検死審問: インクエスト (創元推理文庫 M ワ 1-1)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488274047

感想・レビュー・書評

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  • 20世紀の始めまで、ニューヨークでは検死官という職があったそうです。現在の監察医が行う仕事で、特権を乱用し放題。好きなように証人を呼べるし、陪審員はいてもいなくてもOK、日当を増やすためにわざと公判を長引かせるということもできたそうで…。この作品の検死官、スローカム閣下もやりたい放題です。陪審員はファーストネームで呼び会うようなお友達。娘を書記に任命し、供述書を長くして収入を増やそうという腹積もり。たいして必要とも思えないような証人を次から次へと呼ぶし、どの程度仕事をする気があるのやら。
    しかし話が進むにつれて、笑っていた読み手も徐々に話に引き込まれていきます。供述という形をとっているので、語り手によって人物や物事の見え方が変わってくるし。それにしてもおかしいな、というところも出てくるし。真相が明らかになる場面では、細かく張られていた伏線にびっくり。笑わせるためだけの検死官の設定かと思ったらとんでもない。大団円に導く一番のキモでした。
    ミセス・ベネットの作品への感想や、彼女の探偵小説批判(名探偵を簡潔に表現する能力には長けてます、このお婆ちゃん)、さらにはこの探偵役はいつから真相に気づいていたんだろう、なんてことまで楽しい。後書き読んでやっと気がつきましたが「探偵術教えます」の著者だったんですね。そりゃ面白いわけだ。

  • タイトルに惹かれて続編と共に購入。
    原題の inquest は英米における死因審問の意で、日本にはない司法制度。
    不審死を遂げた人の死因を検死官が調査するための手続きで、
    原則として公開の場で行われるという。
    コネティカット州の田舎町で、
    高名な女流作家の誕生日祝いに集まったメンバーが亡くなったため、
    その死因を明らかにすべく、
    初めて検死官に任命された葬儀社社長スローカム氏が
    関係者を次々証言台に立たせた折の審問記録を開示するという形式の
    ユニークな推理小説。
    複数の証言によって徐々に事件の全容が明らかになっていく。
    俗にいう「ガヤ」に当たる陪審員たちの
    善良にして喧しく、ちょっと皮肉っぽい応酬が面白い。
    スローカム氏の娘フィリスは速記記録担当なので、
    必要に応じて呼びかけを受けるばかりで、本人の言動は叙述されないが、
    なんとなく、美しく聡明なお嬢さんという印象。
    巧妙に伏線が張られ、終盤できちんと回収されているので、なるほど~と唸ってしまった。

  • 3+

    続けて2回読んだ。

  • 著名な女性作家の屋敷で起こった殺人事件。被害者の死因を法的に確定させるため、リー・スローカム閣下を検死官とする検死審問が開かれるのだが……。
    飄々とした語り口がなんとも愉しい。事件などお構いなし、脱線しまくりの証言者たちや、できるだけ審問を長引かせ日当を稼ごうとする検死官と陪審員にニヤニヤさせられどおし。
    そんな深刻さのかけらもないノンキなやりとりの中に巧妙に伏線を隠し、人物像を鮮やかに反転させてみせる手際も素晴らしい。

  • とてもイギリスらしい。文句なしっ!

  • 結局最終的な結末に驚かされてしまいました。動機が時代を感じさせますが、しかし今読んでもおもしろい。

  • ユーモラスで捻りの利いた快作!
    有名な劇作家だそうで、ミステリも数作書いているそう。
    読む価値有りです。

    検死審問とは、日本にはない制度。
    裁判ではなく、陪審員が死因をとりあえず認定するもの。
    一人または複数による謀殺、とかいうあれですね。

    当時は、検死官の自由裁量になる部分が多かったんだそうで。
    審問にかける時間で貰える金額が増えるとか、死体の数によって貰える金額が増えるとか!
    金額の上限が決められていなかったそう。
    もちろん普通は良心的に行われていたのですが、独断で出来る範囲を広げていくと、ここまで出来ちゃうといった発想から、ユーモラスに。
    だらだらと一見関係なさそうな証言が続くのですが…?!

    とぼけた検死官リー・スローカムが真の探偵役。
    ヒロインが売れっ子の老女流作家というのが面白い展開につながります。
    彼女の作品はいつも同じようなパターンなのだが、大衆はこれが大好きでいつも大ヒットという。
    オーレリア・ベネットは、普段はほとんど人付き合いをしない作家。
    七十歳の誕生日に、親戚や親しい人を集めます。
    長年共に仕事をしている出版業者ピーボディや、出版代理人のドワイト。
    困窮している甥のチャーリー夫妻とその美しい娘アリス、金持ちだが感じの悪いその夫。
    チャーリーの甥夫妻と可愛い女の子。
    いつもオーレリアの作品をこきおろしている辛口の文芸批評家スティックニーまでも、招かれてやって来ます。
    オーレリアの忠実な執事タムズがライフルを唯一の趣味にしていて、滞在客の男性らが試し撃ちをしようという話に。
    しかもその日は、近所で爆竹をする子供らもいた。
    そして、死体が…?!

    嫌な奴も出てきますが、それがどうなるかというと~~
    …安心して読めます。
    1940年の作品。

  • 形式は面白く(ドラマに向いていると思う)、話自体も結構面白い。
    ……が。
    なんかこう釈然としない。
    読者や一部の人間は真実を知っているが、それが作中の世界で表沙汰にされないのは、仮にも裁判を扱っているのにどうかと思う。
    犯人に同情しているのだろうが、読者としてそれが出来ないのは、「ムカツク」の一言に尽きるだろう。

  • inquest は日本に無い言葉なんですって。

    売れっ子女性作家によって集められた編集者、出版社、一族、批評家達。その中の一人が殺され、警察が介入し、審問官達が協議し、証人を呼び寄せ、事件の謎を解いていく。

    出版者のお話など読み応えがあり興味深い。
    与えられるヒントは少ないが、証言から事件の真相を導き出す探偵役の考察が冴えわたる。

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