- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488402174
作品紹介・あらすじ
●北森鴻氏推薦――「これまでもこれからも、僕の短編ミステリの大切なお手本です」
捜査そっちのけの警部と美女の死体に張り切る鑑識官コンビの殺人現場リポート「煙の殺意」を表題に、知る人ぞ知る愛すべき傑作「紳士の園」や、往復書簡で綴る地中海のシンデレラストーリー「閏の花嫁」など、問答無用に面白い八編を収める。
感想・レビュー・書評
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主に70年代後半のものを集めた短編集。どれも確かに泡坂さんらしい展開だが、先が読めてしまう話もあったりでちょっと雑多な感があるかも。『赤の追憶』『紳士の園』『煙の殺意』『開橋式次第』が好み。
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『ダイヤル7をまわす時』の解説で、櫻田智也さんが『煙の殺意』に言及していた記憶があったので、読んだ。(櫻田さんがどんな言葉でこれを紹介していたか失念した。あとで確認したら追加するかもしれない。)
必ずしも「事件→誰かが謎を解く」という構造の話ばかりではなく、最近読んだ岩波少年のホラー短編集とか、ウェストール短編集(こちらはホラーと銘打ったものではないが一応ホラーやスリラーが得意な作家とされている)のような、ちょっと不思議なぞくっとするお話集になんとなく読み心地が似ていた。
色気と、ユーモアと、トリック愛とは変わらず、短編集全体としてもバラエティ豊かで、とても良かった。
以下、備忘メモ。ネタバレはしてないはず。
・赤の追想→小柄で老け顔だが妙に色気のある男が安楽椅子探偵を演ずる。地の文の美しさも心に残った。「…堀があった。淀んだ都会の水は、夜になると水の心を取り戻していた。対岸のネオンが、水と恋をした。」
・椛山訪雪図→解説の澤木喬さんはこれを大絶賛していた。(私はちょっと固有名詞に混乱したせいか入り込めなかった。)
・紳士の園→刑務所帰りの島津。同じく刑務所帰りの先輩近衛に誘われ閉園後の公園での怪しげな酒宴を二人で開く。酒宴の前後で物語の様相が変わるのが面白い。
・閏の花嫁→彼、私の方に気があると思っていたのに、まさかあなたと結婚するとはね!という関係の女二人の手紙のやりとりからのまさかの展開。
・煙の殺意→お、表題作。殺人事件の現場で、デパートの火災事故のテレビ中継に見入る、無類のテレビ中継好きの望月警部。熱心に、執拗なほど熱心に現場、というか被害者の遺体の検証をするのは、無類の屍体好きの斧技官。この互いに相手を「変なやつだな」と思っている者同士のコラボで真相が解明される。
・狐の面→ヨギガンジーイズムを感じる一話。
・歯と胴→完全犯罪なるか。女のとある台詞が伏線だったことがあとでわかるのが見事。
・開橋式次第→大家族をおじいちゃんが一人で起こして回るドタバタ喜劇調の幕開けが楽しい。-
たださん、111108さん、こんばんは。
111108さん、補足ありがとうございます(私の記憶いい加減過ぎ…)。たしかに「本格推理ってどう...たださん、111108さん、こんばんは。
111108さん、補足ありがとうございます(私の記憶いい加減過ぎ…)。たしかに「本格推理ってどういうののことを言うんだっけ…?」というあたりはよくわかりませんが、「美しいミステリ」への「こだわり」は感じられます!
たださんの読書ライフにまた泡坂さんが戻って来られるのを、のんびりお待ちしています♪2023/08/13 -
akikobbさん、111108さん、こんばんは(^^)
111108さん、櫻田さんのコメント教えて下さり、ありがとうございます♪
もうベ...akikobbさん、111108さん、こんばんは(^^)
111108さん、櫻田さんのコメント教えて下さり、ありがとうございます♪
もうベタ褒めですよね。
これは読まねばと思い、市の図書館のネットで調べたら、貸出中でした・・まあ、あることが分かっただけでも良しとします(^_^;)
akikobbさん、ちょっと先になりそうですが、一冊だけアワツマ本、いつもの図書館にあって、それにしようかなと思ってます。
タイトルは、乞うご期待ということで(^^)2023/08/13 -
akikobbさん、たださん、こんばんは。
返信ありがとうございます♪
櫻田さんのアワツマ愛深いですよね!
お二人のレビュー楽しみにしてま...akikobbさん、たださん、こんばんは。
返信ありがとうございます♪
櫻田さんのアワツマ愛深いですよね!
