科のお医者さんが解説を依頼されるということは、
    つまりそういう類の小説だろうと予測し、
    既読のジョン・フランクリン・バーディン
    『悪魔に食われろ青尾蠅』
    https://booklog.jp/users/fukagawanatsumi/archives/1/448813503X
    を連想した――が、
    もっとずっとスリリングでサスペンスに満ち、
    しかも、嫌~な気分になる話だった(←褒め言葉)。

    それぞれ配偶者と死別し、再婚したモロー夫妻。
    以後15年が平穏に過ぎたかに見えたが、
    妻ルシールは家の中でずっと
    除け者の感覚を味わい続けていた。
    そんなある日、謎の人物から不審な小箱が届き、
    開封したルシールは悲鳴を上げた後、家出。
    家族が捜索願を出し、彼女は程なく警察に保護されたが、
    パニックに陥り、精神病院への入院を余儀なくされた――。

    不気味な贈り物の正体はじきに判明するが、
    それを見て嫌悪感や恐怖に囚われるだけでなく、
    精神の均衡まで崩すとは、どういうことか。
    その謎を、未解決事件を抱えたままのサンズ警部が追う。

    悪意の籠もったプレゼントは、別の何かの代替物、
    表象であり、普通の人は贈り主の真意が読み取れず、
    精々怖れ、吐き気を催す程度で終わるだろうが、
    ルシールはそうではなかったし、
    犯人もその点を踏まえて事に及んだはず。
    そう、彼女は物静かで我慢強く、
    一見、外部からの刺激に鈍感そうな女性だが、
    実は賢く思慮深いのだと、モロー家のメイドが語っていた……。

    タイトルは精神病院の内と外を区切るゲートを指し、
    恐らく、理解し合えない人と人の心を隔てる障壁や、
    誰かを激しく憎んで呪いの言葉を吐くこと(セーフ)と、
    その相手に危害を加えてしまうこと(アウト)の
    境目を表してもいるに違いない。

    怖いのは章題。
    第一部「狩猟」、第二部「狐」、第三部「猟犬」。
    狩猟はルシールが徐々に追い詰められていく過程、
    狐は病院内に囲い込まれた彼女を表していると思われる。
    問題は「猟犬」――つまり、
    彼女を狙っていたのは誰か、ということ。
    それがわかった瞬間、背筋が寒くなった。

    作者はカナダ出身のアメリカの作家で、
    ロス・マクドナルドの妻。
    読了後にWikipediaに目を通して知ったが、
    本作で謎解きを行うサンズ警部は、
    他の作品でも活躍するらしい。
    星は控えめに★★★としましたが、
    気持ちとしてはかなり★★★★に近いかな。
    (視点がコロコロ変わって入り乱れるのが、少し鬱陶しいので微減点)

  • サスペンス要素の強いストーリー。正気を失った人間の心理描写が巧みで、雪の上を裸足で彷徨うひんやりした感覚を終始味わった。絡まっている各人の行動にサンズの観察力と推理力が全体にうまく糸を通し、結末が静かに導かれていくさまにミラーの巧さを感じた。

  • ずいぶん前の作品なのに、人間のおどろおどろしい心理や家族関係の機微がしっかり描かれていて、ふとした瞬間に私もこんな事思ってる、と愕然とする。ずっとミラー氏を読み続けてて、心が消耗されてしまった。

  • これはね、ほんとにいいですよ。後でちゃんと感想書き直したいくらい。犯人がどうこうとかじゃない、人の世の苦しみが描かれている。

  • 緊迫感がたまらん

  • ルシールに関してはなまじ人間の感情があると、ああなってしまうのかなって思った。シャッターアイランドっぽい。
    不安になる。イヤミス。

  • ドロっと暗くなる読み応え。重かった。予想外の結末とかではないのだけど、人が追い込まれていくとどうなるのか、狂気と正常の境目はどこなのか、そういうのが人ごとでなく、自分のことと曖昧に重なっていく怖さがあった。

  • 箱の中身や犯人の謎もさることながら,ヒッチコックばりの精神的に追い詰められていくルシールの恐怖にこちらも引き込まれながら読んだ

  • サイコスリラーと呼べばいいのでしょうか?物理じゃなくて精神的に殺しに行く感じ怖い。でも何人かは物理で殺すのも怖い。

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