お二人のレビュー楽しみにしてます♪2023/08/13
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表題作煙の殺意とか椛山訪雪図が好きでした。
閏の花嫁も毛色が違いおもしろかった。 -
サクサク読める短編集。バリエーションがあって面白い。
泡坂さんは長編はもちろん、そして短い中でもしっかりと驚かせてくれる。
個人的には「紳士の園」が一番良かったかな。 -
つまらない本は途中でまだ終わらないのかなとつい思ってしまいますが、面白い作品は永遠に続いてほしいと思わせる力があります。
もちろん、本書は面白さ抜群です。
文章も格調高いものからユーモラスなものまで様々なバリエーションで読んでいて作者の芸の深さを堪能できますが、私は特に「狐の面」が昔の興行師のだましテクニックと童話のような雰囲気を持った作品として印象深かったのでおすすめです。
文庫本解説の澤木喬氏の文章もよかった、これだから文庫本はお得ですよね。 -
ノンシリーズの短編集。
どれもこれもおもしろい、ハイクオリティな1冊でした。
【赤の追想】女の様子から推理された一人の男の真実。そしてそれと重なり明らかになる女の真実。
1ページの物語と思っていたものが、実は同じような内容のページが2枚重なっていてひとつの物語を作り上げていたというような結末。巧い。
【椛山訪雪図】一枚の掛け軸が事件を解決というわけではなく、あくまでも掛け軸に主眼を置き、事件が掛け軸の謎を明かしたというのが新鮮。
1枚の絵が見る人に何重もの意味を表し、それが持ち主の断腸の生き様とも重なってなんとも「粋」な1編でした。
【紳士の園】出所したばかりの二人の男が、公園の池で優雅に泳ぐ白鳥を捕まえてこっそり食べ始めるといういきなりの暴挙に驚き。
「スワン鍋」とか、何の冗談かと思ったら本当に公園の白鳥食べちゃうんだもんなぁ。こういうブラックでとぼけた会話など、著者の独特のテンポがとても楽しいです。
昨夜発見した死体が翌日なくなっているという謎をきっかけに、人間の自然な振る舞いについての捻くれた考察が思わぬ結末に。
他殺体を発見しときながら、追求するのはそこじゃないというのがおもしろい。
死体や、白鳥を食べた残骸などの非日常が人間の不自然さに覆い隠され、結末といい不気味さが漂います。
【閏の花嫁】女二人の往復書簡によって展開する物語。一人の男を巡る女同士のちょっとした嫌味の応酬とかが楽しい。
何となく胡散臭い結婚の話がどこに向かうのかわからずハラハラするのですが、からかいのネタだった大食いや太っていることがあんな結末の伏線になるなんて。
【煙の殺意】デパートの火災が気になり、殺人事件の現場でテレビを見だして片手間に捜査する刑事がおもしろい。
アリバイトリックが成された殺人ですが、じゃあ、そのトリックが何の為にという展開からの動機が凄い。話の持っていき方が楽しいです。
確かに犯人の思考と行動は合理的な気がする。恐ろしい考えではありますが。
【狐の面】マジシャンの著者らしく、山伏たちの奇怪な興行の種明かしが興味深く楽しかったです。
解決の仕方が洒落っ気と人情味があって良かった。
【歯と胴】女と愛人の男が夫を亡き者にしようと企むサスペンス。ところが、いざ決行!という時に思わぬ展開になりました。
「そっとされるのが好き」という女の本意がこんなところにあったとは!
【開橋式次第】大家族のどたばたがとっても楽しい。名前を覚えられず適当になったりとかが笑えました。
迷宮入りになった事件と同じ事件が発生するという魅力的な展開ですが、そんな理由で犯人と決め付けていいのか? -
やっぱ上手いんです。たわいない、けどどんどん読まさせられる。
椛山訪雪図 紳士の園 閏の花嫁 煙の殺意がいいかな。 -
泡坂妻夫の妙技を凝らした品々を堪能する、傑作短編を八編収録。
つくづく「泡坂さんはホワイダニットの作家さんなんだなぁ」と思った短編集であった。
なぜ、犯人はそのような犯行をしたのか? なぜ、そういう行動を取るに至ったのか?
ここらへんの心理的ロジックを描かせると、泡坂さんの筆は冴えに冴える。一見突飛過ぎるロジックも、不思議と動機としてしっくり来るのだ。まさに、「こんなの現実にはありえない」とわかりつつ、その「騙し」を堪能するトリックアートのような、めくるめく騙し絵の世界である。
この短編集のうち、ホワイダニット作品の白眉はやはり「紳士の園」と「煙の殺意」だろうか。読んでいて、泡坂さんのデビュー作「DL2号機殺人事件」を読んだときに抱いた、ロジックの鮮やかさが蘇ってきました。
しかし、やや難点も。
とてもバラエティーに富んだ作品であるし、ミステリーとしてロジックはどれも読み応えがあるのだが、いかんせん文章に膨らみがあまり感じられないため、読んでいて少々飽きてくる。
少なくとも、一気読みはおすすめできない。また、主人公達に感情移入できる、というわけでもない。
手品はただやってもらうだけでは、物足らない。いわくありげに、余裕を持って、たっぷり演出を利かせて、十二分に堪能したい、というのがわがままな観客の要望。
そして、それに応えてこそ、マジシャンは本当に「マジック」を使う人になるのだと思う。
そういう意味で、もうちょっと文章にも気を使って、お話にも膨らみを持たせてもらうと、ありがたかったのにな・・・というのが、わがままな客の、ショーのあとの寸評である。